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力のゴリラ妹と技のゴリラ私の悪役令嬢物語  作者: 鍵っ子
二章:技のゴリラ初等期
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従者サイド:外での作戦会議

「……先ほどの要求、どう思われる?」

「誘拐して迄する事か、とも思いますが。元の一件が一件ですからね。はい」


 お嬢様を連れ去った、ジェイル子飼いの兵が立て籠って、暫く経つ。突入して確保する事は、難しい事ではないが。やはりお嬢様の安全を確保できて居ない以上、下手に動けばお嬢様が危険だ。


「事実関係の確認は?」

「その辺りは間違いない……と思う。ジェイル家の嫡男が暴動が終息した前後、彼の部屋の前で警備、というか部屋の番をしていた私兵が一人いたのを掃除担当の者が確認している」

「つまり、この手紙に書いてあることは、真実の可能性が高い、か」


 そんな時、扉の下から出されたのが、要求を記した手紙。内容は至極単純。『俺はあの襲撃の一件にはかかわっていない。連座で責任を取らされるなんざまっぴら御免だ。お嬢様を無事に返してほしければ、俺を無罪としろ』、と。


「何もやっていない一人を見逃す事で、大公の愛娘を救い出せるなら御の字だと思うが」

「それは現場の私達の判断……お嬢様を救い出した結果として、今回の問題が羽虫の羽ばたきに思えるような、大きな問題が起こらないとも限りません」


 大公の令嬢を誘拐した相手を、態々無罪放免で逃がした、という事が分かれば、政治の世界でどれだけのネタになるか。そもそも、先の事件も、そうとうな話題になっている事は想像に硬くはないのだが……


「兎に角、ここは上の指示を仰ぐのが……」

「遅すぎる。流石にそこまで犯人が寛容に待ってくれると思えるほど、お気楽ではない」

「しかし、この内部に立てこもっている相手に対し、強行突入というのは……」


 ……会議は踊る、か。俺も何かいい案がある訳でも無いから、特に何も言えんが。なんとも歯痒い。力任せでは、どうしようもない。こんな時、ご実家の旦那様がここの指揮を取っていれば……と思う。


「なんとか、なるのかもしれないのに……」

「――ったく、何を不安そうな顔してるの。貴方の主が攫われてるのよ? 貴方が燃えないでどうするの。シャンとなさい!」

「っ!? リビドア殿!」


 やはり、この方だったか……寮長にしては信じられない実力に、いつの間にか騒ぎを制圧した手際の良さ。関係ない訳がない。


「りょ、寮長さん……!? どうしてここに!?」

「校舎内なら兎も角、寮は私の管轄内。私が解決しなきゃ、嘘でしょう。専門家として雇われた、意地もあるわ」


 あ、その辺りは知らなかったのか。じゃあ泣いてる寮長殿への態度は、演技とかでは無く本当に知らなかった、と。ホントに秘密裏、という奴だな。


「まさか貴方が!?」

「ったく。私を引っ張り出すようなことにはならないと思ってたのに。それがまさか二日続けて。否応なく気合入れさせられたわ……状況は?」

「えっと、此方へ。部屋の構造はここに……」


 この人が動けば、まず大丈夫、かな。正直、自分より圧倒的に頼りになる感じがする。専門家と呼ばれているなら、それだけの実力もあるだろう。とはいえ、俺にやれる事があれば何でもするつもりだが。


「構造は良いわ……なんで私がここに呼ばれたと思う? ここが相当厄介な場所で、構造も私が一番把握しているのよ。ここに載っているのより、正確にね」

「より、正確に?」

「どの家にも、屋根裏ってあるでしょう? 屋根があるから当然だけど、この寮はそこにも対策をしてる……天井には態々二重に板張りをしてある。おまけに扉は丈夫な樫、そこに銅板を挟み込んで作った特注……理由は、分かるわよね?」


 ……そうか。ここは貴族の子息の入る寮だった。万が一にも、俗に侵入されないように様々対策はしてあるのか! 貴族の入る学校、というだけあって、考えてある。


「でもそれが……今回は裏目に出た。厳重に固め過ぎて、鍵をかけて立てこもられたらこっそり忍び込むのはまず無理ね」

「忍び込むって……」

「強行突破は無理。取引もそう容易くは出来ない……となれば、自然と辿り着くのは忍び込むくらいなもの。まぁ、それも無理って訳だけどね」


 いよいよもってここに侵入するのは不可能、という事か。


「しかし、そう簡単には取引は……出来ません。上の判断を仰がないと」

「そう言ってみれば? 案外落ち着いて待ってくれるかもしれないわよ?」

「いや、しかしそれは……」

「こういう時、犯人にとって人質は大事な宝物、この状況で唯一に頼れる糸よ。余程怒らせたりしない限り、傷つけたり、乱暴したりしない」


 す、すごいな。そんな事まで分かるのか……流石。専門家。


「兎に角、こういう時は絶対に、焦っちゃダメよ。時間を稼いで、状況を打開する術を模索するのよ。分かった?」

「……分かりました」


 悠長にも思えるが……確かに、下手に動いて、傷つけるよりは……


「とはいえ、何も考えないのも、問題外……さて、じゃあ話し合いを続けましょう」


 ……話し合いで、話すべきは。何処からも侵入不可能な、完全な棺桶と化した、この部屋をどうやって攻略するか……もどかしいが、必ずお嬢様を助ける為だ。耐えろ、俺……!


実際、強行突入とかは下策も下策って親戚が言ってた気がする。

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― 新着の感想 ―
[一言] こちら側に抱き込んでひょっこり出てきそうwww
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