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力のゴリラ妹と技のゴリラ私の悪役令嬢物語  作者: 鍵っ子
一章:技のゴリラ幼少期
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ゲーム世界ですってよ、奥さん

この世界が()()()()()()()()であると、私だけが承知している。


「当時は若く……勢い任せで調べた結果、あっさりと証拠がつかめてしまいました」


 両親様の名字を知った三歳頃、書斎に潜り込んで色々調べた。証拠はアホみたいにあった。泣いた。吐いた。寝込んだ。騒がせた。ウルセェ! ショック位受けさせろ!


「おちつけ、過去の事、過去の事」


 さて、では私がいるこの世界は、どんな乙女ゲームの舞台なのか。ここからはほぼ原文ママ、そのゲームの説明文を想起してみよう……いや、ホントは現状を認めたくないからしたくないけど。


『メルスデルク王国に存在する貴族の子息子女が通う花の教育機関、『テラブル高等学園』で繰り広げられる、めくるめくラブストーリー! 俺様系男子、ダブル王子様に萌え系弟、さらに隠しキャラが三名の、計七名のキャラと織りなす甘い学園生活に、貴方はもう虜になってしまう!』(アオリ)


 はいここまで……ひどい。

 頭悪い。そう思った方は私と握手。

さすが頭枯れてる喪女を釣る為に作られただけはあって、私は謎にこのゲームにドハマリし、暇の許す限り繰り返していたのをよく覚えている。


 主人公は、とある王国に住まう菓子店の店員の娘、アメリア。

 彼女が五歳の誕生日を迎えたある日、アメリアの母は仕事の過労が祟り、突如帰らぬ人に。天涯孤独の身になって、どうすれば良いかも分からず母の墓の前で呆然としていたアメリア。そこに現れた男性、母から知らされていなかった自分の父親である現大公との出会いが、彼女の運命を大きく姿を変える。そして彼女を情熱的に愛する七人の青年との出会いで、変貌した運命は、更に加速していく事になる。

 攻略対象は七人、しかも明記されていないだけで隠しルートすら存在した、ボリュームだけなら大作レベルだ。内容? 察しろ。

 

「……私、よくこんな少女漫画も裸足で逃げ出す、お花畑なゲームやりこめたなぁ」


 存外、私は図太かったのだろうか。意外な真実。

 いやそれは置いておこう。問題は、この物語における私こと、メタリアの立ち位置だ。

 端的に、はっきり、明確に言って……天下無双のクソアマである。


「すごい、一言で言い表せるとかすごい」


 まあそれも仕方ないといえば仕方ないというか。

 なにせ主人公の前に立ちふさがる頻度がヤバい。何なら攻略対象よりもカットが多いという。そしていつも開口一番に言うのは。


『あら、ごきげんよう。ドレスは似合うようになりまして? 賤民』


 そして取り巻きと共にクスクス笑う。更に彼女とくっついている攻略対象すら煽る、貶すのオンパレード。ファンからは尊敬すら込めて『G姫』の渾名を冠するヘイト全一具合。

 その結末は、やりたい放題の学園生活での報いを受けるように、『家族との絶縁』、『司法の場での正式な断罪』、『国外追放』の三大悪役令嬢の嗜みセット。勿論エピローグで落ちぶれた姿はしっかり描かれた。奴隷より格好が酷かった。


『……もしかしたら、もしかしたら私の考えすぎという可能性も』


 そもそも私が乙女ゲームの悪役の名前と同じだとしてもだ、この世界が私の知っているゲーム世界であるという証拠は、どこにもない。

 その可能性を自覚した当時は、そう思って時を待っていたのだ。


『落ち着け、冷静になれ、単なる偶然の一致なら私に妹なんてできない、時間が過ぎるのを待って、学園入学前に妹が来なければ……』


 自分に言い聞かせて必死に時が過ぎるのを待っていた。何もありませんようにと。


 だがダメだ……どうしようもない、確定した未来だこれっ……!

 気のせい、気にしすぎ、気を違えている、三つの可能性は全部潰され、その代わりに非情な現実が刻一刻と迫っている。私はこうして、部屋のベッドで震えている。弱い。


「シスターに夜空のジ・スターにされる……終わる、私の人生終わる」


 いや、別に悪役令嬢やるつもりもないが……ここまで私の知っている展開に酷似していれば、私は悪役にならなくてはならないのかと思えてしまう。


「だがここで冷静になれ私。ビークール」


 そりゃ何もしなければ悪役ルートに行ってしまうかもしれないが、ゲームの世界に酷似しているとはいえここはリアル。蝶々の羽ばたきで町長が解任されるような、無数に可能性が枝分かれする現実だ。


「私は、生きた人間。行動すれば、何かが起きる」


何か大きな事を引き起こせば必ず、運命は変わる! 信じろ!


「三ヶ月後……私の、六歳の誕生日……」


 タイムリミットは、そこだ。

 そこまでに何かしないと、私は来る可能性の高い破滅の未来に怯え、黒バラ色の青春を送ることに……せっかくの二度目の青春がぁ!


「覚悟決めろ、私。きっと何とかなる」


 この家に来る超絶主人公に向けて、ここから色々と対策をせねばならぬ。


「私は、ノーマルメタリアじゃない。喪女の頭脳と経験を装備したルナティックメタリアだ。そう簡単に物語の荒波なんかに負けたりするもんか」


 くっ、殺してみろ!


「……ダブルピースで悪役令嬢落ちとか斬新すぎてやだなぁ」


 ファンタジーもメルヘンも関係なく、落ちるときは落ちるのである。くっころ女騎士を欠片たりとも私は笑えない……同盟とか組めないかな、いや、そんな女騎士の知り合い、おらんか。


「ともかく、頑張ろう……」


 ああ、背中が寒い……


という事で、とりあえず三話。

現状説明回二度目。ここまで読んでくださった皆様、お疲れさまでした。次の話も、読んでくだされば、幸いです。

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