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力のゴリラ妹と技のゴリラ私の悪役令嬢物語  作者: 鍵っ子
一章:技のゴリラ幼少期
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焼き討ちからギャンブルまで多彩にやる令嬢


 ――火炎が、濃紺の空を舐める。


「か、火事だ火事! 畜生、どうなってやがる、火の粉が飛んだのか!?」

「今は良いだろ! それよりも建物壊せ! 引火したら騒ぎになるぞ!」


 男たちが必死に、その火を何とかしようと焦るが、やはり捗ることはない。当然だろうか、ここは蛇口をひねれば水が出るような場所でもなく、またそんな技術も無い。


「柱から壊せ、壁は良い!」

「手早くだ、バレたら打ち首は免れねぇぞ!」


 手際は決して良いとは言えないだろう。それでも、必死に彼らが火を消そうとしているのには、やはり明確な理由が存在している、で?


「くそっ最悪だ、こんな時に悪運が尽きたってのか!? もし洞窟のアレが取り返されでもしたら……もう大公の動きを止めらりゃしないんだぞ!」




――オッケイ、確定。お母様達はあそこだな。


「ロイ、行くわよ」

「……宜しいのでしょうか、こんな事をして」

「あの、おねえさま、もえてます、とってももえてます、こげくさいです」

「いいのよ、ほっといて」


 ロイ君が病人でも見るような目で見てるし、アメリアが若干涙目だけど、気にしない。事が無事に終われば、アレも彼奴らの所為って事で片付く。


「しっかし、だーれも私たちに気が付いてないわね。効果は抜群!」

「そりゃあ目の前の小屋とか倉庫に突然業火が上がれば、だれだってああなりますよ」


 ロイ君が火を点け投げ込んだ火炎瓶は、見事小屋をバーベキュー状態に持って行って汚物共を引き付けた。やはり汚物と炎は切っても切り離せない関係なんだな。消毒される側だけど、アイツらは。


「……はぁ、この人本当に大公のご令嬢なんだろうか」

「聞こえてるわよロイ。私は大公令嬢、大公令嬢なんだから、焼き討ちの一つくらいは嗜んでいて当然でしょ」

「そんな嗜み持ってる焦げ臭い貴族とか嫌ですよ」


 日本じゃ黒髪の美少女が寺を焼き討ちしてるし、是非も無いと思う。まあここ日本とちゃいますけど、なんちゃってヨーロッパだけど。


「洞窟の入り口には……誰も居ませんね、いやこの状況で見張り残す余裕なんてないと思いますけど」

「ありとあらゆる警戒を剥ぎ取り、相手の精神を削り、なんなら負傷者も出す。完璧な策じゃない」

「そう聞いてると合理的に聞こえますけど、そこに至るまでの結果がごり押し過ぎるんですよ。初手焼き討ちとか、英雄譚の悪役ですらそんなにやりませんからね」


 私は悪役令嬢候補だから何も問題ないな!


「……お嬢様方、少しお待ちを」


 おや、もう洞窟の前に着いたか。そして流石我が家の精鋭騎士、ちょっと残念とは言えこういう場面ではしっかり切り替えて、警戒も怠らない。


「……少し奥にも人影無し。やはり相当奥に監禁されてると思われます」

「そんなところに……くずれたり、しないかしら」

「それは問題ないかと、アメリアお嬢様。そう簡単に崩れるようであれば、そもそも坑道を通す事も出来ませんから」


 成程。つまり地震とかぐらいじゃないと、ここは崩れたりしない、と。まあダイナマイトとかも存在しないし、そう簡単に『いしのなかにいる』とはならんだろう。


「そして誰も居ないなら、進んで大丈夫ね。行きましょうか」

「そうですね……って、メタリアお嬢様、だからといってそんなグイグイ先に行かれてもマズいです!」

「ここで立ち止まってたら、何れ戻ってくるオヤジ共の餌食よ。即断即決!」


 っていうか勢いで行かないと私も怖い。火炎瓶とか使ったけど、隠し玉なんざあれで最後だからね? 私たちオンリーで捕まったらもう終わりだよ……いや巻き込んだのは私ですけども、そう言う罪悪感も勢いで誤魔化すんだよ!


「っ……申し訳ありません、失念しておりました。参りましょう」

「アメリアは、私とロイの間に。ロイは最後尾、お願い」

「わ、わかりました」

「はい」


 さて、分かってるとは思うが、坑道で、もう夜だ。当然暗い。キャンプファイヤー地点からたいまつを失敬してるが、それでも薄暗い。この状態でのバックアタックとかマジ勘弁なので、ロイ君にその辺りの警戒を丸投げしてみる。


「……勢い込んで入ったはいいけど」

「はい」

「お母さま、何処にいるのかしら……」


 そうでもしないとこの分かれ道とかあるだろう坑道で、長いことお母様探して彷徨うとか、出来そうにないし……ホント、どうしよう取り敢えず……棒でも倒して、進む道決めてみようかな。




「お嬢様、外れです」

「お、おねえさま……あの、その、ぼうをたおしてうらなうのは、もうやめたほうが」

「もうここまで来たら止められないのよ……っ! それに、行動の指針となっているという点で、決して無駄な行動ではない……っ!」


 分かってるよ。

 棒倒して道を占い、外した回数、五回目。ぶっちゃけ、入り口もわからなくなってる。んでもって選んだ道が何度かダブっている可能性まである。これメタリア知ってる、ドツボにハマってるって奴だ。


「だが引くに引けない乙女道……やって見せましょ貴族の意地で!」

「っ! おねえさま、ここまでしっぱいしてもめげないなんて……これが、きぞくたるもののすがた!」

「いえ違いますアメリアお嬢様、あれはギャンブラーの末路です」


 ロイ君うっさい。今の私がダメ人間入ってるっていうのは自覚してるわ。けど、けどここで引いたら今まで払った精神力とか諸々が無駄になるんだよ……ギャンブルの勝ち方を知ってるか? 勝つまでやるんだよ!


「次こそ、次こそは……オラッ!」


 向かう方向は二つ……六回目の正直、元の二倍なんだから効果も二倍だろっ! 私にヴィクトリーロードを示してみせろぉ!


「……まっすぐ、このまま真っ直ぐよ!」

「はい、おねえさま」

「大丈夫なんでしょうか……む?」


 おや、どしたロイ君……いや、これ、私にも分かるわ。肉の焼ける匂いがする。こいつ夜食にハムかなんか焼いてやがるなぁ?


「これは……漸く、よーうやく、当たり、かしら」

「恐らくは……参りましょう」


因みに焼き討ちはリアルでもこの小説内でも、山火事不可避の重犯罪です。お嬢様の思考が脳筋思考の誘導方法しか思いつかなかっただけです。

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