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力のゴリラ妹と技のゴリラ私の悪役令嬢物語  作者: 鍵っ子
二章:技のゴリラ初等期
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行動が早い事は良い事ばかりではない

「……うそでしょ」

「は、早すぎませんか!?」


 ……し、真偽を確かめる前に真実の方から大挙してやってきた件について。え、なんなの、馬鹿なの? 早め早めの行動を心がけてるの? 偉いの? 偉い事したつもりなの?


「やぁやぁ皆。ちょっと威嚇してしまったかな? 大丈夫、同じ同級生には何もしないとも。ホントさぁ! 僕は正直な少年として有名なんだよ?」


 寮の玄関口に、マジで大の大人が十人……っていうかオイ、完全武装かよ。さてはアホだなお主。不審者の噂にそこまで過敏に反応するとか完全に脳みそ思考停止脳筋で『最終的にすべてチェストすれば良いのだ!』とか考えてんじゃん。


「……ヘリメル、この学び舎の警備に対する情熱は、低いみたいね」

「ひぇええええええええ……」


 うん、駄目だねこりゃ。ヘリメルが完全にオーバーヒートしてる。うーん。アレか、一定以上の出来事には対処できるけど、それを超えるとパニクっちゃうタイプかな。


「へ、ヘリメル。ほら、落ち着きなさいな。ただ鎧姿の人が来ただけじゃないの」

「あわわわ、りょ、寮が制圧されちゃう! ひ、ひええええええ!」


 ……ベスティ。そんな縋るような目で私を見ないで……あー、いやでもヘリメルをこのまま放っておくのも、なぁ。パニックになってる時ってあんまりいい事にならないし。後寮が制圧されるとか言いふらしちゃうと周りもパニックになっちゃうしね。


「仕方ないか……はいはい、ヘリメル、落ち着いて」


 頭をさわっと、お、髪サラサラやなぁ。髪を梳くのが気持ちいい。癖になりそうだ。

 混乱した人を治めるには、まずは優しいヌクモリティが重要。ソースはインフルにかかって死ぬんじゃないかって思った時の私。お母さんの温かい手でだいぶ落ち着きました。


「はわっ!? め、メタリア様」

「不安なのは分かるけど、でもあんまり考えすぎるのも良くないわ」


 この状況がどれだけ異常なのか、一番理解できてるのはヘリメルみたいだし。そりゃあ人一番不安にもなるでしょ。それも踏まえて、(精神年齢的な意味で)この子の先輩の私がちゃんと勇気づけてやらねば。


「おおらかに、落ち着いて。大丈夫、きっとそう悪い事にはならないわよ。うん」

「で、でも」

「もし何か問題が起きても、私がなんとかするわ。大公令嬢を信じなさいな」


 いやー、こういう時、私が大公令嬢でよかったって思うわ。一応虎の威を借るなんとやらとはいえ『大公が何とかします』っていう安心を相手に与えられるのは。うん。


「メタリア様ぁ……」

「ふふ。大公令嬢が大丈夫って言ってるだけじゃ、やっぱり不安かしら?」

「い、いいえ! もう大丈夫です!」


 良し。オッケー。ベスティ、やったぜ。いえーい相互サムズアップ。


「……しかし、あの噂、本当の事だったなんてね」

「学校の人たちはそこまで危ないと思っていないのかしら……」

「うーん……お父様が、『警備の時は警備の人数の倍以上の武装した人は入れない』って言ってたのに……嘘だったのかなぁ」


 いやいやヘリメルパパのお考えは間違ってないかと。っていうか常識レベルの事だと思う……待て、個人の奮戦で数の差も何とかなるとか思われてそうな時代だっけ、今。警備の人が精鋭揃いだから倍くらい覆せると思ってるのかなぁ。


「兎も角、今は気にしても仕方ないわ。さ、教室に戻りましょうか」


 ……っていうか、皆暇なのかよ。教室抜け出してここ来て。シュレクはえ~っと? これは居ないか。まぁ、私兵の十人や二十人やら別に珍しいものでもない気がするし。そりゃあ態々見に来たりはしないか。


「あの人たちが危ない事をしないといいわねぇ……」

「えっと、ちゃんとした私兵の方々ですし、大丈夫、だと思います……」

「そうねぇ」


 ……あの全身装甲を見てなお、『意外と大したことないな』と思ってしまうのは、白鯨の皆様を見てるからなんだろうなぁ。なんていうか、同じ全身鎧だけど、体格が全然違うというか。なんか、迫力が違うよね。




 ……てな感じなのよ。昼間の騒ぎは。いやー、疲れたわよわたしゃ。ロイ君。


「な、成程、昼間の騒ぎは……そのような……お疲れ様でしたお嬢様」

「えぇ。私もちょっと驚いちゃったけど、まぁ理由を聞いたら驚きよりも呆れが出たけど」


 ……ところで、さっきから、っていうか、話をし始めた途中辺りから、なんだけど気になってたんだけどさ……その。


「どうして窓の方ばかり見てるの? 窓の方に何かいるの?」

「あ、いえ、その。そ、その……」


 普通に怖いんだけど。マジで不審者がいるんだったら早めに教えてほしい。恥も外見も捨てて逃げ出すから。ホント。私小心者ですしお寿司。


「……えっと、その不審者、なのですが、その。お嬢様」

「ん?」

「えっと、その、心当たりがあるというか、えっと、えっとですね……」


 ……なん……だと!? えっ、心当たりがあるってマジか。す、スゲェ。家の従者が優秀すぎて困る。凄い。ひそかに大冒険してたのこの子は。


「さ、流石はロイね……もう調べがついていたなんて」

「調べがついたというかその……そ、その件で切り結んでいた不審者なんですが……えっと……その片割れが私なんです」


 ……えっ?


予想以上の事実がただいまお嬢様に押し寄せております。

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