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力のゴリラ妹と技のゴリラ私の悪役令嬢物語  作者: 鍵っ子
二章:技のゴリラ初等期
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就職斡旋いたします。

 屈強な男どもに、命令を下すのはご婦人一人。


「いーい、徹底的に探索するわよ。もう絶対に、取りこぼしの無いように。此度の一件の様な問題をもう一度起こされれば我々の一生の恥、その上塗りになるわ」

「ウィ! マダム!」

「いやでしょう、なら全力で事を成しなさい。アリの子一匹逃しちゃダメよ」

「ウィ! マダム!」


 素朴な疑問なんだが、マダムなんだ。既婚者なんだ、リビドアさん。いやそこは気にするべきじゃないのは分かってるんだけど。でも、あんな凄いおばあさんの夫ってどんな人か気にならない?


「ねぇ、ロイ。気にならないかしら?」

「いいえ。その様な事を聞くのは些かに野暮かと思いますので」


 否定はしない。一回、爺の奥さんの事聞いたら、五時間ぐらいずっと子供さんの話を関係あるからってされて、でそうしている内にいつの間にか煙に巻かれてた事もあったからね。話したくない人はそうなんだろうけども。


「アレだけの人の旦那さんっていうと、気になるのよねぇ……」

「……結局お嬢様は何が申されたいのですか?」

「いえ、ああやって寮内をくまなく、一切の妥協無く探し回る衛兵の皆様を見ていなきゃならない程、私たち暇ねっていう話なのだけど……」


 いやー、もういよいよもって学校が休みだと暇だよ。もう手紙は出し終えちゃったし。学校内に曲者残ってないかの徹底的な探索が終らない限り、学校も再開しないし。


「でしたら、統括からお嬢様に伝言が届いています。お嬢様の証言が採用されたとの事でした。裁判の方も、ほぼ確定したとみてよいかと」

「あらホント? という事は良い知らせを持っていけそうね」


 それなら行きますか。何故かこんな学校にもある、地下牢。




「こういう施設がある、という事は……そういう事を想定して作られたと考えて宜しいのですか? 寮の方もそうでしたが」

「えぇまぁ。貴族の子息様の通う場所ですからな。そりゃあある程度は」


 ……なんだろう。ここの看守さん、衛兵の皆さんと比べても一番ゴツイ気がする。いや、タイプが違うんだとは思うんだよ。でもそういうの抜きにして、顔の傷の多さとか、そもそもの目つきの鋭さとかそんな感じの諸々が、凄い。


「しっかし、こんな暗い場所に、貴族さんの淑女を送り込む事になろうとは。下手を打ったら俺の首も飛ぶなぁ……はは」

「そんな事にはならないわ。ここには、私の責任の元に来ているのだから」


 とはいえウチより断然暗くて湿っぽい場所だなここは……大公の家って牢もソレなりの仕様だったのか。何から何まで、全く外に出ると新発見が多い。


「っと、奥の突き当りですね。ご要望通り、一番マシな牢を使わせていますよ」

「ちなみに残りの牢はどんな感じなのかしら、参考までに聞かせてくださる?」

「まぁここに忍び込もうとする輩は相当に気合が入ってるんで、吐かせようとしたり、脱出しようとしたり……そういう時にもまぁ激しいもんで。それで……」


 ……うわ。匂いは無いし乾いてるけど、この跡って……あ。


「お嬢様、これ以上は」

「……ロイ。些か過保護に過ぎやしないかしら。態々手で目を塞がなくても」

「お嬢様にはこのような光景には慣れていただきたくないですから。過保護と罵られる程度なんという事もありません。さ、お早く先へ」


 まぁ一瞬目に入ってきたあの点々。もう四方八方に飛び散ってたのを見るだけで、どれだけ激しかったのかは、分かろうものだ。


「……此方です。まぁここは本当にキレイなもんですから、そこまで警戒せずとも大丈夫ですよ。まぁ、ちょいとカビとか雑草とか色々生えちゃいますが」


 お、手が退いて。うん、確かに血の色とかは無し。っていうかコレ使われた事ないからほぼそのままってだけよね。まぁそれなら比較的、綺麗か。


「……おぉ、嬢ちゃんか。ここに居るって事は、駄目にしろやり遂げたにしろ」

「貴様、口の利き方に気を付けろ。気安く『嬢ちゃん』などと呼ぶんじゃあない」


 怖い。さっきまでの温もりティにあふれた話し方から一気に変わった。ギャップが凄すぎるのよねぇ。そういうのは少しでいいから自重してホント。つーか、スゲェ山賊みたいな髭面してんなおっちゃん。素顔そんなんかよ。


「――やり遂げた、以外でここに来るつもりは無かったわよ。えぇ」

「つまり期待していいって事かい?」

「えぇ。貴方には情状酌量が認められ、罪も相当軽くなるわ。せいぜいがパン一切れ盗んだくらい……一応私も頑張ったのだから、その辺りを覚えておくように」

「そりゃあ有り難いこって……」


 で、本題はここからだ。


「で、覚えていたのなら、解放されたら私の所……まぁ要するに大公領まで来なさい」

「あん? なんでそんな所に」

「貴方位有能なら、白鯨の門、通れるかもしれないしね? 一応お誘いを、と」


 ふふん。驚いた顔しやがって。


「……は、白鯨っていやぁ、大公が率いる伝説の……お、俺なんかが入れるのかよ」

「勘違いしてる人も多いけど、白鯨は領内から平民貴族関わらず人材を募集しているのよ。元罪人とて、一切分け隔てなくね」


 っていうか伝説なの、白鯨って。私そんな事一切知らなかったのだけれど。


「私にできる事はここまで。まぁ、後は這い上がって見せなさいな」


そりゃあ大公とかいう天上人の率いる私設の滅多に表に出ない騎士団なら、伝説とか呼ばれるよ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 白鯨の伝説っぷりは夫人が来てから磨きが掛かったんだろうなぁ
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