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力のゴリラ妹と技のゴリラ私の悪役令嬢物語  作者: 鍵っ子
一章:技のゴリラ幼少期
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媚びて、媚びて媚びて媚びるべし。

 さて。爺が義母上様を迎えに行って結構経つ。ご一行が屋敷に戻ってきたらまず騎士団の皆様は忙しくなるし、急がんとならんね。菓子を渡すなら。


「えっと……どっかに鎧のおっちゃん方は、あ、いたいた」


 あの兄ちゃんの行方なんざ私知らんしなぁ。


「あの……きしだんのおじさま」

「おや、これはこれはお嬢様! 私めに、何かご用ですかな?」


 態々しゃがんで視線を合わせてくれる程に、反応良し。実は菓子のちょろまかし、何度か行っているがその内何回は騎士団のおっちゃん達に分け与えている。当然騎士団にも何度か出入りしてお喋りなんかしているもんで、覚えも良しってなもんよ。ま、死なないための好感度稼ぎよ。


「あの、さっき、しょぼんとしてたきしのひとが……」

「あぁ、ロイのヤツですな。全く、しっかりしろとあれだけ言って置いたというに……それで、ロイに何か?」

「えっと、げんき、だして、ほしくて、その」

「……なるほど。差し入れ、ですか。全くお嬢様に気を遣わせるなど、あいつは仕方のない……恐らく、我々の詰所にいるかと思われます」


 なるほどそうか。それなら早く行っちゃおう。でもって少しでも好感度稼ごう。生き残りに必死? 醜くとも、命を捨てるよかはマシというものだよ諸君。


「ありがとうございます!」




「えっとぉ? 詰所にいるって行ってたけど、さてさて……お、いたいた」


顔までは見えなかったけど、詰所にいるのあの人だけだし、背中から感じるしょんぼりムード。多分間違い無いだろうな。ロイって名前の兄ちゃんなんだっけか。


「……こほん。おじゃましまーす」

「っ……め、メタリアお嬢様?」


 おや、騎士団の皆は基本的に私の事はお嬢様って呼ぶんだけど。親しみを込めてらしい。って事はこの人若手なんかな。っていうか、結構なイケメンやんけ。陰鬱とした雰囲気で明るめの茶色の髪とか、活発タイプの顔台無しだけど。


「ど、どうしてこのようなところに」


 あ、マジで若手さんだ。私がここに来ること知らない騎士団の人なんて、若手さんくらいだもんなぁ。割と色んなところ(大公家敷地内限定)に顔出してるし、私の安全に関わるここは結構通い詰めてるし。


「さっき、おかあさまにおこられて、しょぼんてなされてたから、きになって」

「あ、いえそれは……わ、私の不手際ですので……お嬢様が気になさる事は」

「いいえ、わたくしたちかぞくをまもってくださっているきしだんのかたには、あまりかなしいひょうじょうをしてほしくありませんの……」


 さて、ここで潜ませて居たお菓子を取り出して、そっと握らせる……ふふ、子供の姿でグッと来る感じの仕草も、ある程度研究している。萌えという新しすぎる概念を、ガチガチの規律を尊ぶ騎士の皆様に理解できるかは微妙なところなんだが。


「あ……」

「ふふ、これでもたべて、げんきをだしてくださいな」


お菓子を握りしめて……ふふ、小さい子のこういう健気な仕草、グッと来るんちゃうんけ? まあ、本当にそう思ってるかどうかは分かんないけど。


「……お嬢様、その」

「では、しつれいいたしますわね。そろそろじいやがかえってくるとおもいますの!」


 そして引き止められたりする前に、さっと去る。あまり居残って話すのも良く無い。万が一この現場見られると、母上からお怒りが来る可能性がある。多分両方に。


「きょうは、たいせつなかぞくがふえるよろこばしいひ。がんばってくださいな」

「あ……お、お嬢様!」


 うみゅ?


「あの、その、どうして、わたしに、わざわざお声を……あ、いえ。その迷惑という事はないのですが」


 ふーむ。いや、特別な理由、とかはないよ? 実際、ほぼ媚を売ってるだけだし、まあでも強いてあげるなら……うん、あるっちゃあるな。まあ、普段はあんまりそう言うのを意識したことはないけど。


「きしだんのみなさまは、わたしたちのことを、とてもたいせつにまもってくださいますわ。おとうさまもおかあさまも、とても、ほめていらっしゃいます」

「は、はい。それは、我々は大公様に仕える騎士、ですから」

「だから、わたしはみなさまにかんしゃして、そして、とてもたよりにしていますの。かぞくのように! ふふ、おいえのものみな、かぞくのように、なんて、すてきですわね」


 ……まあ。これに関しては。猫かぶった態度してるが。クッソ恥ずかしいが。本音、ではある。家族って、多い方がいい。個人的には、血筋とかクソどうでもいい。仲良くなればみんな家族だ。

 結局、私家族からも離れて一人で死んで行ったし。一人は嫌なんだよなぁ。


「……そう、なのですか」

「そうですわ、ふふ、おかしなことをきくきしさま。わたしは、もういきますわね」


 さてそろそろ行かねば。妹ちゃんの到着を出迎えねばならないからねぇ……では、失礼しますわー、騎士様。

あれかな。聞き耳でも立ててたんかな。


「そうだとしたら、噂好きなのかな。騎士に向いてない気がするなぁ、あの人」


 だからちょっとお疲れ気味だったりしたのかな。だとしたらお菓子で癒せるもんじゃ無いかもなぁ……




「爺達が戻ってきたか」

「は。統括は、戸の外で待っておられます」

「わかった……入って来るように伝えてくれ」

「分かりました」


 ゴツい男の人が、玄関扉の向こうに消えていく。そして、とうとう、この時が来たわけか。今日ここから、わたしの運命を決める日々が始まるのね……


「失礼いたします、旦那様……お連れしました」

「……お邪魔、させていただきます」

「おかあさま、まさか、ほんとうに……あっ」


 扉の向こうから現れた女性と少女と、爺。そして、その少女が真っ先に気がついたのは私だった。ふふ、これも運命か。よし、せいぜいカッコよく、名乗ってみよう……良し!


「では、あらためてじこしょうかい、いたしますわね、アメリア。あなたのあねの、メタリアですわ」


 何も思い浮かばなかったからド普通ぅ!


媚びるというのは、正当な生き残り手段な気がします。

とはいえこの主人公は些か媚びすぎな気も致します。

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