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力のゴリラ妹と技のゴリラ私の悪役令嬢物語  作者: 鍵っ子
間章:技のゴリラ初等期・休暇
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実家でまったりと その一

「……あの人、アレを手彫りして作ったのよね……ホント。最初あの人変な宗教にハマったんじゃないかと思ったわ。まぁ、けどまだマシな方で良かったけれど」


 いや、あんなもん手彫りしてる時点で手遅れでじゃないでしょうかメトラン母様。


「ともあれ、おかえりなさい。メタリアちゃん。学び舎は楽しかったかしら?」

「あ、はい。お友達も出来ましたよ。皆、こんど私の家に遊びに来る、と」

「あらそう! じゃあその時は、私がお菓子を拵えて、お持て成ししないと」


 いやそんな事したら料理人っていうか、パティシエ系の人の仕事無くなっちゃうから止しましょうや。お仕事はその人たちに任せないと。ね?


「最近はここのコックさん達にお菓子を仕込むようになって、腕上がっちゃって! 序に普通のお料理も覚えようとしたら『奥様、お許しください、それだけは……』なんて。まぁ私みたいな普通の人に教え込むのは大変でしょうし、仕方ないわ」


 いや多分それは『この人に教えたらいよいよ何人か完全に仕事をもっていかれるかもしれない』という危機感と、流石に貴族の方々を本格的に厨房に入らせるのはマズいって言う善意の、混然一体の悲痛な叫びかと。


「まぁでも、先ずは今日。メタリアちゃんの為に思いっきり腕を振るわないと! デザート、楽しみにしていてね。メタリアちゃん」

「あ、はい」


 今日は仕事が奪われる事、確定らしい。ドンマイ厨房の人……い、いや! 待て、まだメトラン母様に負けてるとは決まってない。もしかしたら遠慮しているだけかも。




「あぁ、それですか。そのお陰で今日はもう上がりなんです。いやぁ、奥様には感謝しかありませんよ。こうして休暇を増やしてくださるのは。同時に、申し訳なくもありますがねぇ」

「そ……そうなの」


 特に仕事が奪われた―、とか落ち込んでいる訳でもないのか……ま、まぁ人間休みが増えたら蛮族の如く喜びを焚火囲んで祝うのがデフォ、みたいなところあるし。


「まぁ、私達も職場を荒らされたら文句を言いますがね……奥様は、調理器具も、私たち以上に丁重に、その上で私たち以上に効率よく、美味しく作られます」

「その上、教えて欲しいと言ったら分かりやすく教えてもらえる、とか?」

「お聞きになりましたか。えぇ、文句なんて言いようもありませんよ」


 まぁ、それに文句つけられる訳も無いだろうしなぁ。


「ではお嬢様。私たちはこれで……あ、つまみ食いは、程々に」


 ……話を聞く前に、一度くすねたのバレてやんの。久しぶりの我が家だからちょっとやってみたかったんですよ。えぇ。悪気は一切ありませんでした。はい。本当に。


「結構自信あったんだけど……アレかな。昔も気付かれてて、見逃して貰ってたとか」


 うーぬ。だとしたら昔っから自惚れ屋さんな所があったのかも……メタリアちゃん更に反省せにゃならんなぁ。うーむ、予期せぬところから黒歴史が……


「さーて」


 取り敢えず行きたい所は全部巡ったし。次に行くべきは……やっぱり、愛しき妹と弟の所か。確か、アメリアの部屋に居るって言ってたから……?


「お待ちしておりました」

「ロイ……どうしたのこんな所で。貴方もお母様から休む様に」

「自主的に返上させていただきました。お嬢様の事が心配ですので」


 酷すぎない? なして誰も彼も私を不運に呪われた娘扱いをするのか。もうちょっとくらい私の普通の幸運を信じていただきたいんですけど。


「アメリアお嬢様、アレウス様が、お部屋でお待ちです。エスコートをさせて頂きます」

「ロイのエスコートなら安心ね。じゃあ、私のお手を引いていただけるかしら、ジェントルマン?」

「そういうエスコートではありません。さ、参りましょうか」


 はいはーいと。エスコートなんて必要ないと思うんだけど、まぁ学校の色々な凶運を受け継いでしまっていたら、万が一窓を割って鷹とかが飛び込んできたとしても全然不思議じゃないし……アレ想像したら怖くなってきた。エスコートしてもらおう。


「二人はどう? 何して遊んでる?」

「遊ぶどころか。お嬢様が来るのを待っていますよ」

「え、えぇ……待たなくても良いじゃないの。別に。本当に律儀ねぇ」


 あー、こうやって歩く廊下も久しぶり。調度品も少しずつだけど変化してる。夏らしい涼し気な模様の絨毯とか、カーテンも濃い色から淡い色に。


「……時々、悪魔の彫像が見えるのはちょっと悪趣味じゃないかと思うけれど」

「一体だけじゃなかったと……統括程ではないですが、正直私も、少し頭が痛くなってきていますよ。まぁ、奥様が素振りを始めていらっしゃったので、そろそろアレ等も粉々になるでしょうが」


 うーん、お母様の練習相手になるのかあの石膏像。粉々どころか粉になって風に紛れて飛んでいくんじゃないかなぁ。


「まぁそれは良いでしょう。さ、此方ですよ」

「分かってるわよ。アメリアの部屋は私何度も言ったから、覚えてる」


 ではオープン・ザ・ドア。


「あ、お姉さま!」

「待ってましたよ。さ、一勝負、如何ですか」


 ……なんかダーツっぽいものが部屋の中に鎮座してるんだけど。


「僕たちで、姉さんと遊ぶために。作りました」

「っていっても、屋敷の人達と一緒に、だけど……」

「……そこまで私の為にやってくれたなら、やらない訳にはいかないわ。ルール、教えて頂戴な」




 因みに私は二位でした。


ダーツっぽいというだけでルールは大分緩いです。

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