物語に関わる禁忌な事
王宮は大混乱、肝心の張本人は被害は最小限と来た。頭が痛くなってくる。これの原因が私だってんだから、笑えもしないというか。もう一つの原因と思われる子は……まぁまだ我が家に居るし問題は無いけど。
「色々大変ねぇ……国王様はなんて？」
「『安定ばかりを取って、この国の腐敗に気付かなかったは自分の責任でもある。そろそろ国を大きく立て直す時だ』との事だ。学校の件も踏まえ、色々と動くと」
うむむ、またも私が全く知らない、というか把握のしようもない大きな出来事……私、原作を相当歪めてるんじゃないかなぁ、もう。断罪も起きない？ いや油断はできないからそこは気を付けるとして。
「内容はまだ決まってはいないが、相当大きな改革になる可能性は高いと」
「それを私に知らせたのは、紛いなりにも私が王族だからかしら？」
「まぁそういう事になるな。将来は王宮で働いでもらう可能性が高いお前には、後から色々話すよりも今からちょっとずつ慣れて貰った方が良いという判断からだ」
いや私、別に行きませんけど？ 王宮になんて。大人になったら領地でスローライフなんで。そんな地獄の底に行くような自滅行為誰がするかよ。
「領地に引っ込もうなどという真似はさせないから覚悟をして貰おう」
「思考を読むなすっとこどっこい」
「スットコ……？」
「無礼者って意味よ。簡単に言えばね。東の国の言葉でね、覚えて置けば役立つかも」
まぁ、本当は私の国のスラングみたいなものなんで、この世界ではまず私くらいしか知らない言葉ですけど。だから容赦なく使ったんだし？
「ふむ、スットコドッコイ、か。案外語呂が良い、使わせてもらおうか」
「いや使わない方が良いんじゃないかしらね……品のいい言葉では、無いと思うから」
「ふむ、猶更使ってみたくなったな。王子らしくない事をしてみたい時に、丁度いい」
いやバッドガイにあこがれるヤングボーイじゃあないんだから……止しなさいよ？
「それよりも、だ。もう一つ訊きたいことがある。これに関しては、父上もまだ承知して居ない。俺が関係者には、あまり関係ないだろう、と言ってあるからな」
「あらそう、何を聞きたいの？」
「アメリアの事だ」
――っ！？
「男がアメリアの名前を口にしていた。アメリア、という名前は、別に珍しくも無いがしかし……お前の前で態々口に出した、とぺーネロトから聞いた」
ぁあ……そりゃそうだ。シュレクはぺーネロトと友人。
私がファラリスの話を聞いたように、ぺーネロトの話をシュレクが聞いていても可笑しくはないか……！
「……真っ先に報告しなきゃいけないんじゃないの？」
「伝えれば大公と国王の中に亀裂が入るかもしれない。この大事な状況で、だ。あえて言わない方が良い事もある、口に出さなければいけない事もある。両方ともお前が教えてくれたのだが？」
「前者は私教えてませんけど……」
気を使ってくれたって事かな。
「あの男は、何故アメリアを知っている？ 確かに大公の娘として大きく宣伝こそしたがしかし、それはあくまで一部の家の、一部の人間にしか見せていない。とてもあの男がアメリアを知り得る機会があったとは思えんが」
「……ロイ曰く、あの男の技、剣、未知の物が多かったそうよ」
「未知の情報網もあった、と？」
未知っていうか、遥か未来の情報網だとは思うけどさ。転生者とは、まぁ流石に言えんでしょうに……やーでも、彼が日本刀やら抜刀術使ってたお陰でいい訳出来て助かった。
「ふむ、その未知の情報網とやらでアメリアを知って、ものにしようと思った、か」
「アメリアを知っていたとすれば、それくらいじゃないかしらね」
「もし本当に存在するのであれば、利用者はそいつだけではなさそうだが……一応、頭の片隅には入れておくとするか」
うん。あくまで私の私的な考えなんで、片隅に置いておいて、そして忘れて頂戴。
「まぁ正確な所はサッパリ、っていうのが一番正しいわ」
「そうか。いや、お前の所感を聞かせて貰えただけでも収穫だ。ありがとう」
……うん。本当にごめん。心当たりはあるんだけど、それはタブー中のタブーなんだ。禁忌なんだよ、この世界の……一部とはいえ、真実を見通すような……そんな、ね。
「とはいえ、アメリアに何らかの原因がある可能性は否定しきれない……彼女が無実であると確証が持てるまで、この情報は隠しておいた方がいいだろう」
「疑ってる……訳ないわね」
「当然だ。俺の義妹だぞ」
発言からしてイケメンなのは流石。もしシュレクが原作、っていうか、あのゲームで出てきていたら真っ先に攻略していたかもしれない。あ、それだと私と結ばれないのか……それはちょっと辛いかもしれない。
「じゃあ、今度の夏はその義妹に会いに来てね？」
「当然だ。まだ子供だからな、我儘を通させてもらうとも」
うん。夏が楽しみになってきたが……それよりも。
「お前はその前に、エリィア嬢との決着をつけねばならんな」
「……そうね」
はい。私は個人的な因縁に早めにケリを付けないといけません。
因みに禁忌どころではないレベルの知識だと思います。
