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力のゴリラ妹と技のゴリラ私の悪役令嬢物語  作者: 鍵っ子
二章:技のゴリラ初等期
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幕間:双従者の激突・その2

 正直、剣の道をやっていると、些か理不尽を経験することはある。奥様とか、まぁそれだ。冷静に考えて、剣一つで騎士団を震え上がらせるとか文字通り伝説だと思う。

 まぁ例外中の例外については考えても仕方ないので、置いておくとするが。


「ち、ちくしょう……さっさと死ねや!」

「命は大事にせよ、と親から教わらなかったのか貴様。少しは口に気を付けろ」

「今、やってんのは殺し合いだろうがっ! あぁ!? 違うのか!?」

「俺にとっては殺し合いの範疇には入らんが? お前風情にそこまで必要なのか?」

「こ……このくそ野郎がぁ!」


 この男。才能にあかせて暴れているばかりと思っていたが、どうやら認識を改める必要がある、っと。踏み込んでくるか。良くやる!


「このっ、おらっ! ぅあっ!?」

「どうした!」


 才能に頼り切り、というのも、場合によっては悪くないのかもしれない、と勘違いしてしまう程に……此奴の成長速度は異常だ。先ほどから幾度と無く剣を弾き飛ばそうとはしているが、その積りで放った斬撃を二度、潜り抜けた。


「あ、あぶねっ……」


 正直に言おう。今まであの技に頼り切りで、他の事をしてこなかった、それが完全に利に働いている。剣を普通に振るってこなかった所為か、剣の振り方は素人そのもの。


「は、は……ち、ちくしょう、なんでだよ、お前なんて、原作にも出ない……!」

「その良く分からん妄言をやめんかっ!」


 しかし素人そのもの、何もついていない真っ新ゆえに、こうして、俺の剣を凌いでいる間に、恐るべき速さで、動きが良くなっている。些か理不尽とも思える速度で。


「妄言だと!? これはなぁ、お前らには理解できない知識なんだよ!」

「それを妄言というのではないか?」

「えっ? ……う、うるせぇ! この野郎、その口を閉じやがれ! さもねぇと!」

「口を封じるとでも? 大言壮語とならねば良いが、まぁせいぜいやってみろ!」


 踏み込む。振るう。縦の振り降ろしを……受ける! あんな細身の剣で、良くやる。恐らく、自分でも気付かない内に受けるためのコツを掴んで、対応しているのだろう。


「好き勝手言いやがって! ああ、クソッたれ、お前の口を引き裂いて封じてやるよ、言う通りによぉ!」


 足さばきも、より精細に、良くなっていっている。踏み込む足の力強さたるや、目を見張る程度には光るものがある!


「っ!」

「ち、畜生、防がれた……! 鞘さえあれば、お前なんて!」

「鞘があってもさして変わらんさ……防がれて終わりだよ、お前風情ではな」


 正直な話をすれば、あの……『イアイ』だったか。あれは専用の戦い方を組んで使う類の技のようにも見えた。アレ単体で運用する技ではないと思う。端的に言えば、使いこなせてはいなかった。


「やってみなきゃわからないだろ、畜生、この野郎、この野郎ぉ!」

「っ、ぬっ。ええい、面倒な事だ」


 寧ろ、こうして両手でしっかりと剣を握りしめ、踏み込みと共に、唐竹で振り降ろしてくる。これだけでも十分脅威だ。単調ではあるが、振りの速さは尋常ではない。下手に受ければ、腕がしびれるほどに。


「とはいえ、もう慣れたが……っはぁっ!」

「っ、舐めんなっ!」


 何っ!? 剣を振るのに合わせて下がった……!?

 さ、下がっただけなら問題ではないが、あのタイミングで下がったのは、まるで……俺の動きを、読んで避けたかのような。此奴。


「へ、へへ。馬鹿じゃないんだ。何度も見てれば、動きぐらい覚え……」

「――が、やはり詰めが甘いなっ!」

「はえ?」


 ……肉を切り裂いた手ごたえ。金属の落ちる音。剣を弾き飛ばしたか。手首を跳ね飛ばすつもりで振ったのだが……無意識で避けたのか? 本当に身体能力の才能だけはあるようだな。最低限の被害で済ませるとは。


「ふん、本人ですら気付かぬほどのその勘の良さに感謝しろよ」


 ……反応すらしないか。まぁ、無意識下で避けたのだ。自覚するのに時間もかかるだろう。とはいえ、これで終わりだ。全く手古摺らせてくれたものだ。


「あ、あぁぁぁぁっ! て、がぁ、俺の……!」

「ひ、ひ、ぁ……お、おい、勝てるんじゃ」

「そこの少年」


 っと、此奴はどうにか出来たが、そっちの少年も、この事件の解決には必要だろう。


「あ……」

「乱暴はしない。だが……お嬢様の言う通り、証人を連れてくる必要があるのでな。ここから動いて貰っても困る。だから」


 ……まぁ、お嬢様の殺害を企てたとはいえ、流石にこの年の子供をどうこう、というのもあれだし。ぶん殴る、は流石に無しか。とはいえ頭に来てはいるので。


「う・ご・く・な・よっと!」

「ぴぎぃ?!」


 良し、渾身のデコピン直撃。これでしばらくは動けないだろう……よし、これで制圧は出来たが、多少は時間をかけてしまった。


「そのままシュレク王子を呼ぶ為に、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 言わずとも分かるだろう、という信頼の元。それに応えるためにも、急がねば!


「お嬢様、只今戻ります!」




「王子、こちらです」

「メタリア、あれだけ気を付けて置けと言ったのに……そろそろか」

「はい!」


 良し、あの男も、少年も、動いた様子はない。後はお嬢様が無事であるかどうか……!


「お嬢様!」

「あら、遅かったじゃないの?」

「どういうことなの……」

「えっ?」


という事で、決着です。

因縁のある(一方的な)二人の戦いだったので、二話取ってみました。

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― 新着の感想 ―
[一言] お嬢の方も終わってたwww
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