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力のゴリラ妹と技のゴリラ私の悪役令嬢物語  作者: 鍵っ子
二章:技のゴリラ初等期
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主思いの従者、死にたく無い主

「で……こんな時間になってしまった、という訳ですか」

「えぇ……」


 結局夕方過ぎるまでファラリスの部屋に居座ってしまった……っていうか、がっつり授業サボってしまった。まぁいいか。


「……まぁ、ファラリスも少し立ち直ってくれたし。結果だけを見れば、まぁ、大成功だったと思うけど。それで、本当に大丈夫? あの、ちゃんと領主になったら貴方に館を上げられるくらいには頑張ろうと思っているのだけど」

「そんなもの頂けませんよ! というか、それは杞憂だと申し上げているのではないですか! 私のお嬢様への忠誠に、一切の曇りはございません!」


 ……うぅ、やっぱりこの子は宝や私一番の宝や……思わず拝んじまうよ。メタリアって原作じゃあ権威にすがるおべっか取り巻きくらいしか味方居なかったし、あぁ、私って恵まれてるなぁ、つくづく。うん。


「あの、どうして祈るような手を!?」

「貴方は私の宝だからね、一つ祈りを捧げるのも、悪くはないと……」

「お気持ちはありがたいですが非常に重いので申し訳ありませんご勘弁願います!」


 そ、そうか……最近はアメリアだけじゃなくてロイ君推しにもなってきたから、拝むのは当然なんだけど。まぁ、推しがそういうのであれば……


「お嬢様、一旦落ち着いてください。ファラリス嬢は元気になったのですから、その辺りの事は置いておくとして、私としては……昨日、おっしゃっていた事を、お聞かせ願いたいのです。お嬢様」

「昨日?」

「あの従者に会いに行く、というのは本当なのですか」


 ……あっ、すいませんボケてた頭は今覚めました。はい。スッキリです。っていうかロイ君顔怖ぇよ、マジで『テメェを殺してやるっ』って顔しているよ……?


「……ちょっと、思う所があって」

「その理由をお聞かせください。私で出来る事なら、ぜひ私にお任せを」


 うぅ、凄い険しい顔してる。これアレだ、前世で初めて『繁華街行きたい』って言った時のおかんの顔や『おむつも取れてないような小娘が行く場所じゃないよ』とか言って肩越しに睨んでたの思い出す奴や。


「……そ、そんな危ない事するわけじゃないわよ?」

「あの者に会いに行くこと自体が大変危険な行為です。ご自覚ください」


 ヤベェ目が据わってる。ふざけたらマジ切れされる奴や。


「お嬢様は、何故かは知りたくもありませんが負の方向で執着されていました。彼奴に」

「え、えぇ。その様ね?」

「そして今回、あの男の、お嬢様を狙った邪な企みは、他ならぬお嬢様、貴女によって阻まれました。お門違いの感情とはいえ、あの男のお嬢様への恨み、のような感情は更に増加したと見るべきです」


 まぁ、そうよね。そりゃあ恨まれてるかもしれないけど……ロイ君がそこまで真剣だとちょっと怖く思えてきたりする。でも呑まれちゃダメよメタリア!


「けど、彼は拘束されているのよ? 私をどうこうするのは不可能。話しかけても応えてくれない、位は十分あるでしょうけど、それでも会った途端に襲われるみたいな事は」

「お嬢様。お忘れですか。私の事を」


 ? いや、ロイ君の事を忘れるとか、流石に恩知らず過ぎてないでしょ。


「私は後ろ暗い任務を任される為に、様々な技術を仕込まれました。その中には当然ながら、拘束から逃れるためのモノも含まれています。もし、彼奴もその類であれば」

「……え? いや、いやいやまさか、そんな」


 だって、ねぇ。ロイ君みたいなそんな訳アリがそうそういる訳ないでしょうに。


「可能性に皆無、は存在しません。万が一にもその危険性があるなら、お嬢様を近づけるわけにはまいりません。子供同士のぶつかり合い程度であれば、私が傍に居ればまず安全ですので構いませんが……」


 シノブっていう従者相手じゃ、私の首が持っていかれる可能性がある、と。


「宜しいですか? 此度のような危険にお嬢様を決して巻き込まぬ為に、ここはお嬢様を行かせる訳には参りません。ご命令に背いてでも」

「ロイ……」


 さっき、忠誠を誓うとまで言ってくれたロイ君が、命令に背いてでも、かぁ。やーこれはどうしようもない予感がする。いや、無理だな。確定だな。うん。


「はぁ……貴方がそこまで言うのであれば、仕方ないわね」

「お嬢様」

「私の事をそこまで考えて言ってくれているというのに、それを無下にすれば、それこそ主失格。ここは素直に、ロイの言葉に従うとしましょう」

「……感謝いたします。お嬢様の意向に逆らった罰は、いかようにも」

「しないわよそんな事。逆らった訳ではないでしょうに。忠言一つで眉を顰め苛立つほど私は狭量ではないつもりよ?」


 まぁ仕方ない。転生者かもしれない人の事は確認しておきたかったが……それよりもこの大切な従者を裏切るような真似をしたくない。


「ロイ。ありがとうね。私の事を思ってくれて。本当に、貴方は私の宝物よ」

「……過分な言葉、痛み入ります、お嬢様」


 お辞儀って、イケメンがやるとカッコいいよねー……しかし。

 それでもシノブって人の事は、どうしても気になるのよなぁ。将来の死亡フラグ対策の為にも……何とか、安全に話を聞くことは出来ないだろうか。ロイ君でも納得できる位に安全な状況で。


「……無理か」


 まぁ無理だろうねぇ……どうしよう、爺かお父様にでも相談してみようかしら?


お嬢様は未来を見過ぎて今を見てない。

ロイ君は未来は見えないけど今をちゃんと考えてる。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] メタリアって自分がゴリラの自覚ある割には中途半端に知恵回そうとして余計な面倒事呼び込むよね、 自分を殺そうとした奴に協力出来るかもって万全の準備できるタイプでもないのに不用意な干渉は身…
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