乙女ゲー世界って事を忘れてました
「……恥を晒しましたわね……できれば、忘れてくれると、助かりますわ…‥」
「べ、別に構わないけど…‥確かに失敗したとは思うけれど、そこまで落ち込むようなことかしら? これから直していけばいいと思うし…‥」
はい。結局最後までファラリスとエーナちゃんは戦線離脱しておりました。気持ちもわからんではない。やるべき事を感情の爆発で出来なかった時のショックって、結構でかいよね。お姉さんも入社当時にそういう事やからして……ウゥ。
「け、結局最後まで言い合い押し合いへし合いして終わってしまったわ……」
「だから少し落ち着きませんか、って言ったんですよファラリス様? その怒りっぽいところ、直さないと後で苦労するのはファラリス様なんですからね?」
それに反比例するかのように此方は落ち着いて勉強できて、結構捗りました。ファラリスが居なくなって効率が上がった……っていう訳じゃないんだけど。なんか途中から怒鳴り声がいい感じのBGMになってて、それが原因じゃないかな。
「ベスティの苦手なところも分かったから、今度はエーナさんと一緒に鍛えましょうね」
「うん。エーナ、次は宜しくね?」
「はいはい。ファラリス様が爆発しなかったら頑張らせていただきます」
「まだ……お説教が必要なようね……!」
そして、私とファラリスではなく、私のお友達と向こうのお友達が仲良くなるという結果を得ることが出来ました。仲の改善は……捗りませんでした……
「やー、はかどったねー。今日一日でだいぶ賢くなった気がするー」
「はい! ルキサさんと一緒に勉強すると、とってもやる気が出ました!」
「またやろうねー」
まぁでも、以前より大人しく、順調に、トラブルもなく終わったから成功って事で。まぁ周りが仲良くなっていけばトップも仲良くなるんじゃないか、と思ったりもしなくもない……そんな確率があると信じたい。
「……過程はどうあれど、捗ったのであれば良かったです。まぁ、本当に過程を考えなければ、ですけれど……はぁ」
まぁ、ファラリスは結局何も出来なかった…‥とは言わんが、上手い事は行かなかったけど。まぁ、感情をあんまり爆発させないよう。考えを変えた方が…‥
「お嬢は途中から言い合いしてただけだったしなぁ。アレさえなければ大成功」
「……く、全くの正論ですわね。これからはこの勉強の間だけは特に気をつけなければ」
……とは私も思いますが幾ら何でもそこまで思い込まなくてもいいと思いますよ? あの、何でしょうね。もうちょっと未来のテキトーな政治家さんとか見習ってよろしいのではないのでしょうか。
「……ともかく、今回もお疲れ様でした。また何れ。今度はきっちりと勉強に打ち込めれば、と思います」
「えぇ、私も……あまり思い込まない方が宜しいと思いますけど」
「善処しますわ…‥」
うーん。明らかに落ち込んでいるのが目に見える、とても見える……なんか隣のルキサちゃんが『あれ、私またなんかやっちゃいました?』って顔してる。うん。やらかしましたねぇ…‥えっと、その。
「……フォローをするべき、かな」
正直ここまで落ち込むとは全然思ってませんでした。
「って事でフォローお願いしたいのよ。予想以上に追い詰めちゃったみたいで……ペーネロト」
「あの、先に言っておくけどファラリスは別に心が特別に強い、って訳ではないから。立ち直りが早くて、強がりも凄いから、そう見えるだけで、ね?」
じ、ジト目で見られている…‥まぁ、婚約者をいじめたんだから仕方ないというか。いや私がいじめた訳でもないし誰もいじめるつもりはなかったけど…‥け、結果的になってしまったものは仕方ない。あの中で責を負うべきは私一人だろう。
「まぁわかった。君とファラリスの関係が柔らかく終わるように、協力をするって言ったし、まぁフォローくらいならやるよ」
「お願いします…‥」
やー、本当に協力者がいて助かったと思うのはこういう時だよね。私じゃあファラリスを助けるとかまず無理だったと思うし。ペーネロト様様ですわ。
「それにしても、ファラリスの事を本当に良く知ってる」
私とは違って、彼女が落ち込むのに驚かず、そうなるっていうのが当然っていう感じで返事をしたのが凄い。やっぱり彼女のことを一番よく知っているというか。
「好きなのね、ファラリスの事が」
やっぱり、ラブだからですかね? 結構、ガチめな感じで? とか?
「そりゃあ……婚約者のことが好きなのは当然だよ」
「そう」
うーん。そういう感じかぁ……まぁ、当然といえば当然だけど。私がゲームをやってた時の印象とはだいぶ違うっていうか。普通に『愛してるのは当然』くらいいうかと思ったけど。やっぱ原作に至るまで変わるような何かがあったんだろうか……
「——あぁ、それと勘違いしてほしくないんだけど」
「はい?」
「『婚約者』が好きな訳じゃなくて、『ファラリス』が好きだから婚約者になってもらったんだから。好きな人を婚約者にするのは、当然……かどうかは分からないけど、僕としてはそれが普通だと思ってる。それじゃ、ファラリスのフォローに行ってくるよ」
「……はぁ」
……行っちゃった。うわァ。うっわぁ! 凄い、なんていうか、こう、この世界が乙女ゲームの世界だって、こう、実感するセリフを、初めて聞いた気がする!
「……割と原作まんまだった」
「何がですか?」
「どわぁっ!?」
ちょっ、ちょっ!? えっ!?
「ロイ!? 何でここにいるの!?」
「お勉強会終わりですので、お迎えにあがりました」
「あ……あ、っそう」
び、びっくりした。わざわざ私を探してたのかな……悪い事をさせてしまった。
言い訳はしません。
あと次はファラリスと合流するまでのロイくん視点です。




