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力のゴリラ妹と技のゴリラ私の悪役令嬢物語  作者: 鍵っ子
二章:技のゴリラ初等期
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初心者でもプロを潰せるたった一つの冴えたやり方

 まずファラリスを相手にする上で、考えなくちゃいけない事。それは絶対に彼女のペースに乗せちゃダメ、という事実。絶対に負けるという事実。はは、泣きてえ。


「……そうとは限らないのでは? お嬢様は同年代の方々と比べても頭一つ抜けているマクレス統括はおっしゃっていました。旦那様からの豊かな教育と、お嬢様自身の素質が上手く噛み合った賜物だと」

「いや、ほぼ全部お父様のお陰だと思うけど……まぁ、私がそこそこ賢しいのは間違いではない、とは思うわよ?」


 まぁ、正直な話、滅多な相手じゃクイズ勝負くらいだったら圧倒するくらいには知識を詰め込ませてもらえた。ホント、大公の令嬢って恵まれてる。


「その通りです。私も、お嬢様の理知は素晴らしいものである、と思っています」

「いやー、褒めてくれてありがとうね……でも彼女を、見てるとねぇ……」


 なんていうか、恐ろしい。まじで恐怖っていうか、ビビるって言った方が正しいけど。教室での、迫真の大演説とか、もう気圧されるしかなかったっていうか。


「私は別に少し頭がいいだけで、なんか世界を変えるくらいの才能があるって訳じゃないわ。けど……なんとなく、彼女は違うと思ったのよ」

「違う、ですか。私には、そうは……」

「……今になって思うのだけど、彼女には私の良く知る人と同じ感覚を覚えたわ」


 誰だと思う、ロイくん。いや、言っておいてなんだけど、分からんと思う。これで私もどうしてそう思ったんだろうなって。今さっき、自分、おかしくなったかなと思ったし。


「……似ている、ですか? お嬢様と面識がある方で……あのような人物は」

「分かるかしら?」

「……この学校に入る前、私が見た時のベスティアーゼ様は活気にあふれていましたがしかし、あれ程迫力はないですし」


 うん。ベスティがあんなんだったら泣くわ。号泣して崩れ落ちて砕け散って灰になって川に撒かれて海に流れていって海に溶けて私は永遠に……落ち着け、冷静になれ。


「まぁそれは無いわよ。まぁ、分からなくても無理ないから言っちゃうと……シュレクやお母様が一番近いと思ったわ」

「え?」


 うん。お前頭おかしい奴やなって思われても仕方ないよこの結論。金とダイヤとウランは鉱物だから親戚だね! とか言い出したようなもんだよ。私でもお前は正気か、と言い出すような素っ頓狂な発言だと思う。


「……あの、お嬢様、お言葉ですが、その、えっと」

「いいえ、言わなくていいわロイ。言いたいことは分かるから。けどね、ちゃんと理由があるのよ。私なりの、だけど」

「それは?」

「……シュレクとお母様、ファラリスに、私は同じ感情を覚えたわ」


 私より有能な人は幾らでもいる。お父様もロイくんもマクレス爺もアレウスくんも、確かに私より有能だと思うけど……でも、私がある感情を覚えたのは、多分二人だけだ。


「その才能。圧倒的な才覚に畏怖を覚えたのよ。それを覚えたのは多分後にも先にもあの二人だけだわ」


 いや、ビビることは多い私であれど。多分圧倒的な力の差に恐怖を覚えたのはシュレクとお母様だけなんだよね。他は『すごいお』って感情の方が強いし。


「……ファラリス嬢にも、同じ感情を覚えたと?」

「そうね。授業での彼女は、正に圧倒的だと思ったわよ」


 私へ挑むため、と初めて会った時に言っていたが、それが本当だとすれば、その執念だけであれだけの知識を、しかも自力で。


「大公の娘であればこそ、私は豊かな教育を受けられる……ロイ、貴方はそう言ったわ。つまり普通の貴族では、私ほどの教育は受けられない……」

「……知識面においては、恐らくそうかと思います」

「つまり、そんなの関係ないくらい彼女は努力をしたのよ」


 継続する。諦めない。それも才覚だ。そして、それだけではなく、その労力に見合う成果を出せるかも、当然才覚だ。で彼女は当然成果を出したわけで。


「自力だけで、恵まれていた私に追いつき、追い抜いたかもしれない……それは怖いと思って当然だとすら、私は思うわ」

「……そう言われてみれば。確かにそう思わないこともないですが」

「でしょ?」


 ロイくんにはまだ話してないけど、そんな相手と今回の出来事を、どうにかこう、程よい感じに終わらせないといけないと考えたら。もう……もう!


「そして、シュレクもお母様も、そう思うだけの力があった。私以上の才覚があって、まず負けている、という印象を持たざると得ない。彼女とおんなじね」

「だから……シュレク様や奥様に敵わないのと同じように、彼女には敵わないと考えている、と?」

「そうね……正直なところを言うのであれば」


 多分真っ向勝負じゃ蹴散らされるし、搦め手でも看破されるだろうし(シュレクとのオセロもどきでの体験談)。うん。どないせいって話よ。


「……お嬢様にしては、いささか弱気に過ぎるかと思いますが」

「弱気にならない人間なんていないわ……」


 むしろ私なんて弱気バリバリマンだし。いつだって外弁慶で内面ビビりっぱなしだし。何? 外弁慶はそう言う意味じゃないって? わかってるよ。


「それで、お嬢様はどうなされたいのですか」

「まず、敵わないと言う前提を分かって欲しかった。その上で、私の策を説明したいのよ」


 ふふ、だが、一切の手がない訳ではない、


「策、ですか?」

「えぇ。真っ向勝負も、下手な搦め手も通じないなら……どうすればいいのか」


 昔っから、決まってるんだよ。人間ってのは、そう言う時何をするのか!


「あの子に実力を出されたら詰むわ。少々品がないやり方にはなるけど、徹底的に……残念ながら、あの子の舞台には上ってあげられない」


 ならそもそも行動させなきゃええねん。ハメ技だ!


金とダイヤとウランの共通点:硬い・鉱物 ぐらい。

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