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力のゴリラ妹と技のゴリラ私の悪役令嬢物語  作者: 鍵っ子
間章:技のゴリラ初等期・休暇
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帰るんだよぉ~!

「……オースデルクさん。分かっていますか? えぇ、本当に」


 ……あぁ、漸くだ。漸く実家に帰れる。そんなハッピーな日取りだった。ああけど、仕方ないのだ。これは。だから私も、こうして甘んじて受けている訳だ……


「先日の一件でもう何件目だと思うんですか。十ですよ十。貴女が関わった問題の数。貴女が原因ではないにしろ、貴女が居たから起こった、と思われても仕方ないくらいに貴方は問題の渦中にいたんですよ……分かりますか?」

「私に一切の責任はありませんわ、学長?」

「えぇそれは理解しています……本当に。臆病な程に私に『私のせいじゃないですから許して』という謝罪文を毎度毎度百通近く出してくれてますからね。えぇ」


 私だって、久しぶりにアレウスやアメリアと会えるっていうのに、変なケチは付けたくないんだよ。本当に。スッキリとした気持ちで帰りたい。だから。だから頼む。


「だからこそ、私の紹介する祈祷師のお祈りを、この休みの間に受けてですね」

「お断りいたします……間に合っているので」


 学校から『この子マジで呪われてんのと違うかな』とかいう凄い疑いの視線を向けるのは止してください……私は亀の様に大人しく学校生活していただけなんです……!




 部屋の中には、私、ロイ君、そして……ちょっとだけ髪が白くなったように見える爺。因みに私は正座中。えっと、その……お説教中です。


「……エリィア嬢と貴族の在り方で口論。自らの国を支える為に、必死に働いてこそ貴族か、なによりも自らに誇れる生き方をしてこその貴族か、二つの論争でクラス中を巻き込んで、シュレク王子の一声があるまで収拾がつかなくなった。これが先週」


 ちょっとした事だったんです。大事にならないようにロイ君を傍につけて、二人きりでの論争をしてたら、窓の下で偶然生徒二人が聞いてて、それがどんどん広がっていって。シュレクが居なかったらどうなっていたのだろうか、と。


「ベスティアーゼ様、ヘリメル様と名馬の見学。していたら一瞬の油断で三人まとめて馬に攫われ、一週間かけて名馬と共に学校に帰宅。これが先月」


 何の因果か、餌を上げようとしたらひょい、ひょい、ひょいと三人背に乗せられ大草原へ。お陰で辺境の村で暫く歓待を受ける事となってしまいました。村人さん本当にお騒がせしてごめんなさい、と思っております。


「そしてそのまた先月、一人で食事をした際に、豪勢な宝石細工を背負った伝書鳩を発見、それを偶然近くに居たシュレク王子と共に先生方へと届けようとして大騒動に」


 どうやら先生が国外で行方不明になっていた秘宝を拾って、それを自分のペットに括り付け、自宅へと運んで売りさばこうとしていたのを私が偶然保護。絶対関わり合いにはなりたくないから先生方に提出して知らんふり決めこもうとしたら……ね?


「これ以外にも、細かい騒動を含めれば十件……貴女に関係の無い事でも、まぁまるで罠に嵌められたかの如く巻き込まれて行って」

「その、統括……それで流石にお嬢様を責めるのは……その、ですね」

「分かっている……分かってはいるが……私がどれだけ、どれだけ……お嬢様を心配したか分かるか……? 入学当初のあの頃の方がまだマシだ。ちゃんとお嬢様に原因があるのだから。それ以外全部私は叱る事も出来ず……ただ、無力を晒すばかりで……」


 いや、ホント。悪いと思ってます。めっちゃ警戒して怖がってなお、こんな事態になるっていうのは。はい。


「最近の事件なんてもう、貴族の在り方をこの年から考えなさっているお嬢様の志、純粋に褒めたかったというのに……! 事件になったせいで、ああ、もう!」


 こんなに苦悩してる爺初めて見た。本当になんか、ゴメン爺。


「ご実家に帰ったら何よりも早く、祈祷を受けてもらいますからね、お嬢様。分かりましたか? 返事は?」

「はい」


 色々とダメダメになっていた入学当初より爺を苦悩させるとは……どうしてこうなったのだろう私。運命は『おめーの態度とか知るか、苦悩するんだよ』とでも言いたいのだろうか。私が悪役令嬢だからダメなのだろうか。


「……はぁ、先日私に届いた旦那様のお手紙に何が書いてあったか、ご存知ですか?」

「え、爺に手紙が届いていたの? どんな手紙だったの?」

「……『万が一我が娘を神が呪っているとすれば、私は悪魔に魂を売ろう』と」


 ヤベェ早く実家に帰って祈祷受けないとお父様が悪魔信仰してバフォメットの像に祈りを捧げ始めてしまう……! そんな事になったらアメリアもアレウスも秒でグレる! つまり断罪ですね分かります。


「直ぐ帰る支度を。夏季休暇は明日からだったわね?」

「え、えぇお嬢様」

「ロイ、爺。手伝って。明日の朝には大公領に入れるように夜通しで馬車を出して。私も荷造りは手伝うわ。お父様が道を踏み外す前に!」

「「――承知!」」


 ここに三人の心は一つになった。全てはお父様を守るためだ。急げ私。これ以上お父様に心労をかけてはいけない。ダッシュだ。


「いい、先ずは面倒な服から! 私が片端から引っ張り出すから二人は畳んで! 全部出したら私も加勢するわ!」

「承知しました……! ロイ! 服の片付けの合間に掃除もこなすぞ!」

「分かりました統括!」


 お父様を守るために! 私は実家に帰るぞー! うぉぉぉぉぉおおおお!


という事で夏季休暇編です。

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[一言] >していたら一瞬の油断で三人まとめて馬に攫われ 他はまだしもこれは確かに呪われてるとしか
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