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力のゴリラ妹と技のゴリラ私の悪役令嬢物語  作者: 鍵っ子
二章:技のゴリラ初等期
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幕間:報復令嬢の事件後 その二

「さっき、漸く僕も自由な行動が許されるようになってね……全く、婚約者に会いに行くのも許されないなんて、流石にやり過ぎじゃないかと思ったよ」

「そ、そうなの……あ、部屋の警護は?」

「そっちも解除されたよ。流石に物々しい雰囲気の部屋に君を呼ぼうとは思わないさ」


 そ、そうなの……私としては、警護付きでも構わないというか、ぺーネロトの安全を第一にしてほしいというか。まぁ、杞憂だとは思いますけれど。


「お邪魔しますわ」

「うん、どうぞ」


 ……もし、ぺーネロトが死んでいたりしたら、こうやって話すことも当然……うぅ、なんだかまた申し訳なくなってきましたわ。


「それで本当に大丈夫かい? 何か後に残るような症状とか、ないかい?」

「え、えぇ大丈夫ですわ……どうやら丁寧に気絶させたようで、痛みなども」

「そう、それは良かった……女の子に手刀なんて、本当にあの男、紳士の風上にも置けない」


 そういえば、ぺーネロトとはあの一件以来、顔を合わせていませんでした……眼が覚めた事も知らなくても無理は無いですわ。迷惑をかけてその上心配までかけてしまうとは……


「それはそうとして、ペーネロト? 此度は私の従者が……その、大変な、迷惑を」

「君の所為じゃない……と思うよ。面白いものが見れる、とか言われたんだろう? 恐らく僕の所にオースデルクさんを寄こしたのも、あの従者に違いない。色々彼奴はやってたんだから、きっと君を利用したんだ。どうしてかは、分からないけど」


「もし、そうだとしても……利用された、私にも非はありますわ」


 そう。そもそも、シノブに促され……信頼していた従者からの言葉だと、信じて向かってみれば、想像だにしない光景。それに驚いているあいだに、あれよあれよと事は動き。


「結局、全てが終わるまで私は寝ていた。なんとも情けない」

「ファラリス、それは」

「それに、私が利用される、意味はありますわ」


 お父様が言っていた。成り上がる為には何でも使えと。その為に、お父様は寝物語の代わりに自分の謀略を私に聞かせる事もありました。その中には……聞くだけで震えが止まらなくなるようなものも。それを思い出せば……分かります。


「もし立場が逆転していれば……ぺーネロトを奪おうと横恋慕したオースデルク、それを阻止しようとシノブが動き、その結果、オースデルクが錯乱した、と言われたら?」

「ファラリス……? 一体何を」

「最悪の、可能性を言っているのですわ」


 見えない場所で行われた事、それを立証するのは非常に難しいという事を、お父様は良く知っていた。


「その結果、私がぺーネロトを失った、と言われたなら……私はそれをあっさりと信じてしまって、大公家を敵としてお父様に泣きついたかもしれません」


 真実を知らなければ、一番信頼できる従者に言われた事が、どれだけ真実から離れていても信じてしまうかも。


「そうなればシノブは、大公の令嬢の横恋慕に気が付き、錯乱した彼女の暴走を止めた立役者……という事になると思いますわ」

「ば、バカな……そんな卑劣なやり方が通る訳が」

「誰も見ているものが居らず、私が居れば、可能なのです」


 だからシノブは私を使った。確実に、自分の都合のいいように物事を動かすために。


「……私がもう少し、賢ければ、もう少し、物事を冷静に見れるなら、そうはならなかったでしょう。そうでなかったからこそ、シノブは私を使って、事を起こした」


 結局は、最終的には私の責任に行きつくのですから。


「ファラリス」

「ぺーネロト、改めて、ごめんなさい……私は、貴方を巻き込む、その原因を作り上げてしまった張本人です。如何様にも、詰ってくださっても」

「ファラリス、聞いてくれ」

「へっ?」


 ……はわっ!? えっ、ぺーネロトなんで私を抱きしめ待ってください暖かいですわなんか頼もしいですわぁ!? ええっ、急にどうしたんですの!?


「どどどどどうしたのぺーネロトそのどうして急にひえっ!?」

「責任感が強い君だ。そうやって自分を責めてると思った……元気に見えたけど、でもやっぱり抱えてたものがあったんだよね。うん、ファラリスらしいよ」

「え、いや、そのですわね!? せ、責任を感じるのは主として当然というか!?」

「じゃあその責任は、一旦投げ捨ててしまおうよ、ね」


 え?


「せ、責任を投げ捨てるって……」

「今回の事は、シノブって従者にも、君にも責任が、あるかもしれない。けど、君は被害者でもある。被害者の顔をして、責任を投げ捨てても、誰も何も言わないさ」

「そ、そんな無責任な!」


 私は貴族! シノブを拾った主として、彼が犯した罪は私の罪でもあるのです。それを忘れるような、そんなめちゃくちゃな真似ができる訳が……


「君が、理想の貴族を目指しているのは知ってるよ。けどね……理想へ向かう前に、こんな事で躓いて、理想を目指せなくなってしまうのは、良くないと思わないかい?」

「そ、それとこれとは」

「責任感で、落ち込んで、前も見えない。それで、理想の貴族を目指せると思うかい?」

「……」


 それは……それは……


「なにも、いきなりやれ、何て言わないよ。責任感を持ったままでもいい。けど考えすぎないように、少しでも思考を変えてくれると嬉しいな」


 うぅ、そ、そんな囁くように言われても……せ、責任はちゃんと取らねば……うぅ。


「……」

「ね?」

「か……考えて、おきますわ」


 今すぐ、責任を全部投げ捨てる、なんて、出来ませんわ……急に言われても。

 でも……言ってることは間違ってはいない、気もするので、参考にする、だけなら。

敗因は甘い囁き

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