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力のゴリラ妹と技のゴリラ私の悪役令嬢物語  作者: 鍵っ子
二章:技のゴリラ初等期
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日常に滲むトラブルの気配的な何か

 睨まれたり悲しい誤解を受けたりしてスレた心に一抹の清涼剤……それは、食事ッ!


「おいひい……しっかりとしたお肉に、このソース……絡みつくわね」

「私、寮長様ってオシャレなメニューがお得意だと思っていたのだけど、こんなしっかりしたメニューも出来るなんて。本当に凄いわ」

「はい。こんなに生に近いお肉、初めて見ました。ビックリ……でも、美味しいですね」


 日本人的感覚から言わせればこれはレアどころかミディアムレアにも入らないレベルなのだが……ぶっちゃけお肉はしっかり中まで焼く派なのでこれくらいで全然美味しい。むしろもっと焼いても良いくらい。


「私、一日の中で食事の時間が一番好きよ……こんなに気持ちが晴れ晴れとするのだから」

「メタリィはご飯の時、本当に嬉しそうな顔をするものね。けど最近は少し表情が薄くなった気がするのだけど、どうして?」

「まぁ……学校に入るにあたり、あまりはしたない真似は出来ないって、矯正したのよ」


 本当は本性隠す為だけど……ぶっちゃけベスティが一緒だと隠すのも難しい気がするんだよなぁー……とか思ってた時期が、私にもありました。あんなちょっとの事で印象って変わるんだね。リィ覚えたわ!


「……でも冷酷非情、と思われるのはなぁ、ちょっと」

「? メタリィが冷たい? それって何かしらのジョークかしら?」

「うん。ベスティにそう言ってもらえるだけでも嬉しいわ。ありがとうね」

「メタリア様はお顔にはあまり出ませんけど、お話やお言葉には暖かさがありますから」


 あぁ、二人が居なかったら、私は精神的疲労で毎日どこぞのボクサーのように椅子の上で燃え尽きて居た自信があるわぁ……や、ホント。実家じゃデカイショックがドカン、ここじゃ小さいショックがマシンガンのように突き刺さってくるからなぁ。


「……そう言われると、私もこうして振舞う必要のない、実家に帰りたくなってしまうわね。あぁ、二人に会いたいわ」

「あー、私も! 久しぶりにアメリアちゃんやアレウスに会いたいわぁ」


 ベスティはアメリアと仲良いし、アレウスとは従兄弟同士だもの……そういえば、もう私とベスティって親戚筋なんだっけ。なんかずっと友達だから、実感がなかった。


「アメリアさんにアレウスさん、ですか?」

「あぁ、ヘリメルは知らなかったわね。メタリィの妹さんで、メタリィに負けないくらい可愛いの! それだけじゃなくてね、とっても強いお母様から、武術も習ってるんだって!」

「そうなんですか! お手合わせして見たいですわ!」

「え?」

「ん?」


 あれ? でも私がシュレクと結婚したら……ベスティの家は王家の親戚筋になるのか。うわぁズルズルと芋づる式のように王家の関係者が増える……


「え、えっと。アレウスは私の従兄弟でね? メタリィのお家に、えっと……」

「養子ね」


 そう、養子。だから一応そこまで繋がりは深くはならない、のかなぁ?


「うん、そう、養子! 養子に入って、メタリィの弟になったの! とっても頭が良くてねぇ。私の自慢の従兄弟なのよ!」

「そうなんですかぁ、私も兄弟がいるんですけど、頭がいい、となると……」

「……ヘリメル?」

「いいえ、忘れてください」

「ヘリメル? 何処見てるの? 大丈夫? しっかりして? こっち見て? 気をしっかり持って? ご兄弟がどうしたの!?」


 しっかし、王家との繋がりって言っても私的には厄ネタだし、ベスティにはあんまりそういうのには関わって欲しくはないんだけど……ってヘリメルさんが遠くを見つめてらっしゃるんだけど、何かあったの?


「ああ、いえ、なんでもないんです、本当に……」

「……ヘリメルって、普通の子かと思ってたけど、意外にそうじゃないのかもね」

「普通じゃない子は、お嫌いですか、ベスティアーゼさん」

「全然!」


 イエーイ、ハイタッチ……なんだこれ。なんだこれは。一体なぜこうなったのだ……まぁそれはどうでもいいか。楽しいし、なんでも。うん。


「あ、ステーキが冷めちゃうわね、さっさと食べないと……あら? お肉がない」

「え? メタリィずっとステーキ食べてたじゃない」

「えっ?」




「ストレス、なのかなぁ……無意識の内に食事貪るとか。うーん、本格的に医者にかかった方が宜しいのか……ん?」

廊下のど真ん中にシュレク。それに、一緒に居るのは……あれってもしかして王宮の人?

「……ですので、そう言った輩には王子もお気をつけを、万が一もあります」

「承知した。態々すまないな」

「いいえ……それでは、失礼いたします」


 ……行ってしまった。一体何しに来たんだろ。


「ヤッホ」

「ん、メタリアか。どうした」

「それはこっちのセリフよ。どうしたのよ、王宮の人となんて会って。何かあったの?」

「何かあった……というのは違うな。これから起こるかもしれない、という方が正しい」


 これから、とは不穏ですな。


「王宮の中では、どうやら学び舎にすら工作を仕掛ける輩が出て来て居るらしくてな。子供にそれとなく、命を下して居る者も居るらしい」

「こ、ここまで? はぁー、随分と暇なのねぇ……」

「そしてそういう策略で狙われるとすれば、俺か……お前くらいなものだろう」


 ウンウン、確かにそうねぇいや待てい。え、私?


「俺の婚約者、大公の娘、材料は盛り沢山だと思うが?」

「……そっすね」


 やっぱ厄ネタだよ王宮とか王族なんて……ちくしょう。


徐々に徐々に不穏なフラグを立てていくスタイル。

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