条件は互角の悪役ロングと報復ドリル
式は、寮とは反対方向にある、デッカイ講堂みたいな場所で行われるようで、今、前列の私の後ろには、少なくとも五〇人位の新入生が集まってきている。
「……貴族の子、結構少ないわね」
「えぇ。この学校はコネクション作りの為だけではなく、真に学を知る為の場所でもありますので。そう言った機会を真に欲する、平民の子らが多いのです」
その分、貴族の子息は減る、と。試験は兎も角、書類選考は存在しないらしいが、貴族の子息の方はその限りではないのかもしれない。逆に試験さえ受かれば、一般ピープルは書類選考にはかからず入学確定。
「そして何方にも引っかからず入れる、私、か」
「お嬢様は既にある程度知識を学ばれている上に、大公という確かな血筋。書類選考で落とすわけには行きますまい」
と言っているロイ君も若干苦笑い。私の護衛してるせいか、若干私の価値観をラーニングしている節があるのよね、ロイ君。まぁでも、そういう人に傍にいて貰えるのはありがたいから、ますます手放せなくなってるけど。
「……で、件のあの子は……あ、居た居た」
私とは正反対の前列……私は端っこにいる訳だが、彼女も端っこに居る。なんとも変な偶然もあったもんだが……それよりも、アレは。
「あれが向こうの従者……ねぇ、ロイ。私の見間違いでないのなら」
「……仰る通り。私と同じ武官崩れです」
だよねぇ。他の貴族の従者様はなんというか、バトラー、って感じが強いのだが、その中で二人だけ、ロイ君とファラリスの従者だけが、帯剣しているのだ。
「私に対抗して連れてきた、とか?」
「恐らくは。先日は、露骨に私を挑発し、お嬢様から引き離すような動きを見せましたので」
「全く、何から何まで、此方の事を調べて来てる、か」
一発で見抜いた辺り、ロイ君の事も調べてきて、で彼みたいなのを連れているのか。抜け目が無いと言うか。まぁ同じ武官じゃなけりゃ食堂の時みたく、ロイ君を私から引きはがすなんて無理だろうけど。
「……しかし」
黒髪、いやなんていうか、もう漆黒レベルの黒に、アレ……赤目だよな。アメリアにも負けないルビーレッド。で、えげつない程の美形か……うーむ。なんだろう。
「……気になりますか、あの従者」
「えぇ。どの程度出来るのか。ロイという頼れる従者がいる以上、比べたくなってしまう。先日は、言葉だけ交わしたのでしょう? まだ実力はハッキリしてないものね」
「それは……えぇ、未知数です」
とか言ってますが、大嘘です。いやまるっきり嘘っていう訳でも無いけど。半分くらい本当だけど、もう半分は……あの、そのですね……かっこつけ主人公っぽいなって。思ってしまってですね。自分の考える最強のダークヒーロー、みたいな?
「しかしあの黒さ、逆に目立っていますな、本当に」
「んぐっ……そ、そうね」
「お嬢様? どうなされました?」
「あ、いいえ。なんでもないわ。えぇ、本当に」
心を見抜かれたのかな、とかビビったわけではないのです。そう、ロイ君の言う通り。上から下まで真っ黒なのである。あと縁とか金の部分もある。いや、普通黒一色ってことはないやん。白とか入れるだろう? 最低限さ。
「赤い瞳が目立つわね、その分」
「それを狙ってやっていると? だとすれば、随分と自分自身へ意識を向けている事で」
でもってワンポイントみたいなあの赤い瞳。もう露骨よね。こう、想像じゃなければありえんとか思ってたけど……恐るべし乙女ゲーム。あんな人まで出るんだ。
「まぁ、似合ってはいるけれど、顔の影響が大きいという気がするわね」
「確かに……顔が整っていなければ、些か不自然に見えるやもしれませんね」
変にカッコつけてるってわけでは無いんだろうけど。でもそう見えちゃう。まぁここまでキマってると、邪推したくなるっていうのが人情だけど……
「それで? 彼の評価は?」
「……昨日は聊か不覚を取りましたが、最早遅れを取るつもりはありません。えぇ、とんでもない無礼者であったと分かれば即座に切り捨ててごらんに淹れましょう」
「いや、そこまでさせるつもりはないけど……どうしたの? 私から引き離された時何かあったの?」
「それは……いいえ、その様な事はありません。申し訳ありません、逸りすぎました」
ロイ君も、本気でやりあうつもりはない。ま、ただの軽口だ。あ、ファラリスがこっち見て……目があったか。とは言え無反応、か。まぁ昨日自分で互いに不干渉って決めたんだけどさ。
「……で、あ」
「メタリィ!」
ベスティだ。席は……え? 私の隣? 何だ、奇遇だね。
「隣同士ね」
「まぁ、式の間の短い時間だけどね」
「もう、そんな意地悪言わないでよ……」
「ふふ、冗談よ。私も隣の席で嬉しいわ。やっぱり、知ってる人と一緒っていうのは気が楽になるものだからね」
私だって女の子だし。こういう式の場で友達と一緒っていうのは嬉しいよね。
「さ、そろそろ始まるわね。生徒も揃っているし」
「えっと、お昼の鐘がなった後……だったかしら? 式が始まるのって」
「そう」
懐中時計がまだ広まってないらしく、デカイ時計は……まぁ一応あるんだが。それを確認するっていう習慣もないのに、どうやって集合時間を定めるのかとは思ったが。
「工夫したものね……」
「工夫? 何を?」
「あぁ、うん。なんでもないわよ、独り言だから」
現代との比較にはなってしまうが、この時代で驚くことは意外に多い。やっぱり、自分だけは価値観が違うせいか、サプライズが多いこと多いこと。
「あ……」
チラチラ周りを見てたら、見つけた。あいつ、こことは別の席に座ってるんだ。まぁ王族だし、私よりさらに特別扱いは当然か。
おうおう、手を振るんじゃないよ、シュレク。
同じ悪役令嬢でも、ファラリスは知恵極振り、メタリアはギャグ極振り。




