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力のゴリラ妹と技のゴリラ私の悪役令嬢物語  作者: 鍵っ子
一章:技のゴリラ幼少期
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ダビデパイセンリスペクト

 さて。つい先日主人公らしい内心モノローグかましてバリバリかっこつけた私でございますが、すいません。もうそんなもん忘れて今直ぐにも眠りにつきたいです。


「……」

「……」


 食堂の雰囲気が最悪です。凄いですよ。いや母上父上が喧嘩してるってわけじゃないでしょうけどさ、爺から耳打ち受けた瞬間父上が大公モード、父上と話した母上が英傑覚醒しました。大公家の支配者お二人が本気の眼光見せてるんだよ? 吐くわ。


「お、おとう……」

「……」

「にゃんでもにゃいです」


 何でしょうね。なんか言われたわけでもないってのに。話しかけただけでビビっちゃって泣きそうになってんの。ねぇベイビイ、何でそんなやばい雰囲気してんの? 分かってますよ暗殺計画でしょ。


「お」

「……フゥ」

「キョウモウルワシイデスワ」


 母上様なんか大公妃の名前ですら生易しい雰囲気だよ。眼光からしてもうね、女皇帝って感じですわぁ。家族に刺客が送り込まれる? このお方相手にどうやったらやる気持続できんの?


「……く、クソッタレ、どうすりゃいいんだ。こんな状況で飯なんて食えるかってんだ!」


 思わず口をついて汚ったない言葉が出る始末。しかしながら聞こえないように早口小声でお送りしております。こんなん聞こえたらマジで消し飛ばされかねない。いやまぁ、私に対してブチ切れてる訳じゃないけど、その殺気がこっちに来るだけで死ねる。


「……メタリア」


 あっ、野獣の目が、コッチに、死ぬ、牙が体に食い込んで。終わ……


「はェェェぇぇい!」

「あ、あぁ。すみません。少し、怖い顔をしていましたね……今日はこの後、私もあの人も貴方に構ってあげられないから、お部屋で遊んで居て欲しいの」

「はっ……いぃぃ……」


 ……ったかと思ったぁああああああっ! いや、本気で、死のイメージを見たよ! あれが、この貴族社会において、騎士から大公妃にまで上り詰めた傑物の、ガチモードの瞳か……あの美貌でセクハラとか大丈夫かなと思ったけど、本能から死を覚悟したら意味ないよね。うん。


「……じゃ、じゃあ、もうごはんたべたのでしつれいしますねしつれいしまーす!」


 これ以上その迫力を真正面から受けたらマジでちびっちゃうから逃げ出す。チキン、雑魚? 百獣の王を前に素手で立ち向かう勇気を持ち合わせたものだけが私に石を投げるが良い。




 さて、あまりの恐怖に改めて悲しみを背負いたい今日この頃。いや自分がエライもの見つけたのが原因だけどさ。今お二人で色々話してるんだろーねー。なんか、アメリアさんに関する事とか、主にそれ。


「うーむ……結局、私が出来る事なんざ、ほとんどないんだよなぁ……」


 だってアメリア家族を養うのって、おとんとおかんな訳だし、その辺りの事情も大公家の本気で何とかするだろうしね。爺曰く、このアメリア関連は、要するに我が家が羨ましい嫉妬貴族とのいざこざに端を発してる訳でしょ?


「小娘が割り込んで出来る事なんてないよなぁ……マジで」


 強いて言うならアメリアと仲良くするくらい? まあ仲良くせな悪役人生まっしぐらな可能性あるし……普通に可愛かったから、妹として可愛がるのも、すっごいこう、心の奥が滾るし。心のマグマが隆起するよね。


「フゥ……」


 でも、個人的には何かしたくもある。結局殺されそうになった理由は我が家にある訳だし、私はむかんけーだよーんペッペロパー、なんて言えるほどロクでなしじゃないし。それに、あんなに小さい子の母親を、ただの嫉妬の延長線上で奪うなんて……


「……あー、もう!」


 ちくしょう余計イライラしてきた! こんな時は……良し!


「そーれオラッ!」


 枕投げぇ! ストレスを、全てっ、枕に、込めてぇ、投球! 飛距離は……おしゃ、部屋を横断し向こうの壁にジャストミート! ククク、やっぱり、これに限る……インパクトする瞬間の手応え……値千金……!


「あー……高校生の頃は、もっと投げられたんだけどなぁ……あーでも、体を上手い事使えば、まだ飛ばせる気もする。暇つぶしついでに追求してみようかな」


 大学に入るまで、高校生まではバリバリの球女であった。体動かすのは嫌いじゃなかったし。なにせエースですぞ。グフフフフ。連続登板なんぞ当たり前、後輩からも慕われた、皆の憧れのオネーサマである……今は、その実績も意味ないですけど。


「よいしょ……それっ」


 壁際からもういっちょ投擲。うむ。狙い通りベッドの上。筋力はともかく、コントロールはある程度記憶の動きをなぞればどうにかなる。


「……」


 ……今こんなん出来ても意味ねーよ! ちくしょう世の転生者の皆様は生き残るために凄いチート能力やら、前世知識を活かしてこの歳ですら大活躍だと言うに……私は、こんな物投げるだけ。クソッタレ、投石は人間の力だって? アホかそんなん言えるのは投石を極めたかのユダヤ王、ダビデパイセンくらいだわ。


「異世界転生って、簡単じゃないんだなぁ……ああちくしょう、大公っていうチートカードを手に入れてなお、私は何も出来ないクソガキのままなのね……」


 世の中の転生の皆様に於かれましては、大変ご苦労なされていると思われます。舐めた発言をした事を、お許し……しなくていーわクソッタレが! てめーらチート能力で楽してるもんな! もうすっごい楽してるもんな! 私も大公っていうチートカード持ち!? それに対しては大変申し訳なく、地獄行きにて謝罪申しげますわぁ!


「……良し、現実逃避はやめよう」


 結局のところ、もう一週間後には来る妹を可愛がるくらいしか出来ないんだ。無力な己を噛み締めて、理想と共に砕け散るしかないんだよ……うぅ。なんか泣けて来た。


「ツレェ……」


投石ですごい人を探すのになんと一時間近くかかったバカがいます。はい、私です。

悪役令嬢をやるにあたって、主人公を下から這い上がらせようとしたバカもいます。私です。

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[一言] 主人公さんて、賢いか馬鹿かを判らない、微妙に残念臭いw
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