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力のゴリラ妹と技のゴリラ私の悪役令嬢物語  作者: 鍵っ子
二章:技のゴリラ初等期
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燃えても若干辛い勉強会!

「じゃあ、ルキサさんはベスティの前に、エーナさんは、ヘリメルの前に。私の前はファラリスさんで。宜しいかしら?」

「えぇ。宜しいですわ」


 今日の為に借りて来た横長の机だ。六人で座ってまだちょっと余りがある、結構大きな奴。近くにはロイ君と……で、向こうも当然まっくろくろすけを連れて来てる、と。


「シノブ。くれぐれも粗相のないように。良いわね」

「……承知しております。お嬢様」


 うーん。見た目に違わずあまり愛想のいいタイプじゃ無さそうだ。クールタイプっていうより、純粋に無愛想って感じ。でもこういうタイプがRPGとかだと強い幹部とか何だよねぇ。ロイ君曰く、バトルは間違いなく強い。なら他はどうなんだろ。


「そちらの方は……貴方の従者かしら、ファラリスさん」

「えぇ。シノブ、と言いますの。なかなかの腕利きでしてよ」


 ……名前も日本人っぽいなぁ。マジで転生者だったり……無いか。


「へぇ、奇遇ですわね。私のロイも、我が大公家でも知らぬ者無しの騎士なのです。お互い臣に恵まれて幸運ですわね」


 とはいえ、自慢されたら自慢仕返したくなるのが女ってもの。だって、ロイくんは私がこの世界で(結果として偶然)見出した(たった一人だけの)家臣で、私のお宝だもん。そりゃあ、ね。


「……えぇ、本当に」

「全くもって」

「「ほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほ」」


 おぉっとしまった。些か雰囲気を悪くしてしまったな……自重自重。落ち着こう。


「メタリィ! もっと迫力出して! ムーンって感じで!」

「あら、いいの、じゃあ遠慮なく……ちょっと全力で参りますわよ?」

「望むところですわ、かかってらっしゃい!」


 おっしゃ小娘、やってやろうじゃねぇか、バッドラックとダンスしようや。


「ダメー! ダメですメタリア様! ベスティアーゼさんも煽っちゃダメです!」

「お嬢、落ち着いて。いきなりおつむに来すぎでしょ」


 はっ……へ、ヘリメルさんに感謝。危なかった。このまま調子乗ってたら、この勉強会の目論見が完全に崩壊するところだった。


「……フゥ、いえせっかく招待したというのに不躾な態度、申し訳ありません。少し熱くなりすぎたようです。ファラリス嬢」

「……っ、いえいえ。私も少し頭に血が昇っていましたわ……ありがとうルキサ」


 良し……まだ軟着陸できるレベルだったらしい……セーフセフ。


「……お嬢があそこまで本性表すの珍しくない?」

「そうですわねぇ……余程波長がお合いになるか、それともその逆か、ですけど」

「あー、猫被れないくらいにこう、水と油的な!」

「一度感情的になると、我慢が効きませんから」

「煩いわよルキサ、エーナ! 一旦口を噤みなさい!」

「「はーい」」


 ……うーむ。なんだろう、初めっからこのグダグダした空気は。


「……と、兎も角。まずは本題に入りましょうか……ファラリス様」

「え、えぇ……本当に、お互いに少々と混乱しすぎましたものね。落ち着きましょう」


 ……おかしいな。もうちょっと、こう。互いの出方を伺うみたいなスタートになると思ったら、しょっぱなから全部ぶち壊しになっちゃった。


「それで……早速始める、その前に。まずやる事をやってしまいましょうか」

「やる事?」

「苦手な分野の確認ですわ……まぁ、あればですけど」

「……それは、まぁ構いませんが。なぜわざわざ? 互いに勉強すればいいだけの事では?」

「まぁ、相手の苦手な分野が自分の得意な分野なら、教えあう事も出来るのでは、と」


 勉強会って、普通は……いや、現代ではこういうものだもんで。まぁ、こういう個人プレーの多い時代じゃ、そういう発想は出ないかもしれんが。一人一人を伸ばすのではなくて、悉く平均化する現代日本ならでは、かもしれん。


「……なるほど、悪くありませんわね」

「でしょう? 得意を伸ばすのも宜しいですが、苦手を埋めるのも、必要ですわよ?」

「そうですわね。いいでしょう。メタリアさん、あなたが得意なのは?」

「算学ですわね。ってそうではなくて、苦手な分野をですね」

「ちょうどいいですわ。私、算学は苦手でして、教えてくださいな」


 ……なるほど。得意なのを聞いてから苦手と照らし合わせても、結果は同じか。


「では、そちらが得意なのは?」

「論述、記述、そう言ったものは誰相手でも一日の長があると思いますわ」

「それはありがたいですわね。私、そう言った類いのモノはてんでダメで」


 まぁ、そりゃ教室での様子を見る限り、そうじゃないかとは思ってたよ。だからこれを提案したんだし。しかし、私の得意とも見事に噛み合ってくれるとは。これは。意図せずして互いが互いを補うような。


「あなたの提案で、有意義な時間を過ごせそうですわね」

「えぇ、全く。私としても、せっかくの勉強会、大きな成果をあげたいですから」

「そうですね。あなたとずっと顔を突き合わせて何も成果が得られない、などと、冗談にもなりませんわ」


 ……まだ言葉に棘があるけど、まぁ。うん。私が気にしなければいいだけか。


「グヌヌヌヌウ、偉そうにぃ」

「べ、ベスティアーゼ様、落ち着いて」


 そして後ろのベスティはヘリメルが抑えてくれてるから。うん、ヘーキヘーキ。こっちから喧嘩売るようなことはしない。平和に行こう。


「お嬢、苦手なことまだあるの、言い忘れてるよ?」

「……ルキサ、余計なことは言わないで宜しいですからね」


 あ、そうなんだ。私がカバーできるものだと嬉しいんだけど。


「お嬢は文学史壊滅的でしょ? ちゃーんと言わないと」

「ルキサァ! だから言うなと!」

「……」


 ぶ、ぶ、ぶ……………………文学史、ですか。


「今のは気にしないで宜しい……メタリアさん?」

「………………なんでもないですわよ?」

「えっ……嘘っしょ?」


 ……すいません。


「私にも、出来ないことくらい、あります」

「……メタリアさん」


 見ないで。


思惑が致命的に噛み合わないこと、あると思うんです。そんな回。

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