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力のゴリラ妹と技のゴリラ私の悪役令嬢物語  作者: 鍵っ子
間章:技のゴリラ初等期・休暇
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実家でまったりと その二

「お姉さまにリベンジする為に、頑張ったかいがありました!」

「……アレウス、その。ダブルスコア差が付いたからって、その、ね?」

「いいんです……僕が実力不足だっただけですから……」


 いや、途中から『ん? これは……』と思ってたけどアメリアに手加減すると後が怖いから気にせずやっちゃった私も悪いんだよホント。やーね。


「じゃあ次は……これです!」

 あぁ、赤と緑のオセロモドキこれ、私。も学校の図書館で見たんだけど……

「あぁ、これ。『オシロ』っていうらしいわね。正式には」

「へぇ! これそういう風に言うんだぁ、オシロかぁ……」


 正式名称『オオカミとワシの殺し合い』だけどね。流石にコレ広まったら色々危ないという事でオシロとかいうなんかパチモンみたいな名前が広まったんだろうなぁ。いや、オセロこの世界に存在してないからまぁ、パチモンも何もないか。


「まぁ、私も向こうで少しは練習してたし。いいわ。相手をしてあげる」

「わぁ、じゃあ最初は私から! お相手しますね! お姉さま!」


 ふふ、さーて……


「メタリア姉さんとアメリア姉さんの一騎打ち……ゴクリ」


 ――全くもって練習していないこの状態をどうやって切り抜けるかを考えようか。勢いあまってなんか練習しちゃった♪ 的な事を言いましたがまるっきりの嘘にございます! やーだってさぁ、あんだけ楽しそうにしてたのに「すまねえ腕堕ちたわ」とか言えんわ。


「いっきますよー! じゃあ先ずは……ここ!」

「――そういえばアメリア。お母様との特訓はどうなの?」

「え? あぁ! はい! 最近は白鯨の新人の騎士の方と、組み手を!」

「えっ、そうなの……?」


 なんかすっごい事やってんね君。大丈夫? 怪我してない? あんまり無茶しちゃダメよ? ホント、女の子の肌は玉の肌って言ってね。宝物と同等なんだよ。


「……熱心ねー。けど、程々に、ね? 私も貴方の体に傷が残るのは嫌だもん」

「大丈夫です! ルシエラお母様が一緒に居てくださってますから!」

「へー……あ、ここね。頂き」

「あぁっ!?」


 とか話している内に良い感じの場所を貰った……ふふ、済まないアメリア。ちょっと私は大人げない事をしているのだよ。


「うー……」

「そんなに膨れないの。まだ一つ、良いポイント取られたくらいじゃない」

「でも、やっぱり悔しいじゃないですかぁ……」

「大丈夫、きっとまぐれよ。前は貴方の方が強かったのだもの。さ、膨れてないでもっとお話し聞かせて? 私の居なかった間の、楽しい事とか。それを聞きながら続けるわ」

「……分かりました! 私も、お姉さまに話したい事、いっぱいありますから!」


 ……ふふ、アメリア。すまぬ。貴女の話を聞きたいというのは本気だし、紛れも無い事実ではある。しかしこれにはもう一つ、重大な意味があるのだよ。


「えっと、それで……ですね」

「ふんふん? ……あら?」

「?」

「いいえ、何でもないわ。ささ、続けて頂戴?」


 良し、やっぱり……話している間はやっぱり打つ一手が鈍くなっているな。なんとか私でも相手できるレベルだ。ふふ。


「アレウスと一緒に、お父様のお馬に乗せてもらったんです! とっても高くて、揺られて! たのしかったです! ね、アレウス!」

「はい。庭を一週させてもらって。とってもいい眺めでした」


 お父様の馬か。それ程となると……やっぱあのバカリッチな馬かな。となると、アレだけ馬力あるんだし……あ、良いポイントめっけ。アメリアは気づいてないね。


「楽しかった? それじゃあ、折角だし遠駆けを頼んでみたら?」

「とおかけって……お父様にお願いして、一緒に走るって事ですか?」

「そう。お父様の馬は力強い汗馬。貴方達二人を乗せて走っても、とても速いわ」


 私みたく、ある一定の年齢になると、相手の話をちゃんと聞きつつ、手元の作業を止めないくらいは出来るようになるのである。しかし、これは慣れと経験で出来るようになるもの。アメリアにはまだ無理だろう。


「へー! どれくらい速いんですか!」

「凄い速いわよ。私、風になったのかなって、思ったくらい」

「わぁ……」

「きっと楽しいわ。今度、私も一緒にお願いしようかしら」

「はい! 是非! お姉さまと一緒に、広い原っぱで、風を感じてみたいです!」


 こうして話をしながら勝負をするだけでも、私有利に事は運ぶのである。ふふ、済まぬアメリア。私の努力不足を隠ぺいする為にも、このメタリア、容赦は……


「……何か持っていけるようなお菓子、作ってもらいましょうか」

「いいですね! 景色の良い所でアレウスと一緒に!」

「僕マドレーヌが食べたいです!」

「そうねぇ」


 ……とか思ってたけど。


「ちょっと話させすぎちゃったかしら。ごめんなさい、勝負に集中したいわよね」

「え? いいえ、そんな事!」


 やっぱ罪悪感凄いからやめますね……無理よ……この子相手にこんなセコイ手段取り続けるなんてさぁ……悪意を持って相対されるならまぁ、いいんだけど。こんないい子相手にゃ私はどないしようもないよ……


「えっと……あ、ここ! で、ここです!」

「あら、あらあら……取られちゃったわねぇ……じゃあ私ここ」

「それは悪手です! ここを取って……こう!」

「やー、凄いわねぇ……じゃ、私ここ」


 学び舎にて、色々悪意に対する対し方を説教されましたけど。爺。善意に対する対し方も教えてください。

悪意にゃ幾らでも対処できるが、善意相手には勝てない悪役令嬢。

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