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力のゴリラ妹と技のゴリラ私の悪役令嬢物語  作者: 鍵っ子
一章:技のゴリラ幼少期
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メタリアってだーれさ、わたしさ

 突然ではあるが、私、メタリアは超絶怒涛の転生者である。チート能力はない。ただの小娘として、この世界に意識だけ飛んできたリケジョである。

 前世の記憶を思い出したのはなんと二歳。


『あ、死ぬ』


 ただ一言、そう思った。何せ流れ込んでくる記憶が多い。

 柔らかな母の膝の上、耳をくすぐる母の歌声と木漏れ日の中で、記憶の混濁で死にかけた。傍からは眠っているようにしか見えなかったので気にされなかった。


 峠を越えて(誰にも気づかれず)からは、突如現れた自分の記憶に混乱したもので。


「ひぇえええ父上様が吐くほどナイスミドル」

「おしぇええ母上様天上の女神か何かかな?」


 など、顔面偏差値の高さに脅えて引きこもろうとしていた時期もあった。美醜の記憶というのは、小っちゃい頃にあると邪魔にしかならないと思った。




「メタリア、メタリア」


 さて、そんなプラチナのカイゼル髭が眩しいお父様は、どうやら私めをお探しらしい。


「メタリア……おお、そこに居たのか」

「はい。すこしほんをよんでおりましたの」


 大きな食堂の、これまた大きなテーブルは、最近の私のいい暇つぶしスポットだ。日当たり良し、椅子の座り心地よし。うーん、星三つ!


「それでおとうさま、なんのごようでしょう」

「うむ。今日は久しぶりに仕事も無い。一緒に遠乗りでも行かないか」

「とおのり!」


 思わず椅子から飛びあがっちゃうなぁ、いいねいいね。本も好きだが、遠乗りも結構好きだ。現代っ子にはあまり味わえなかった、あの独特の爽快感、たまらない。乗れはしないが。令嬢舐めんな、紙装甲やぞ。


「すてき! ぜひつれていってくださいな!」

「ふふ、そういうと思ったよ。マクレスに用意をするように頼んである。大広間に行ってごらん」

「はい!」

「いやぁ、そこまで喜んでくれるなんて……この日の為に陛下から下賜された馬を連れてきた甲斐が」

「まって」


 楽しい遠乗りの前にまずちょっと待ってみようかお父様。


「おとうさま……そのおうまさんて、その、とてもりっぱなものなのでは?」

「おや、良く分かったね。神馬の血を引くと噂の名馬さ。国一つにも匹敵する価値があるなんて言われてる」

「あぉおおうううん」


 お高い……凄いとかそんなんじゃない。ヤバイ。嫌な予感はしてたんだよ。


「でもメタリアを乗せるなら、それくらいの馬じゃないとね」

「ワ~、コウエイデスワー」


 むしろ私、力不足だと思う。大公って……大公の令嬢って……気が狂いそうになる。

 お国一つに跨るとは、なんともセレブですね……


 この国。メルスデルク王国。

 その大公家、オースデルク。その長女が私、メタリア・ホルク・オースデルク。誇り高い大公令嬢様。らしい。


『おお、その星の瞬きを思わせる銀の髪、ミルクのように輝く肌に、人々を酔わせる瞳の真紅はまさにルビー! 生者とは思えぬこの美貌、正に人外の物と讃えざるを得ませぬ!』


 誕生日に呼ばれた詩人の言葉を信じるなら、外見は確かにずば抜けて高貴な貴族に見えるのだろうが……何せ、中身は一般ピーポーの森ガールリケジョだ。贅沢なんて全く知らぬ。一般人感覚は何時まで経っても抜けない。

「む? どうしたメタリア。具合でも悪いのか?」


 ぐあいはわるくないです。せいしんがつらいんです。あー、そうげんキレイだなぁ。


「だいじょうぶですおとうさまおねがいですからたづなからいしきをはなさないで……それで、あの、おとうさま」

「ん?」

「さきほどからうしろについてきてくださっている、みなさまは……」

「ウチの騎士団だよ。見るのは……初めてだったかな?」

「いいえそんなことはないです」


 ですよね。うん。知ってますお父様。とっても頼りになる大公家直属騎士団の皆様ですよね。お会いした事ありますよ。私が言っているのはなんでそんな誇り高い騎士団の皆様が遠乗りで後ろに付いているかという事でしてね。


「なにせ一人娘を守る為だからね、はっはっはっ」


 すわ行軍かと領民の皆さまがお見送りにくるレベル。なおその中心は顔面だけが良い唯の凡人ガール。お、イジメか?

 この行列、一体幾らの金が動いているのか想像しただけで……ウグ。


「気持ちいいかい、メタリア」

「マアマアデス」

「そうかい。良かった良かった」


 心地よさなんて感じる暇ないけど、そんな事言ったらお父様が悲しむかもしれないのでここは忍耐が必要になる。やけに声色が楽しそうなのが恨めしい。


「……これからは、少し寂しがらせるかもしれないからね」

「へ?」


 おや? お父様どうしたんだろ、トーンがガタ下がりだ。

 気になって振り向けば、お父様は少し真剣な表情。だらけ切っていた顔が程よく引き締まって、ちょうどいいシリアス顔に。フゥ、ナイスミドルゥ。弱った胃への癒しや。


「どうしましたの、お父様」

「ん……あぁ。実はな」


 ――お前には、もう一人、妹が、居てね―― 


「……いもうと」

「そう。メタリア、もう少ししたら、君はお姉さんになるんだよ……それで少し、彼女に構いっきりになるかもしれないから、先に話をしようと思ってね」


 ……き、来た。


「大丈夫、メタリア。君のことはずっと愛している。その事に変わりなどないから……メタリア?」

「なんでもありませんわ。だいじょうぶです」


 来る。来るぞ、嵐の様な勢いで。

 ()()()()()()()()が、やってくる!

一応の現状説明会。テンポよく、を意識しています。でも駄目ですねこれ……

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