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力のゴリラ妹と技のゴリラ私の悪役令嬢物語  作者: 鍵っ子
二章:技のゴリラ初等期
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ヘリメルさん家の家庭事情

 家の没落ってのは貴族の常。とはいえ、それの現状を目の当たりにしたことはない。


「……あの、えっと。話をするのであれば、その、別の、ね」


 でも目の当たりにする必要なんざないだろうに! こ、ここは何とか話題を逸らしてだな……ま、まだ何とかなる。まだ軌道修正は効くはずなんだ!


「いいえ、私の事をお話しするのであれば、これは必要なことですので」

「あ、そ、そうなのね……」


 だ、ダメだっ……こ、ここでじゃあ話さなくていいとかいう鬼畜外道みたいな発言をするとか無いわ。つーか空気が死ぬねんそんな事したら……言い出しっぺ私だしねぇ!


『やっぱり重そうな話題っぽいし聞くのやめるわ。もうええ』


 とか言える奴に人の心は存在しない。最良で外道である。


「……私には、兄弟が居まして。その全員が武術を習っています。けど、それは家の為ではなく……完全な、趣味なのですよ」

「しゅ、しゅみ」


 えっと、武門の家ですよね。すいません、趣味で武術やるって、どうなんでしょうか。


「武の家たるもの、男子には武の道を歩ませるもの……しかし、その主張をしているのはもはや父だけで……それも非常に消極的なものですけど」


 そ、そうなんですか……貴族の家の誇りって、その家の得意な事に準じてる事が多いんだけどさ……趣味ですか。えっと、その。ヤバくないですか?


「あんまりよろしくありません……お父様は『もともと地に堕ちていた誇りが……いよいよもって消し飛んだ』ととても嘆いてらっしゃいました……」

「それは……そう、でしょうね……」


 大げさだと思いますか? ドッコイ、貴族にとっての誇りは命と同等だからね。なくなったら実質ゾンビよ。腐り果てるのよな。その誇りを『趣味でやってます』とか言われるのはヤバいですよ。


「それで、私はお父様から『もう好きに生きなさい。なんか、なんか楽しそうだからって理由で武術を嗜むのはやめなさい』と言われまして……それで、お母様から料理でも習ってみようかな、と」

「あ、それで料理を」


 裏の理由が重いというか、物悲しいというか……これなんて言えばいいんだろう。


「……えっと、どんな料理が得意なの? それを教えて、ヘリメルさん!」


 ! な、ナイスベスティ! このおもっくるしい話題から何とか方向性を変えていこうじゃない! よし、私も続くぞ!


「私も得意ではないけど、シチューの作り方くらいは、習ったことがあって……ヘリメルもそんな感じかしら!?」

「あ、いえ。シチューを作るにはいささか私の家には予算が足りず……スープが普通ですね。塩は普通に買えるので、味の調節くらいは……お二人とも?」


 ジーザス。藪をつついて蛇を出した。ベスティも思わず天を見上げているんだが。私だってこんなことになるなんて想像もつかなかったよ……いや、たぶん普通より裕福な生活はしてるんだろうけど、貴族目線がどうしても混ざるから……!


「そ、その……どんな! そうどんなスープなの!? お肉多めとか!」

「そうね、お野菜どんなの使っているの、ヘリメル」


 な、ナイスアシストベスティ……いやホントごめん、迷惑かけます。会話には気をつけよう。どこに地雷埋まってるか分かったもんじゃないとかマインスイーパーじゃないんだからさぁ……ホントクリアできた試しがないのよな。


「えっと、領民の皆様から差し入れてもらえるお野菜が中心ですね」

「へぇ、ヘルシーなのね。お肉はどれくらい?」

「お野菜の半分くらい、です」


 っとぉ、よし。話の向きを修正できた。危ない。あのままの空気で行ったらゴールインしちゃうかもしれないし……どこにするんだろうね。


「スープかぁ……パンと一緒に食べるのが好きね。やっぱり」

「そうですねぇ……黒パンと一緒に食べるの、いいですねぇ」

「……ん?」

「え?」


 あっ、あかん、またなんか踏んだ気がする。


「えっと……良質な麦でできてる黒パンで、ウチの名産なんですけど。むしろウチの領では白パンよりも美味しいって有名で」

「あ、あぁ。そうなの。それは……なかなか美味しそうねぇ」


 だ、大丈夫だった! 地雷じゃなかった! 黒パンって美味しいところは美味しいからね! いやぁ私ったら早とちりしちゃうところだったわぁ!


「……ただ、最近ウチが没落したせいか、職人さんも徐々に領地から離れてしまっていてですね……少し、量が少なくなって。昔は、領民皆に配れるくらい、たくさん」


 そこかぁ……地雷は隣にあったかぁ……しまったあぁあああまぁた踏んじまっただぁああああ!


「メタリィ……」

「ベスティ……そんな目で見ないで、私も、少し傷つくわ……」

「でも表情は変わってないように見えるわ」


 ……はい、ずっと無表情モードは保っていますけど。

 いやホント。悪いの全体的に私ですけど。なんなの? 私が発言すると大抵なんかしらの地雷踏むんだけど。口を開くなって運命さん? うーん反論できない気がする。


「で、でも職人さんが作るものなんだから、よほど美味しいのよね!」

「あ、はい。ベスティアーゼさんにはあまり馴染みがないかもしれませんけど、アスカータの黒パンといえば、下手な白パンより美味しいって。知ってる方は大絶賛なんですよ」


 べ、ベスティありがとう……しかし。そんな黒パンが美味しいところがあったんだ。へぇ。普通に食べて見たいな。ほら、雑穀米とか食べたくならない? 急に。あんな感じ。


「じゃあ、今度実家に手紙を送って、持ってきてもらいましょうか」

「え……遠くない? 痛むってことはないだろうけど」

「あぁ、そうではなくて。お抱えの職人さんはまだいるので、ここで焼いてもらおうかと!」

「え、それは流石に迷惑じゃない?」


 あっ、はい。そうですか……やっぱり貴族なのは貴族なのね。


会話とマインスイーパー、実際同義。

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