三人目の人は子煩悩なお父さんです。
「……ヤバい、ヤバいよこれ、見つかったら……」
ちらり。
「ふしゅー……ふしゅ―……見つける、バラす、報酬貰う。俺、豪遊する」
「何処だぁ!? あの娘ぇっっとぉ今そこから音がしなかった気のせいかぁアアン!?」
「おとなヲカラカッテただデスムトおもウナナナナナナアォォォォン……!」
……大の大人が子供見つけようとするのにガチになってる。いや、報酬があるならそりゃあそうなるかもしれんけど、私はあれを人とは認めたくない。絶対凶暴化のステータス異常かかってるでしょ。魔法使いなんていたのかこの世界。いや居ないけど。
「音、した、きのせい。別、場所、探す」
「気のせいだとぉあのクソガキまたぞろ騙しやがってもう限界だ限界だよ色々なぁ!」
「オトナヲカラカッテただデスムトおもウナナナナナナアォォォォン……!」
……『大人を揶揄って』おじさんはいったい子供に何の恨みがあるんだろうか。一番迫力があるんですけど。怖すぎて泣きそう。ちょっとは自重して?
「……やべぇ、調子乗り過ぎた」
いや、調子乗って時間稼がないと捕まってたのは否めないですけど。あっちへ鉛を投げつつ向こうへ逃げ、偶に本棚を倒して妨害したりとかもしたけど。それで吹っ飛んだ本が兵士の皆様に直撃したりもしたけれど。
「そりゃあ激怒モードに入ってもしかりか……? いや、全部向こうの自業自得だろうに」
そもそもいたいけな女児を捕まえて金とか栄誉を貰おうって方がおかしいんだよ。もうちょっと真っ当な稼ぎ方をしてほしかった。
「しかし……マズイ。そろそろ弾丸が心もとないんだけど……」
さっき確保した弾丸が二十くらい。袖の中に突っ込むだとか襟に詰めるだとか色々してたが、気を引くのにじゃんじゃんバリバリ使い過ぎた……後、三、四個しかないぞ。
「もし見つかったら……あ、危ない薄い本の表紙みたくされてしまう!」
やーん、メタリア、それは流石に勘弁っていうかぁ~……うん。そりゃあこんな若い時から社会の汚い闇を背負っていきたかないでいす。助けてスーパーマン。
「どうしよう……」
……私はあんな屈強な人たちに勝てませんから、ロイ君に頼り切りになるんですけど。っていうか、何故私はロイ君を外に出したのか。普通に扉閉めて籠城戦でいいのに。馬鹿すぎやしませんかね……うぅ。
「……とにかく、この残り少ない残弾は、大切に使おう」
ロイ君が勝つことを祈って。
「……でぇ?」
しかし状況は不穏。六人の目を掻い潜るってのは、至難の業だとこの弾の減りが教えてくれている。この短時間に一気に使わせられたんだからね。ひえっ!
「……いっそ賭けに出るか?」
さっきまでは、『居そうな方向に投げてごまかしていた』訳。だって明らかに遠くとかに投げると嘘だってバレるやん? でも、それじゃあちょっと移動しては使い、ちょっと移動しては又使い……繰り返しでどんどん使う事になる。
「なら……いっそ」
……思いっきり投げて、あらぬ方向へ誘導してみる。さっきまで冷静さも残っていたかもしれないけれど、今の『サーチすれば完全粉砕』モードの彼ら相手なら……もしかしたら通じるかもしれない。よし。
「いま、必殺の……メタリア、スイング!」
思いっきり投球! 良し良し良い角度だ! そのまま奥へ向けて飛んでいけ!
「っ? ……耳、澄ませる。音、した! 見つけた。見つけた!」
「へえへえ見つかったかそりゃあ行幸このまま見つけて筆舌にしがたい仕置きだゴラァ!」
「オトナヲカラカッテタダデスムトおもウナナナナナナアォォォォン……!」
……すごい勢いで走っていくね。っていうか最後の人、いよいよなんか口から蒸気とか漏らしてなかった? 目が赤く発光してなかった? 怖すぎない?
「……あー、でもそっち行ってくれて助かったわ」
やっぱ人間、怒り過ぎると駄目だね。思考が単純化しちゃう。ブチ切れるにせよ、思考はクレバーに保たないとねぇ。うんうん。
「本棚、倒れてる。下、居る。間違いない」
「よーっしゃよっしゃよっしゃおっしおきだぁ覚悟せぇよクソガキがぁ!」
「オトナヲカラカッテただデスムトオモウナナナナナナアォォォォン……!」
ってそっちはぺーネロトを隠してる方向だったやっちまった!? 私がクレバーじゃないじゃないかこのまぬけぇ! と、兎に角ぺーネロトを捕まえさせるわけにもいかん!
「愚か者! 私はこっちよ! こっちを見なさい!」
とにかく、気を引きつつ残りの残弾で逃げ切ってみせ――
「見つけた」
「仕置き」
「オトナァアアアアア……」
……ぴょえ?
「あ、あらら?」
なんか、逃げようとした瞬間に四方八方を囲まれたんですけど。え?
「あ、あわわ」
「見つけた」
「仕置き」
「オトナァアアアアア……」
こえぇぇぇぇぇよぉぉぉぉぉおおお!? アンタらなんだキラーマシンかなんかかk待ってこっち来ないで許してバラバラにしないで私はレゴじゃないの許して、た、たすけっ
「ひぃいいいいい!?」
「――時間稼ぎお疲れ様」
ひょ? って、は、あれ、なんか上から陰が……あ、おっさんが一人アッパーで吹っ飛んだ、とか思ったら旋風脚で二人目三人目が……あ、もう六人目が伸びてる。え、え?
「全く、朝襲撃してくるなんて思ってもみなかったから、遅れちゃったわ」
「……? ……? ……?」
りびどあさんがなんでここにいて、すごいかくげーなうごきでてきをふっとばしてるんだろうか。わたしにはなんにもわからない。
「お嬢様!」
「あら、遅かったじゃないの?」
「どういうことなの……」
「えっ?」
ホントです。




