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力のゴリラ妹と技のゴリラ私の悪役令嬢物語  作者: 鍵っ子
二章:技のゴリラ初等期
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物語の裏では

「正直な話、今回の一件は、父上やその同僚には衝撃の出来事、王宮は大荒れだ」

「まぁ、そりゃあそうでしょうよ。無反応とかだったらこっちが困るわ」


 だって、貴族の子息が通う、国内でも結構重要施設が内部犯に襲撃受けるとかさ。冷静に考えるまでもなく大問題でしょうし。


「場所もそうだが、王宮にしてみれば、下手人に関しても大問題だったからな」

「下手人……ジェイルって家がそれを起こしたのが大問題なの?」

「あぁ、問題も問題だ。正直な話、この問題に関わっているのが相当にマズいと、父上が速攻で判断を下し、緘口令を敷くか、考えるくらいには」


 えぇ!? 緘口令!? ちょ、それ相当の緊急事態ですよって事じゃん!


「ちょ、ジェイルってそんな重要な家なの!?」

「重要も重要、家こそ、そこまで栄えてはいないが、歴史は長い。お前の友人が、確かご同輩の家だった気がするが」

「え、私の友達って、ベスティと、ヘリメル……まさか、五守護の家ぇ!?」


 確かベスティによれば、確かタケルナって山を守護する、赤狼の重鎮的な家だって言ってたけど。ジェイルってそうだったの!?


「そうだ。国内でも名家と呼ばれて然るべき、五守護に連なる一角……だった家だ」

「武門の家って事よね。ヘリメルの家とかは……ん、へ? 『だった家』?」

「正確には、嘗てそうだったが、外された家と呼ぶべきか」


 え、えぇ……現役の家じゃないんかい。


「っていうか、そういうのって、外れるとか外されるとか、よくあるの?」

「よくは無い。だが、普通にあり得ることではある。武門の家であるからこそ、より強く勢いのある家と、落ちぶれた家が立場を入れ替える事はな」


 成程。武門の名家なんて、強くてなんぼだし。だからこそ入れ替わりもあり得るか。


「そもそも、今の五守護家は、嘗ての戦乱の時代に活躍していた頃とは打って変わって大分力を失っている。それ故に、弱い家がその地位に就くことを許さない。常に力を衰えさせないために、弱った家は切り捨てる」

「それが、ジェイルだった、と?」

「隆盛は貴族の常とはいえ、当人が納得できるかと言えば、そうではなかったようだ」


 成程。それに加えて、現状に不満を抱いていた、と。


「ジェイル家は、かつての力を取り戻すために、色々と暗躍をしていたようだ……その一環が、お前の家、大公家、オースデルク潰しだった、という事だ」

「なんで私の家を」


 全然関係ないやん。私の家、別に緑鷲とも赤狼とも、そこまで仲いい訳じゃないし。

 なんならお家が落ちぶれたのは、その……言い方は悪いだろうけど、自業自得だと思うし。なんで私の家が狙われなくちゃいけないんだ


「大公に連なる家がその流れで潰れてくれれば、その分地位が空く。もう一度成り上がるのは、その分簡単になるやもしれない……その考えの元、動いていたのではないかと」


 いやもうそんなんほぼ反乱やん……やめて、そんなヤケクソ自爆で仕切り直しみたいなやり方するの。国をもっと大事にして……


「そんな事しなくても、もうちょっと、穏便に、力を取り戻すとか」

「メルスデルク王家、そしてオースデルク大公家の下、この国はほぼ安定しきっている。そうでもしなければ上の空きなど、まず出来ない程にな。極限られた、一部の家が成り上がれているのはそれこそ……全くもって手段を選んでいないからだ」

「へ、へぇ……」


 ファラリスの家っていったいどんな手立てを使って成り上がってきたんだろう。怖すぎる。成り上がりの家とかジェイルは呼んでたけど、良くそんな風に呼べたね。復讐されるとか考えなかったのかな。


「兎も角、ジェイルは成り上がるためにこの一手を打ったわけだが……しかし今は肩書無しとはいえ、歴史の長い、王宮に出入りする家だったのは確かだ」

「え、王宮に出入り?」

「そうだ。王宮に出入りできるような家が、大公の名を騙って、問題を起こしたんだ。父上は聞いただけで眩暈を起こしたそうだぞ。俺が同じ立場でもそうなる」


 そりゃあ、四方八方で七色の絶叫が巻き起こったでしょうね……


「王宮は、誰か共犯が居ないか、てんやわんやの大騒ぎだ。当然ではあるが。もしジェイルが誰かと共謀してやっていたとすれば、それも引きずり出さねば、見えない毒となる」

「それだけで終わった?」

「冗談が上手いな。当然ながら古巣の五守護家にも批判は殺到、アスカータ含め、三家はその批判を見事躱したが、二家は酷い集中砲火を受けてしまった。大公に近しい過激な者たちはこれを機に王宮の大掃除をしようと張り切っている」


 ちょ、大公に近しい者たちって……私の親戚筋もってことじゃん。こわ過ぎない? マジで蜂の巣をつついたような、って感じじゃない。やだ、寿命縮みそう。


「そんな事すれば、折角長い事かけて築いた安定も何もかも無駄に終わる。大公殿と父上その他、重鎮たちは火消しに大忙しだが……そんな最中、先程こんな手紙が届いた」


 これは、王宮からの手紙かしら……何々……!?


「俺の元にコレが届いたのは、王宮の真実を、俺に教える為だろう」

「ジェイル家は、一部の人間に処罰がいっただけで、それ以外は特になし!?」

「どうやら息子をトカゲの尻尾として切ったらしいな。嫡男を失ったのは痛手ではあるがしかし、本体が死ぬよりはマシ、という事だろう」


 ……えげつねぇ。子供を生贄にして逃げ切ったんか。お、親に恵まれなかったなあの男子は……絶対に私は下手は打たないぞ。お父様には絶対に迷惑をかけられない


「貴族の世界というのは、一皮むけば、そういう物という事だろう」


実行犯は捕まったんですけど、裏で糸を引いてた人は糸を切り離して逃げ出しましたとさ。

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