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力のゴリラ妹と技のゴリラ私の悪役令嬢物語  作者: 鍵っ子
一章:技のゴリラ幼少期
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ハイスペック爺とガラスの小瓶

 さて……何をやっていらっしゃるのか。


「……店の商品には目もくれて居ませんな」

「カウンターの方にまっすぐ向かって……あ」


奥の扉、開けたぞあいつ! お縄だ! ふ、ほ、う、し、ん、にゅ、う!


「爺!」

「お嬢様はお下がりを。確実に捕らえてまいります」


 そう言った爺からいつもの好々爺の表情は消えた。老将と呼んでも差し支えないほどに鋭いこの目! 懐刀はやっぱり伊達じゃないよ、すげえよ爺!

 ってもう居ない! いつの間に!? 爺すげぇ!


『……っうわぁ! なんだ、このジジイ!』

『その手のものは……まさか、毒か? 貴様、なぜそんなものを』

『畜生……ど、どけよ!』

『阿呆が!』


 ……うわ、なんかドコバキ音が聞こえるよぉ。あんな三下臭溢れる喋り方してる奴なんかに爺が負けるとは全く思えないし、つまり、つまりこれは……フルボッコタイムです?


『……………………………………』


 あ、音が止んだ。で、奥の扉が開きましたね。


『フゥ……』


 すげぇ、軽々と爺が不審者を肩に担いでる……力強い。若い者には負けないじゃなくて若いだけの奴には何があっても負けないだろ。爺。あ、手招きしてる。じゃあお邪魔しまーす。


「えっと、爺」

「問題ありません。確実に無力化いたしました。簡単には目覚めませぬ」


 あっそう。それは良かった。ってそうじゃなくて!


「毒薬、って聞こえたのだけど」

「……はい。この男が持っておりました。しかも、このようなものに入れて」


 そう言って右手の物をこちらに翳してみせてくれる。

 うわ、すっごい色してる。匂いはないけど、それが逆に怖い。しかもわかりやすくドクロマークの書いた紙巻きつけてある。っていうか、これガラス瓶じゃん。しかもこんな透明度の高い奴。え、絶対高い奴やん。


「こ、こんなん王室とか、それに連なる人とかそれくらいの人じゃないと……」

「この様な輩では、まず買えませぬ。そもそも毒薬とて、余人には容易く手に入れられるものでは御座いません。尋常の罪人、と思うのは不可能ですな」

「だよねぇ!?」


 え、何。これ答え出ちゃったやん。明らかにこれやん。メトランさんを殺したの、この毒やんけ。衰弱死とか、真っ赤な嘘やんけぇ!

 やだ……こんな陰謀、知りとうなかった……こわ……


「……フンッ!」

「ヴュエ」


 オットォ、私がビビっている間にも尋問が容赦なく進んでいくぅ!

 そして今、人として出しちゃいけない声出したぞこいつ。っていうか、抱えてる手を震わせた様にしか見えなかったけど、何したんだ爺。やっぱバトラーって格闘家がベターなんかな。


「う、うげぇ……じ、ジジイがぁ」

「貴様、これを見ろ」

「は……あっ! て、テメェそれ返せ! 大金が、大金が!」


 ひえ、暴れぶりすご。活きのいいマグロか何か? でも魚類君、冷静に考えて見ろよ? 自分を潰した超人爺さんがいるのによく暴れられるよね、命が惜しくないのだろうか。


「ふむ。この中身の薬を使えば金が入る、か?」

「そうだよ、その毒をつか……て、あ」


 そして流れる様に誘導尋問。割とあっさり自白。情けないと思わないのかよお前。一応この世界における原作が始まる切っ掛けだぞお前のその毒は。もっと誇りを持てよ。知らんし無理だと思うけど。


「ほう。私は、薬を、使って、としか言っておらんのだが。やはり、毒だったか」

「う、いやその」

「まあその見た目でなんとなくは分かって居たが、確信は無かったのでな、自白してくれて、助かったわ」

「この野郎! ペテンにかけやがったな!?」


 いや、まぁ。ブチ切れてたし、冷静な判断力落ちてたし、タイミングも結構上手かったし、仕方ないとは思う。これは爺がフルスペックすぎただけだと思うし、うん。


「こやつは役所に突き出すとして……お嬢様、この一件、普通では御座いませんぞ」

「どういうこと?」


 まあ、一応疑問形にしちゃいるけど、ぶっちゃけ爺の表情を見るだけでも、明らかに普通じゃないっていうのは一発でわかるっていうか。


「……ガラス瓶に対して凄まじい執着を見せて居たのは、これが報酬も兼ねて居たからでしょう。この小瓶一つとて、売り払えば」

「あ、莫大な金になる!」

「そう……しかし、普通に金を渡せばそれで済むというのに、この様な迂遠な手……この小瓶という証拠を確実に隠滅する為にも、なんとしても売却させたかったのでしょう」

「はえー……えらい考えられてる作戦ねぇー」


 なお私では一切思いつかなかった模様。脳萎びてんのかな。若いのに。私のせいかな。


「えぇ。ただの私怨、とは思えませぬ。感情的にではなく、理性的に、確実に、露見せぬ様、ここの住人を始末しようとしています」

「えっと、それが?」

「そうする必要がある、という事です。おそらく、この凶行が露見した途端に、地位が危うくなる程度で、そしてこれだけのガラスの工芸品を用意できる程度には、上の方々の」

「えっ」


 えっ。ちょっと。それ、マジすか。これはお貴族様の陰謀ですって事? え、何その中世時代劇サスペンス。盛りすぎてちょっと胃もたれしちゃう。


「旦那様にも伝えねばなりません。この店を狙った、と言うことは、そう言うことである可能性も、大いにあります」


 ……うん。胃もたれの原因はそれもある。

 これ、親父を狙った嫌がらせっていう可能性も大いにあるよね。


主人公ちゃんの影が薄い回。

しょうがないですね、主人公ちゃんは別に有能でもないので……

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[一言] 主人公さん、凄いバカかも
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