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力のゴリラ妹と技のゴリラ私の悪役令嬢物語  作者: 鍵っ子
二章:技のゴリラ初等期
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ライバルになろう!

「……えぇっと、一応聞いておきますわね?」

「本気も本気ですからご安心してくださいな。あと、正気を失ったわけでもございません」

「ええい私の言葉を奪った挙句その先まで言わないでほしいですわね!」


 ぬはは。度肝を抜いてやったぞ。『交渉事というのは最初にペースを握った方の勝ちというのが定石。その手はお前のお得意だろう』と言われたから、某少年漫画の曲者主人公を参考にして頑張って見た。


「そ、そんな……あなた!」

「あら、どうしたのかしら? 学友と共に勉強をしたい、と思うのは、何か可笑しな事かしら? その相手が、このクラスで才覚を表しているあなたなら、なおさら」

「う、うぅ……そ、それは」


 ふふ、読めまいて。この私の感情が、策略が……まぁ単純にすっごい無表情だから読めないだろうけど。つーか、こういうのは経験らしいし、子供だったら読めないのは当たり前というか。いやーこんなんばっかり上手くなってしまった……


「っ、ちょっと」

「あっ」


 ちょ、ちょっと引っ張んないで! 制服が伸びますわ! ってそんなに顔を寄せてどうするおつもり!? ちょ、お離しになりあそばせ! いや、うんこんなキャラと違うな私。


「あなた……私をコケにしているのであれば、話は別。ここで終わらせていただきますわよ……もう一度聞きますわよ、どうしてそんな事を?」


 なるほど。こそこそ話をするつもりで、ここまで私を引っ張ったわけか。まぁ、私とアンタさんが喧嘩してるってのは噂にこそなってるけど、知ってる人は知ってるって感じみたいだし。わざわざ周りに吹聴したいわけじゃないと。


「……私と、貴女の関係を、誤解しているつもりはございませんわ」


 なら、コッチもコショコショ話で。あわせてやろうじゃないの。感謝せいよ?


「では何のつもりですか?」

「別に、私の信条に則ったまでです……勝負をする、というのであれば、ね」

「それが何の関係があると?」

「学校であるなら、勝負はやはり、知を競う勝負が一番映える、と思いますの」


 まぁ、多分向こうもそうだろうし……うん、頷いたな。やっぱり知力勝負になるよな主力は。自分で言っておいて、投石での対決とか流石に原始人に過ぎるし。


「私、フェアプレイをモットーとしていまして。条件は対等にするのが方針。後で対等でないから勝負は無効……などと駄々をこねられても困りますし」


 ……という言い訳です。はい。私、最初はだまし討ちにも等しい卑劣な下策を練っておりました故。勝ちゃいいんだよ、というこの心根を今年こそ改めたいと思っております。


「そんな事を私がするとでも?」

「まだ出会って日も浅い貴女のことを理解仕切れておりませんので……」


 ふ、顔を歪めおってからに。流石にこの事実を覆すことはできないだろう。


「故に、同等の条件で勝負をするために、共に勉強を、と」

「……なるほど、下手な馴れ合い、というよりは傲慢な施し、ということですか」

「取り方は、お好きなように……ただ、今の私と貴女では、対等とは言えない、とだけ」


 ふふ、そうだぞ……私と貴女の間には決定的な差がある、その事実を認識したまえ。と言ってもまぁ、あんたの方が有能って意味だがな!


「……言ってくださるわね。その発言、後悔させたくなってきましたわ」

「あらそう。乗り気になってくださったかしら?」

「少し……ね」


 よし、流石負けん気パワー全開ファラリスちゃん。こういう煽り口調には反応するな。


「良いでしょう……ッア」


 お、やる気の満ちた顔に……いや、ちょっと待って。何で頰をちょっと赤らめてるんだお前は。


「……とりあえず離れましょうか。近すぎますわ」

「あ、うん。そうですね」


 今更!? と思ったけど、私も今気づきました……勢いで接近して話してみたけど、この距離じゃ若干キスしてるようにも……そんな百合展開はノーセンキューです。


「んんっ……お話はわかりました、返事は改めて、従者に届けさせますわ」

「えぇ、構いませんよ。お待ちしておりますから」


 ……よし、来た! 乗って来た! 変な空気になった気もしたけど、でも大丈夫、とりあえず作戦は成功したということで!


「……」

「何かしら?」

「色よい返事、お待ちしておりますわ」

「……ふん!」


 あ、行っちゃった……取り巻きたちも、一緒に。うん。よしよしよしよし!


「無事、お話はできたのでしょうか。メタリア様」

「えぇ。恐らくは」

「はー、でも今でも信じられないわ……あの子とも一緒に勉強したいだなんて。公平な勝負がしたいって言う、メタリアの気持ちも、わかるけど」


 ふふふ。すまぬなベスティ。しかしこれも必要な事……


「二人も、少しずつ慣れていってもらえればありがたいわね」

「はい! たくさんの人と知恵を借りあいながらお勉強なんて、素敵だと思います」

「……まぁ、メタリィが言うなら? そこまでがっつり嫌、なんて言わないけど」


 前提を間違えていたのだ。穏健な方向とはいえ実力で叩き潰すことばかり、私は考えていた。しかし、そもそも敵対状況をなんとかするのであれば、実力で向き合うのは愚。


 しかしながら、少し考え方を変えてみよう。


「そもそも、戦う理由がなくなれば……ふふ」

「? どうしたの急に笑って」

「いいえ、なんでも?」


 そう、ここは学園。そして学園といえば、友人たちとの切磋琢磨の青春……! 共に勉強することで生まれる、ライバル関係という名の何事にも言い表せぬ絆!

 敵対せず、同化する。これがシュレク提案の作戦の肝。やる事は、勉強に誘うだけ。


『敵対という前提がなければ、挑発という手段も使えるだろう』


 いやぁ……さすがシュレク。賢い。


切磋琢磨するのは学生にとっていい影響になるって偉い人が言ってた!

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