表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
力のゴリラ妹と技のゴリラ私の悪役令嬢物語  作者: 鍵っ子
二章:技のゴリラ初等期
170/324

転生者チートが火を噴くぜ!

「しかし……そんな美味しい黒パン、ねぇ」


 ふむ。臭うぞ。とても美味しい香りがする! これは……ドゥルルン! 転生者チートの香り! くく、やっちゃいます、やっちゃいますかぁ!?


「えぇ、とっても美味しいんです。他の黒パンとは違って、味がぼやけてないし、食べにくくもない位にしっかりとした歯ごたえもあって!」


 うわその食レポ聞くと本当に食べたくなってくるなぁおい! 


「私、食べてみたくなってきた……め、迷惑だと思うけど、来て欲しくなっちゃう」

「私の領家の名産ですもの、せっかくなら色んな方に知ってほしいですし、お二人が望むのであれば!」

ほう望むのですか。お嬢さん、いい話があるんですが……お聞きになりません?

「それなら……折角ですし、場所をお貸ししましょうか?」

「場所?」

「えぇ、この寮が如何にしっかりとした寮とはいえ、調理場の規模はやはり限界があるでしょう? それに、そういうイベントは、やはり休みでこそ全力で楽しめるというものですもの……夏期休暇、その時に、我が大公家でいかが?」


 お、ベスティは兎も角ヘリメルさんが目を見開いてる。まぁ、私は兎も角、私の家って凄いもんね。そりゃ招待しますって言われたらびっくりするよね……ヌフフ。


「我が大公家、結構豪華な調理場を備えてましてよ? 料理人の方も、大公の台所で辣腕を振るうことが出来たら嬉しいのでは?」

「それは……いいですね! きっと皆も喜びます!」


 ……あの、えっと。その。私クズみたいな発言してたけどちゃうで? 私的にはこの時代の価値を考えた発言でしてね。大公って、やっぱりそこに行っただけでステータスになるっていうか、そういう特別性を有していまして……だからね?


「私の妹も弟も、美味しいパンを食べるのは大好きですの。折角だから二人にもご馳走してほしいですし」

「そうなんですか! それなら……あ、でも宜しいんでしょうか……そんなにご期待を寄せていただいてなんなんですが……大公の皆様のお食事は豪華なものばかりで、お口に合うかどうか……」

「きっと大丈夫よ。私が保証するわ」


 いやうん。なんていうか、冷静に考えると分かるんだけどさ。一応ヘリメルさんも男爵だし、その貴族が食べるほどの黒パンっていうのは。大公で贅沢してると分かるんだけども、基本的に貴族が食べるのって白パンだし。


「……そこまでおっしゃられるのでしたら、自慢する程のものではございませんけど、我が家の職人たちを連れて伺わせていただきますわ」

「私も! 私も絶対に行くわ!」

「えぇ、ベスティもしっかり招待するから安心してちょうだい」


 ……と、微笑ましい女子同士の馴れ合いに、見えないこともない。しかしこれは、残念ながらそんな爽やかなものではございませんっ……! エゲツないほどの、強欲、強欲、強欲の三連打! 三連打! 三連打!


「あら、メタリィちょっと嬉しそう?」

「ん? そんなことはないわよ?」

「ベスティさん、分かるんですか? 全然表情、変わってないように見えますけど」

「コツがあるのよ。今は普段と違うけど、普段と同じようなクセもあるし」


 クフフ、いや嬉しいと思うのも仕方ないっ……いやホント。大体の貴族がこの学校に入る目的、覚えてらっしゃいますか? いや、私は誰に話しかけとんのだ。


『貴族はコネを獲得する為にこの学校に入ってくる』


 そう、そうなのだ。貴族とのコネ。将来にかかわってくる重要な要素。しかし、私自身そんなものをワザワザ獲得するつもりも無かったし、ぶっちゃけペーネロトと接触してなんとかこう、友好を保つことで頭はいっぱいでした。でもね。


「……ふふ」

「あ、今のは分かります。嬉しそうですね」

「内心大喜びなんじゃないかしら。これは完全な勘だけど」


 だからってそれを一切考慮せず無視してぶっちぎっても『はーそんなもん知らねーよクソが生き残るのに必死なんだからどうでもいいんだよ』とか言えるほど度胸はない。私は主人公系なろう転生者ではないのでそんな度胸ない。


「兎も角、日取りが決まり次第、お伝えしますわ。楽しみにしてますし、楽しみになさって欲しいですわね」

「メタリィ、ちょっと口調が変よ。結構浮かれているのね」

「そうなんですか?」


 しかし、それは何もしない場合の話! コネに匹敵する程の大きな成果を出してしまえばコネなんざ作らなくてもいいんだよ! 今はなぁ!


「それでは、勉強に戻りましょうか。ヘリメルさんに無理を言って、勉強が中断してしまいましたし……申し訳ありません」

「あ、いえ。気分転換になりましたし……」

「本当に。一応はヘリメルさんと同意見だけど。ずっとそういう移り気な所があるっていうのは宜しくないわ、直さないとダメよ?」

「ベスティ、あなたも結構楽しんでいたのではなくて?」

「いいえ、メタリィのフォローをしていたわ」

「あ、えぇ、そうね……」


 なんか、ザクっときたけど……今はいいわ。

 で、そのコネに匹敵する程の手段……それこそ、新たなる特産品、取引の品の開拓! こういう内政チート、一度やってみたかったのよなぁ!


 その特産品の目当てが、そう、ヘリメルさんちの黒パン! 黒パンは現代になってその価値が見直された品……この時代はほぼノーマーク! クハハハハ! もしこのツテを私が掴んだとなれば……いいぞぉ! 来た来た、これは現代感覚を知る転生者のチートパワー!


「私……(転生系)悪役令嬢、やってるっ……!」

「悪役!?」

「あ、メタリィが変なこと突然言い出すのは普通よ? というか、少し普段の感じに戻ってきたわねぇ。ちょっと久しぶりだし、懐かしいくらいかしら」

「えぇ……」


チートって、なんか無双できそうな響きですけど、我が小説ではこんなもんです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ