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力のゴリラ妹と技のゴリラ私の悪役令嬢物語  作者: 鍵っ子
二章:技のゴリラ初等期
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かっこよく済ませるとおもった?

 さぁ、どうだ?


『本当に好き勝手言いますわね……でも一つ、勘違いしていますわ。オースデルク』

「勘違い?」

『私の従者。シノブに関して抱いているのは、責任感と……無力感、です』


 無力感?


『……止める事が出来れば、とも思いました。けど、決してそれだけではありません。私は彼の主人として何も出来なかった……あんな事をする程に、不満を抱かせてしまっていた』


 ……なんていうか。ファラリスを誤解していた節があるな私。この子、敵には相当苛烈だとは思うけど。身内には相当甘いんじゃないだろうか。首筋バシンとかやられて、なおシノブって人の事を思いやってるなんて。


『シノブは、愛想は良いとは言えませんでした。けれど、とても頼りになる従者だったのは間違いありません。彼に相応しい主である事……私の、目標の一つでした』

「……貴女があそこ迄貴族に拘るのって、もしかして」

『理由の一つではありますわ……彼に相応しい、立派な貴族であろうと思ったのは』


 ……ファラリスって、良い子だなぁ。うん、ベスティやヘリメルとはベクトルは違えど間違いなくいい子だよ。こんなセリフを、スラスラいえるって。


『当然です……彼は、私が目を付けて、我が家に引き込んだのです。彼を引き込んだ責任があると、幼いながらに、私は理解していました』


 おや奇遇。アンタも自分の従者を自分で見つけたタイプ? 私も~。最も私は将来の断罪フラグをへし折る為の打算塗れのスカウトだけど~。わははははは……首釣ろうかな後でマジで。なんか、自分が汚れてる気がして来た。


「……大切な、従者だったのね」

『将来は、彼を片腕にと、ずっと思っていました……! 私の事を彼が支えてくれたならどれだけ……! どれだけ、心強いか、と……!』


 ……分かる! とても分かる!

 私もロイ君有能過ぎて、将来とか彼が一緒にいてくれたらマジで召される五秒前くらいには助かって感動して死んで蘇る。彼にはもう私が出来る限りの栄光を上げたい。今回の一件でも凄い世話に……


「あっ」

『ぺーネロトにも、私の一番頼りになる従者ですよって……でも、私が信じてるだけではだめだった……彼と、私と、ちゃんと両者で……』


 ……そうだよ。いまさら思い出した。ロイ君にお礼言ってない! ヤバいやらかした私ってば何てことを! 命を懸けて私を守ろうとしてくれたってのに!


「働きに、応えられなかった……」

『えぇ、きっとそうです。互いにちゃんと通じ合う事も出来ず、何が主か、何か従者でしょうか……本当に、笑えてしまいます』


 ……ロイ君も怒るだろうか。そりゃあ怒るよなぁ。幾ら私に忠誠を誓ってくれてるロイ君も、礼の一つも言わない小娘に不満もたまるだろうし……も、もしかして見限られてしまうかもしれない。うぅ、そうなったらつらい。


『彼に。あげるっていったのに。私になんとか出来るもの、全て。あげるっていったのに』

「うぅ、というか、なんでロイは私なんかを慕ってるのかしら……」

『なんにもできやしなかった……私は、唯の小娘。無力な、娘』

「なんにもできない、唯の小娘なのよ、私。貴方にそういってもらえるだけのものなんて」


 ……どうしてだろう。励ましに来た筈なのに、私がダメージ受けてる。でもしょうがないわよそれは。私もロイ君にちゃんと報いてあげられてるか、ちょっと微妙に思えてきちゃって……はー、やばい、急転直下で鬱だわ。


「……ねぇ、ファラリス」

『……何かしら』

「そっち行っていい? 私もがっつり落ち込みたい気分になったわ。お願いしていい?」

『……仕方ないわねぇ。今回だけは、特別よ』

「ありがとう……」


 ロイ君の事についてちょっと、今までの自分を考え直さないと行けないかもしれん。私は出来る限りの事をしてあげてたつもりだったんだけど……全然そんな事なかったのかもしれなかったと分かったら……


「メタリィ、メタリィ? ちょっと、ちょっと大丈夫? なんでも扉に手をかけて開こうとしてるの? というか顔が暗いわよ!?」

「……なんでしょうね。ちょっと、一緒に落ち込みたくなったのよ」

「励ますつもりだったのに!? それじゃダメよしっかりしなさいメタリィ!?」


 だって……自分が大丈夫だって思ってたことが根本から揺らいだってのは、割と……その、ショックだったというか……足元が揺らいだというか……


「人間て、脆いものね」

『オースデルク、早く来なさいよ……ベッドに隙間、開けておいたから』

「えぇ、今行くわ……ごめんなさいねルキサさん、エーナさん。彼女の説得は出来なかったわ……あの子の闇は想像以上に深かったわ」

「「え、えー……」」


 私って無力な女って、証明された気がする……あぁ、扉の奥で闇が呼んでる……


「……それに、こういう方法でも、立ち直るか、と思ったの」

「え?」


 中に聞こえないように……あと、ちょっと落ち込んでるのはマジだから、自然に小声になっちゃうっていうのもあるけれど。


「一緒に落ち込む……これでも、意外と気が紛れるものなのよ……」

「そ、そうなの?」

「良くそんなこと知ってますねぇ」

「大公令嬢って、博識……」


 ……まぁ、唯の未来知識ですよ。えぇ。そういう感じで患者を癒すやり方もあったっていうからさ……へへっ。じゃ、ちょっくらいってくらぁね


かっこよく済ませはしないんだなァ

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