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力のゴリラ妹と技のゴリラ私の悪役令嬢物語  作者: 鍵っ子
二章:技のゴリラ初等期
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波乱の小学校デビュー、秒読み

「お嬢様、具合の方は。こちら、水です」


 あ、ロイ君。水ありがとう……んぐっ、プハー! 生き返る。考え込んだ後の水分はホント体に染みわたるでぇ……もう一杯!


「ありがとう。何とか大丈夫よ……ホント、疲れてたのね。気が付かなかったわ」


 大嘘です。はい。疲れてなんかいません。唯の精神的ショックですわ。


「これに慣れていかないと行けないのはちょっと大変だけど、頑張らないと。」

「ご無理をなさらぬようにお気を付けを。お一人の体ではないのですから」


 そうね。家族も心配してくれてるしね。こんな疲れても居ないのに発狂する貧弱謎生命体の事を。ホント、ありがたいというか……あ、そうだ。どうせなら忘れないうちにやって置こう。


「急に家族から離れるのはダメね……本当に。手紙でも書こうかしら」

「お二方への、ですか?」

「えぇ。家族の励ましのメッセージが欲しい所よ。そうすれば少しは気持ちも楽になる気がするわ。やっぱり、一人だと寂しいのよ、どうしてもね」


 駄々っ子みたいな事言ってんね。でもそんなもんだよ。うん。駄々っ子ってのは自分の嫌な事をストレートに嫌って言える凄い子だと思う。普通は遠慮して言えんよ。


「気分転換もしたいし、ペンと紙……紙は備え付けてある?」

「お待ちください……えっと……あ、ありました。数は少ないですが」


 はえぇ、あるんだ。マジで至れり尽くせりって奴だな……悪役令嬢の長所って、そのままだと破滅が約束されてるけど、破滅の時までは最高の生活が出来る事よね。


「ふぅ……ベッドを汚すわけには行かないわ、体を、起こさないと」

「いいえ、ご無理をなさってはいけません、少々お待ちを」


 何? って待て、待てロイ君、何をしようとしてんの? なんで机を動かしてるの。なんで机に剣を向けてるの。あの、すいません、いやな予感が……


「シィッ!」

「いやぁあああああ!?」


 い、いった! 机のあの……足を入れるところの壁? とかその辺りが切り裂かれてエライ風通しがよくなったなあああ!?


「よい、しょ……あとは、これを、こう」

「あ、あの、ね? ロイ? どうしたの? 正気? あの、これ一応寮の備品よ? 本当に大丈夫?」

「確かに宜しく無い事ではありますが、それでも御身に無理をさせる訳には参りませんので。後ほど、改めて謝罪と経緯の説明、弁償等を行いたいと考えてはいます」


 あ、そうですか……じゃなくて! ダメやろ冷静に考えて! 備品壊すのダメ絶対!


「あの、ね。やっぱり、モノを壊すのは、その、ね?」

「さ、これならベッドの上で手紙も書けるかと。ペンと紙です」

「いや聞いて?」


 ロイ君は常識枠の筈でしょ? 私が無茶するのを諫める役目でしょロイ君は。君が常識を外れた魔道歩み始めたら終わりよホント。正気に戻って?


「お嬢様、勘違いをしてはいけません。私はこの寮の管理人でも無ければ、学び舎の関係者でもない。私は、大公家に仕え、お嬢様の身の回りの事について任された従者。お嬢様の為で有れば、多少の迷惑など顧みるに値しない事、ご理解ください」


 あ、いや……あー、その。間違ってる……とは言い切れないのがこう……確かにこの時代なら可笑しいとは言い切れないのよな! ホント!


「私は寮長殿へ話を付けてまいりますので、これで」

「あっはい」


 いってらっしゃい……うーむ。本当に丁度いい高さに……何か下に挟んでんのかな?


「そんな事言ってる場合じゃないけど……あぁ何か、自覚しろオラッ、って分からされた気がする。ついさっきのと今のと……はぁ~」


 さっきのファラリスとの衝突への懸念だって、別に子供同士の衝突に親が切れる、とかではない。それを口実に大きな権力を持つ大公に傷を付けるチャンスが訪れた……的なえげつない理由で始まるかもしれない、と言う事。


()()()()()()()()()()()()()()()()……改めて、意識する必要があるかしら」


 ツェルバやエィリアがどっちの派閥に着いてるのかはさっぱりだ。だが王家に最も近い貴族、大公と言う立場は、何時だって完璧に安定してるって訳じゃない。いや、寧ろ権力を握る立場故に、常に脅かされているのかもしれない。


「大公を傀儡に出来れば、その貴族の力は大きく羽ばたくからね……」


 ツェルバがそんな野心を持ってたら、危ない。王家と結んでるかと言って、それをひっくり返すウルトラCが無いとは言い切れないのだ。


「私がやるべきは……今回の出来事を子供の喧嘩の範囲に収める事。まかり間違っても大事にして、大人が出張る理由を作らない事……」


 あー……チクショウ。本当に胃が痛くなってくる……癒しが欲しい。実家に帰りたい。カッとして勢いで受けて立つとか言ったの全力で後悔してます……言わなきゃよかった……


「なんか、マジで上京したてみたいな心細さ……忘れるとかねーよ、二人への手紙。ホント唯一の癒しになるよコレ」


 現実逃避に書こう。ガンガン書こう。愚痴とか、まぁ、その辺りは……ちょっとだけ書こう。慰めて貰おう。


「……『拝啓、アメリア様、アレウス様。メタリアです。手紙が着く頃はもう授業が始まっている頃合いかと思われますが』……」


 原作のメタリアに言いたい。お前もこれくらい苦労してみろ、と。




 どうにもリボンが決まらぬ気がする……しっかし、ホントこういう所は現代基準と言うか、乙女ゲーの都合なのか。制服って、ねぇ。


「失礼いたします、お嬢様そろそろ式が始まるかと……おぉ、制服、実にお似合いでございますね」

「えぇ。ただ、制服そのままでは無い様なのが気になるけれど」

「この学校の制服にはそれを縫い付けるのが、貴族の子息の暗黙の了解ですから」


 どういう事だよ。背景がちょいリアルなだけに、こういう萌え意識の高いご都合設定はビビるんだよホント。まぁ、でもロングスカートだったりする所はこの時代に合わせてるけど。あれよね、『制服』っていう概念を中世に落とし込んだら、って感じのデザインよね。


「ま、でも……大公家の紋章、いいじゃない」


 そして……腕に輝く、大公家の家紋。うん、勇気づけられる気がする。

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