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力のゴリラ妹と技のゴリラ私の悪役令嬢物語  作者: 鍵っ子
二章:技のゴリラ初等期
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幕間:従者最大の失態

 お嬢様の気まぐれはいつもの事だが、今日は随分と、突飛だったというか。リビドア殿に手紙を届けた直後に『書き直すわ!』だからなぁ……お陰でもう一回寮長殿の部屋に走る事になってしまった。


「まぁ、どんな命令であれ、余程の無茶ではない限り従うけど」


 寧ろ、家族への手紙を書きなおしたいなど。可愛らしいものではないか。より家族への思いをしっかり伝えたい、書き直してみたい。うんうん、実に子供らしい我儘。こういう我儘であれば、幾らでもかなえて差し上げたい。


「……ちょっと覗いてみるか」


 音を立てないように……そっと、扉を開けて……っと。


「……集中してらっしゃるなぁ」


 外聞とか一切気にしてらっしゃらないな。ああ、あんなに悶えて、捻って、反り返ってらっしゃる。多分ご友人とか入ってきたら一生の恥とかいって転がるんだろうなぁ……


「まぁ、その時は俺に出来る範囲で慰めよう。どれだけの効力は知らないが」


 もしかしたら勝手に元気になっている可能性もあるが。お嬢様ってそういう所があるからなぁ……それがダメだったら、いよいよ俺の出番か。


「しかし、手紙か……私が出すとすれば、父上にだが……」


 そもそも息災なのか……白鯨の前、あの騎士団に入ってから、無事の便りも無かったしなぁ……気にしてなかった、と言えばウソになるが、白鯨騎士団に入ってからも忙しかったし、漸く余裕を持てて、そっちに思考を裂けるようになった。


「……統括に相談してみようか」


 あの方なら、もしかすれば意外な人脈などを使って、何かしらの消息を掴めるかもしれない。受けてくれるかが微妙だが……いざとなれば、土下座でも何でもしよう。


「無事ならいいのだがなぁ」


 まぁ、それは夏季にお嬢様のご実家に帰ってから……おや? ノックの音? ご友人が訪ねてこられたのか……いや、それにしてはノックの音が些か重いような……


『……カモンロイィィィィィッ!』

「っ!? お嬢様! 何事ですか!」


 ……っ、鎧、だが衛兵の物じゃない、つまり曲者!


「っと、動くなよ……!」

「っ、貴様ぁ! お嬢様に刃を向けるなど、貴様八つ裂きに切り刻むぞ!」


 先日の事がまだ心の傷になっているやもしれんというのに……し、しかし、駄目だ。


「悪いな、俺も、手段を選んでいられる状況じゃないんでな。お嬢様は借りていく」


 喉元。あそこ迄剣を近づけられると……間に合わない可能性がある。

 万が一にも、お嬢様の喉に傷がつく可能性がある以上……動けん。助けられる、などという奢りで、お嬢様を……! 落ち着け、俺、焦れば余計に……!


「安心しろ……あの坊ちゃん程、頭イカれちゃいない。殺しやしないさ」

「信じられると思うか、貴様……っ!」


 俺にやれる事。そうだ時間稼ぎだ。出来るだけ、話を引き延ばせ……応援、誰かが気が付くまで! いや、気が付いたとしても、この状況に手を出せるか!? いや、万が一、リビドア殿が、気付いてくれれば……!


「まぁそういう反応だよなぁ。だから俺だって、こういう手段せざるを得ないんだよ!」

「っ、まてっ!?」


 しまった、考えてる間に、お嬢様を小脇に……ええい! 逃がすかっ!


「待て貴様っ、どうせ逃げ場はない! 大人しく諦めれば、罪も軽くなるぞ! お嬢様を万が一にでも傷つければ、罪は一気に重くなる!」

「だから傷は付けねぇって言ってんだろうが! くそったれ、だから嫌なんだよ……!」


 それを信じてたら罪人など誰も捕まらんわ……! とはいえ、お嬢様を抱えている上に俺より足は遅い、追いつけないという事も無いが。そこからどうやってお嬢様を取り返すかそれが……っ!?


「部屋が空いている……!?」

「へ、残念だが追いかけっこはここまでだ! あばよっ!」


 し、しまった逃げ場所は確保していたのか……っ、扉が、閉まる、間に合わないっ!


「っぐ! 貴様、おい! 開けろっ! っく、駄目か……!」


 鍵を閉められた。立てこもられた……!


「……兎に角、逃げられないように、応援を呼ばないと……!」




「それで、この中に?」

「……はい。一歩遅れなければ、あの男を確保できたと思うのですが……」


 衛兵が五人。生徒の勉学の妨げにならないようにと、内部には最低限の人数しか置いていないらしいのだが、それにしても流石にザル過ぎるとは思う。五人でこの広い内部を完璧にカバーできる気がしない。


「分かりました……外部の兵を応援として呼びましょう。部屋の外も徹底気に固めていくつもりです。絶対に逃がしはしませんよ」


 良し、これで最低限逃走は許さないはずだ……!


「しかし、立てこもりというのは厄介ですね。無理矢理に突入すれば当然人質が危険、かといって潜入しようとしても、余程静かにしなければ、気付かれる可能性が高い……」


 私も潜入は出来るが、専門ではない……クソ、八方塞がりか!


「……専門家を呼ぶしかないですね」

「専門家?」

「はい。万が一の時の為に、学校長が、こういった建物内部での戦闘の専門家を雇っていると、関係者には内密に知らされてあるのですが……」


 えっ、もしかして。それって。


あんまり活躍させられて上げらなかったキャラ達で後半戦、やっていきます。

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