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力のゴリラ妹と技のゴリラ私の悪役令嬢物語  作者: 鍵っ子
二章:技のゴリラ初等期
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そして、学び舎の日常へと

「えー、皆さん。お待たせいたしました。今日から授業の再開です……とはいえ今日も自習なので、皆さんとしては待機中と大して変わらない生活かもしれませんが」


 いや休暇の最中は最中で色々と大変な事もあったので、学校生活が送れるだけでも凄い嬉しいっす先生。襲撃とかトラブルの無い生活万歳。


「とはいえ、今は学び舎での生活。自室に居る時の様に、気を抜き過ぎないよう注意をして、自習に励んでください。お友達と友情を育むのもいいでしょう」

「だって、メタリィ! お話しましょ!」

「……ベスティ、その、自由にお話をしていい、という話ではないと思うわ」

「はい、多分遠回しに『節度ある生活をしてください』という事を言っているのではないかと……なので、あんまり思い切り話すのは、その」


 絶対ブチ切れられるんだよなぁ。『おらぁ! 生意気な生徒は体罰だ!』とかなると凄い怖いので自重したいです。っていうか今の時代は体罰とか普通にあるから、ワンチャン貴族の子息子女とか全然関係無しに飛んでくる可能性アリ。


「え~……」

「まぁ、その……声を落として、ちょっと喋るくらいなら大丈夫だと思うけど」

「そうですね。先生に怒られないくらいで、お話ししましょう」


 ――と言った所で。いよいよ学校再開、という感じなのですが。え~、心機一転した結果、ちょっと学校に居ること自体が怖くなってきた私です。はい。さっきからちょっと口調が自信なさげなのはそれが原因です。


「でも、エリィアも結構お話してるっぽいわよ?」

「他所は他所、私達は私達、よ。それに、大きな声で話す必要は無いでしょう?」

「うぅ、まぁそうだけど」


 っていうかファラリスは、あんなしっかりした声でよく話せるもんだ。先生に怒られるっていう反応がないのだろうか。あの子怖いもの無いの?


「あぁ、そういえばヘリメル」

「はい?」

「実家からの返事が来たわ。夏季の休暇、お父様から是非来て欲しい、と。そのお抱えの職人も連れて。と」

「――はい! 是非伺わせていただきます!」

「やったわ! 夏はメタリィのお家にヘリメルとお泊りね!」


 あ、いや、ちょっとまって、だから声を落として! サイレント! 静かに!


「……あ」

「ご、ごめんなさい、その……ちょっとはしゃぎ過ぎてしまいました」

「うん。これからは気を付けましょうね……」


 やーホント、こういうちょっとした評価からヘリメルとかベスティが悪い子、とか思われるのも怖いし。そこは自重するように出来るだけ私が言おう。序に私は常に蚊が鳴くくらいの声で行こう。深窓の令嬢らしく自らを偽装するのだ。


「ねーでも、夏季休業、皆で行けてよかったわ」

「はい。正直、私は一人だけ仲間外れにされるのも覚悟してましたから」

「へぇ一人だけ……ってなんでそんな悲しい想像をしていたのかしら……?」


 家の格がとか? 大丈夫よ? お父様は「友達来るの! 全然いいよ! おいでおいで! もう家あげて歓待しちゃうから! いやー久しぶりに心弾む知らせだ! いやーもう最近はホント色々暗い事ばかりだったから」とかめっちゃコイコイムードだし。


「貴女だけ仲間外れ、なんて絶対しないわ。約束する」

「メタリア様……ありがとうございます。嬉しいです」

「ヘリメルはそれまでに王子様になれる練習ね。メタリィの家に行くなら必ずご一緒するだろうから。また倒れちゃったら恥ずかしいわよ?」

「……精進します……」


 こんな可愛く震える子を差別とか、それこそG姫ルート一直だとおもうのよね。差別一回断罪の元。ホント、コレを肝に銘じておきましょう。


「どうする? またシュレクに協力してもらおうかしら?」

「いいいいいいえ……そんな、光栄な事になったら私……消滅します」

「消滅する……!?」


 差別する前に消滅の危機!? そこまで王子に対する憧れが……マジでショックで心筋梗塞とかもあり得そうだし、それを避ける為にも穏当な手段で行きましょう。


「じゃあ似顔絵とかかしら。そこから試していきましょう」

「似顔絵って……誰に頼むの? メタリィ」

「爺に。あの人なら似顔絵くらい余裕でかけるわ」


 爺ってばまあ万能だし。出来ない事探す方が難しい。本人曰く『女性を口説くのと皿を誤って割ってしまうのは苦手ですな』との事。後半は謙虚に見せかけた自慢だよ……爺。


「はえー、凄いわねぇ……」

「えぇ。私の自慢の爺だもの。何でも出来るわ」

「さ、流石は大公様の配下……根本的にそこらの人とは全然違いますね……!」

「貴女、夏にはその人の歓待とお世話を受けるのよ?」

「緊張してきました……!」


 緊張せんでもええやん。リラックス……し過ぎてもまぁ、油断するかもしれないから程々にしましょう。はい……さて。


「夏まで、いろいろやる事はあるわ。ちょっとずつ、進めましょう?」

「うん!」

「はい」


 決して油断せず、決して慢心せず、決して仮面を崩さず……ふふふ、今度こそ、冷静沈着な大公令嬢、として、演じ切って見せる……


「――オースデルク! 一緒に勉強しません事?」

「――そちらの方が効率が宜しいからかしら?」

「それ以外に何かあると?」


 この、新しく増えた隣人……友人? と、共にね。


次回は時間軸が飛びます。

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