表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
力のゴリラ妹と技のゴリラ私の悪役令嬢物語  作者: 鍵っ子
二章:技のゴリラ初等期
217/324

幕間:報復令嬢、早くも覚醒モード

「正直びっくりしました。彼女が貴方とあらかじめ面識を持っていたとは。なんで言わなかったんですの?」

「ごめん、隠していた訳じゃないんだけど……言うほどの関係でもなかったし」


 あの女と面識を持っていたこと自体はいいのだが、それを隠していた、というのが何となくぺーネロトらしくは無いというか。まぁ、珍しい事だが顔見知り程度の関係を態々言う事もない、というのは間違いない。


「えっと、その……彼女と君が因縁浅からぬ仲……なのかな? なのは当然理解はしてるよ。うん。してるんだけど……」

「そんなに慌てなくても大丈夫ですわよ。気にしてませんから、本当に。別に伝言を頼まれるくらいであれば。そんなに目くじら立てる事でもありませんし」


 まぁ、普段からあの女には借りを返すだの、色々言ってるから無理もないでしょうけども。如何に相手があの女とはいえ、伝言を頼まれるくらいで一々角を立てていたら、私自身疲れてしまいますし。些事は流す程度の度量はありましてよ、私。


「そ、そうなんだ……意外に冷静だね?」

「まぁ、そもそもそんな事で一々癇癪を起こすほど馬鹿ではない、というのは前提ですがその上で……最近は、まぁ、あの女に対しての苛立ちは、収まってきてますの」


 収まってきている、というのは少しおかしい。依然、過去の借りを返すつもりはしっかりとありますし。その為に私の優秀さを見せつける、という方向性も変わってません。けれども……


「過去の因縁ばかりに目を向けて、些か無意味な怒りに振り回されていたのが、元に戻っただけ、とも言いますけれど」


 あまりにも、昔にしてやられたことに拘り過ぎたのでしょう。最近、あの女と勉強会をするようになって、その様子を見て、それを理解せざるを得なかった。


「馬鹿ですわね。私の目には、あの少女は何から何まで気に入らない、そんな風に見えていました……そう見える理由も何も、考えたことなんてなかった」


 気に入らない気に入らない、なら、何処が? 何が? 勉強会を通して、それを考えてみる事にした。観察することにしたのだ。勉強している間の、あの女を。


「考えたの?」

「考えましたわ。そうしたら結果……何もないのですよね。あの女が致命的に気に入らない理由が……本当に」


 静々と勉強をしている姿は、酷く真面目だ。彼女の友人らしい人からの質問にも丁寧に答える。アドバイスもきっちりする。無責任な言い方はしない……なんというか、模範的な学びを重視する生徒、と いった感じ。


「むしろ、好ましい部類の人間だとすら、思えましたわ」

「好ましい、か。という事は、やっぱり貴族として、模範的であった、と?」

「……えぇ。正直、忌々しいと思うくらいには」


 余裕をもって。冷静に。他者への対処にも優雅さを忘れない。決して自分の優秀さを過剰にひけらかす事をせず、かといって見せぬこともせず。綱渡りのような絶妙なバランス取りを、完璧にこなしていた。


「前の一件が無ければ、是非強い友誼を結びたいくらいですわ。えぇ」

「大公の令嬢は、伊達じゃない、って事なのかな?」

「痛感させられましたわ……」


 文字を書く仕草、教えるやり方一つとっても、正に優美。というしかない。表情があまり変わらないのは些かどうなのだろう、とは思うが、しかしそれも、顔色から内心はまず分からない、と考えれば利点にもなりえる、とも。


「……ルキサもエーナも、彼女への評価は高い。そういうのを冷静に見た結果」

「決して、彼女に対して何か、悪感情を抱くような要素は存在しない、と?」

「……私は、理由のない憤りに振り回されていた訳です。全く、道化ですわね」


 おそらく、あの時から抱いていた感情が、頭にこびりついて、存在しない虚像を今の彼女に重ね合わせていた。どうしてもあの女に、怒りを覚えざるを得ないほどに、しっかりとした虚像を。


「反省を、しました。虚像を見ていたこと、理由のない怒りに、振り回されていた事」

「ファラリス……」

「その上で、私はあの女としっかり対決することを決めましたけど」

「ファラリス!? えぇっ!? さっきの結論からそこへ行く!?」


 行きますけど?


「えっと、その、ですね。僕としては、そこで和解に行くのが正しいのかなぁ、なんて」

「いいえ、一度あの女と敵対した以上、それは貫くのが筋でしょう」


 ここで中途半端に終わらせる方が、勉強会を開いたあの女に対する侮辱になりかねません。一度開いた戦端は、しっかりと最後まで貫いてから、綺麗に畳む方がいいでしょう。


「とことんぶつかり合って、最後にはしっかりと和解する。その方が宜しいでしょう」

「あ、あぁ~……な、なるほど、そういう感じで行くんだ」

「えぇ。それに、余計な曇りも晴れて、原初のあの苛立ちもしっかり戻ってきましたし」

「あーそれに関しては水に流さないと! あくまでその借りを返すのは返すと!」

「そうですわ」


 寧ろ、余計な怒りが晴れて、借りを返すという目的をしっかりと腹に抱えられた気すらします。やはり何をするにせよ、一点集中でやるのが一番かと。


「あー……お父様の言葉を借りれば、『目的の純粋化』っていうのかなぁ……」

「今、私の目の曇りが晴れ、とても静かなやる気に満ちていますの。ふふ、こんなの初めてですわ……今なら、どんなことだって乗り越えられそう」

「ファラリス、それ以上止した方がいい、なんか、不安な予感がする」


 ……? 別に何も変なことは言ってませんけど。変なぺーネロト。


「へ、変な覚悟をファラリスに決めさせてしまった気がする……」


具体的には野菜人2位ですね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ