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力のゴリラ妹と技のゴリラ私の悪役令嬢物語  作者: 鍵っ子
二章:技のゴリラ初等期
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従者サイド:踊る会議

 会議は進む、意見は飛び交う。決して、実りの無い話し合いではなかった、と胸を張って言えるだろう。稀代の奇策と呼べるものすら出て来た。しかし……しかしっ!


「ダメだっ……どれもこれも、有効打になり得ん……っ!」

「真剣に考えると、意図せずして混乱に陥りやすい、とは言うけど……まさにカオスね」


 無数の策略の残骸が散乱する、緊急対策会議の卓上。あぁ、取り敢えずの時間は稼げたというのに、俺達は一体、何をやっているのだろう……ここまで案が出ているというのに、肝心の要の突破口は何一つ見つからない。


「……おのれ……」




【作戦一】 煙で炙り出す

 古来より、城を攻めるのは火攻めが常套策である。ではなぜ火攻めなのか。炎があっと言う間に城を纏うからか? それとも、手っ取り早く、尚且つ安価に実行できるからか?


『室内を責める常套策を、まずは考えるべきだろう。となれば……やはり』


 否。木で出来た砦などなら兎も角、石を積み上げて作られた城には火は通じず、そもそも城を包囲するだけでも相手に与える重圧は大きい。安価どころか戦争ならば、態々金を追加でかけずとも実行できる城攻めなど、やらない。


『煙だ。煙なら中の男の視界を塞ぎ、尚且つ力を奪う事も出来る』


 火攻めの最大の脅威は、炎でも、安さでも、ない。ありとあらゆる隙間から侵入する形なき毒、煙だ。吸い込めば咳を強制し、下手をすれば喉を焼く。そして煙を完全に防ぐ手立てなどこの世には存在しない。


『煙で暫く相手を弱らせ、その上で突入すれば……』

『何を言っている!? そもそもその煙でお嬢様が危険だろうが!』

『……あ』


 ただ、当然煙は垂か特定の人物を狙い撃ちにする、などという器用な真似は出来ない。室内に煙を放てば皆纏めて煙の餌食。一人残らず昏倒するだろう。ましてや、お嬢様はまだ幼い、煙を吸い続ければ死もあり得る。


『内部に直接干渉するにはいいかもしれないけど、スマートな作戦じゃないわね……』


 ごく当たり前の事実によって、この作戦は頓挫する事になった。

 因みに同じ理由で水攻め、兵糧攻め、などもダメという事に。というか水攻めなんぞやったら寮自体がダメになると、寮長殿に提案者はシバかれていた。




【作戦二】長距離からの狙撃で制圧

 戦で将が死ぬ。その中で結構多い死因として、遠距離からの弓での一射による狙撃があげられる。面倒な輩は真っ当に相手しない。戦の常套手段。


『弩、最悪弓でも構わない。我々とて、この重要な施設の守りを任された兵です。必ずや一射にて仕留めて見せましょう』


 故に、内部に居る誘拐犯一人、弓で仕留めてしまえば問題は無い。弓の速さより、お嬢様を殺す動きが勝るとは到底思えない。立てこもり犯を仕留めるなら、成程。これ以上にない手段に思える。遥か未来でも常套手段になるのではないのだろうか。


『まぁ、悪くないと思うけれど……何処から狙うの?』

『……あ』


 尚、その窓を狙撃できる位置に足場があれば、の話ではあるが。ここは二階、高台から狙い撃つ必要があるが……しかし、そんな都合の良い足場がある訳なかった。


『あ、足場を組み立てましょう! 夜陰に乗じれば気付かれず事も成せるかと!』

『お馬鹿ッ! 音でバレるわ! そんな呑気にトンテンやってたら!』


 最終的に、如何に静かに足場を組むかの話になり、もし静かに足場を組めれば窓からの侵入も容易いのではないか、という話なったが、結局静かに足場を組むなど無理、というかそんなん手間するくらいなら梯子の方が早い。という事になって全て流れた。


『梯子で直接窓から侵入を!』

『窓開いてると思う? 割ったら間違いなくバレるわね』


 ……全部流れたのである。うん。




【作戦三】大量の食糧で誘き寄せる。


 煙で燻す作戦を派生させ、とある妙策を思いついた衛兵も居た。煙は形を持たず内部へと向かう。であれば、良い匂いを送り込めばいいのではないか、と。


『名馬とて、自分の好物が目の前に釣られればタガを外して走ります。同じように、匂いの出る……例えば、スープ等の香りを充満させ、精神的に攻めるのです』

『成程、煙と兵糧攻めを組み合わせた策ね……悪くないかもしれない』


 確かに、籠城している敵にとって、かぐわしい香りというのはかなり心に来る一手ではないだろうか。おいしい食事というのは、相当に心をつかむ。そうでなくては、美食家、などという趣向が貴族の間で流行る事も無かっただろう。


『成程、これはいけそうです、早速準備を!』

『あ、でもそれだけガンガン室内に匂いを充満させるとなると……例えばスープなら相当大きな大釜が必要になるんじゃないかしら。ここにそんなのある?』

『……え、っと。い、一応探してみます。ちょっとお待ちください』


 結果として、条件に合いそうな大釜は存在しなかった。序に言えば、そんだけの量のスープを作ったら食材が枯渇しかねないと、厨房から凄まじい抗議が入った。


『……これが出来るのは、文字通り、世界を制した覇者か、相当の飽食の時代に生きている人物位だと思うわよ……』

『そうですね……』




【作戦四】投石器で人が空を飛び、室内に突っ込む。

『相手は人間。所詮は常識の外には出れぬもの。となれば! 常識破りの策が必要です!』

『命中率、弾丸にされた人の死亡率、そもそも成功したとして、内部で動けなくなって第二の人質になる可能性。全部加味した結果、却下』

『何故!?』

 ……一瞬、これは革命的ではないかと思った私を呪った。




「……て、手ごわいですね……」

「そうねぇ……あー、ホント、嫌になってくるわ……」


 ぐぬぬ……まだだ、まだ諦めるには早い……! 


四つ目は未来でどっかしらの軍隊がやってそうな気もします。

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