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力のゴリラ妹と技のゴリラ私の悪役令嬢物語  作者: 鍵っ子
一章:技のゴリラ幼少期
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中身のゴリラが見え始めていく頃

「それらしい人物は見つからなかったが、万が一ということもある。しばらくは気をつけるようにしてくれ」

「はい、わかりました……」


 ……うむ。なんとか一件落着? もしくはひと段落? まで持ってこれたか。いやぁ危なかった。まぁ、本当は大公様が捕まるわけないんだけどさ、恥とかさ、外聞とかさ、あるやん? そんなん聞いたら、おかんの堪忍袋ブチ切れするやん?


「滅びるやん……」

「あの、メタリアさま、とびらにみみをあててなにを……」

「いろいろあるのよ」


 具体的には我が父と君の母上様との関係とか、大公家の恥と外聞と、致命的な名誉の失墜の可能性とかね。うん。回避できて本当に良かった。おとんとおかんのガチ喧嘩……あぁいや、一方的な蹂躙の間違いだな。


「でも、びっくりしました。たいこうさまもいっしょにいらっしゃっていたなんて」

「おかしがたべたいといったら、わざわざおいそがしいなか、ひまをぬってついてきてくださったの。おとうさまは、ほんとうにおやさしいから」

「そうだったんですか」


 まさかそれがこんな事態に発展するとか誰が想像できるかって話だよ。アホか。全部私が原因だけどもさ。嘘って、全くもっていいことないね。うん。

 あと、アメリアちゃんはやっぱり父親の顔、知らなかったのか。まあ、そうだろうね。


「さ、いまのうちにおかしでもえらびましょうか。あなたのおかあさまと、おとうさまのはなし、けっこうかかりそうですから。おすすめ、おしえてもらえません?」

「あ、それなら、こちらのケーキなんかいかがでしょうか」

「いいわね。それと、あととなりのクッキーも……」


 あー、一難去って、一安心ってところだなぁ……さて。


「メタリア、買うものは決まったかい?」

「あ、はい。おとうさま。こちら、あとこちらを」

「どれどれ……うん。美味しそうだね……小さな店員さん、こちらでお願いできるかな」

「わかりました」


 お父様、案外普通に対応できてるなぁ。見ただけで動揺して明らかに不審者じみた動きするのかとか思ってたが、案外しっかり……あ、いやダメだ、足震えてる。表情を必死に取り繕ってるぶん、下半身に全部動揺が出てるわ。


「おかあさん!」

「えぇ、ショコラケーキと、クッキーね。作り終わったら、お届けさせていただきます」

「頼むよ。とびっきりに仕上げてくれ」


 かっこいいセリフ言ってるところ悪いけど、おとん、背中の汗凄まじいですよ……足だけじゃおさまってませんよ。子供と母親の揃った姿見て余計に弱り切ってるじゃないですか。外見取り繕うだけすごいとは思うけど。


「じゃあそろそろ帰ろうか。メタリア」

「はい。おとうさま。おかしやさん、すてきなケーキ、たのしみにしていますわ」




「ラッキーだった、本当に……」


 あー、精神的な疲れがベッドで癒される……生き返る。

 母子の背格好に情報も得られて会話も出来た。少なくとも子供の頃からあの純粋な性格だったと分かったのはデカイ。贈り物に苦い顔をされることはない、と思う。


「主人公の近況もある程度、分かった」


 アメリアは自分のお父様、私のおとんを知らなかったということも確認できた。少なくとも、今日までは。ゲーム本編では、もしかしたら墓場で出会うまで、大公の顔すら知らなかったのじゃないだろうか。


「でも、そうなると私は本来の時系列をふっつうに歪めてしまったことになるが……ううむ、そこがやはり気になってしまうが……」


 だが命にゃ代えられぬ、ということで割り切るしかない。それに、今回のことで気になったことは別にあるんだ。


「アメリア母の死因は、疲労による衰弱死……だってのに、あのメトランさんの様子は」


 しっかりとした足取り。話し方もハキハキしてた。とても、弱っているようには見えない。あそこから一気に死ぬとか、よほどの無茶をしなきゃ無理だ。


「けど店自体のレイアウトは一発で全部見えたし、品揃えを見ても、そこまで混むタイプの店でもない。貴族向けの、余裕のある菓子屋……()()()()()()()()()()()()


 本編じゃそうではなかった、とは思えない。私が余計なこと仕出かさなきゃ、基本的にこの世界は、私の知っている通りに動く。アメリアがシナリオ通りに来ることが確定したことからも、それはまあ、確実だと思う。


「じゃあなんでだ……なんで、メトランさんはお亡くなりに……」


 ……うーむ。

「ウヌヌヌヌヌ……オンキリキリ、ウンサラダ軍艦巻き、マグロ握り……」


 グヌムムム……あーもう!


「ダメダメだ! 分からん上になんでか知らんが腹ばかり減るってもんだ! そも私は脳みそが貧弱だって、前世から数えてよく分かってただろうによぉ!」

「お嬢様、あまりにも見苦し過ぎますぞ……」


 ……フゥム。うむうむ。なんだ。ステイ、マイブレイン、まずは状況の確認だ。


「いつから?」

「『ウンサラダグンカンマキ』なる謎の呪文を唱え始めたあたり、ですな」

「恥じ入る部分ほぼ全部じゃねーか爺のバカ〜!」


 クソッタレ、乙女の恥ずかしい秘密を〜! 少しは気を使ってくれ爺! まあじっさまに乙女の心理解しろったって無理だろうけどさぁ!

 けど、爺がいれば、なんとかなるかもしれない。謎解きぐらいなら。


「ぐぬぬ……だ、だが転んでもただでは起きぬ。爺! 協力しろ!」

「それは構いませぬが……何をするのです?」

「フハハハハ! ただのストーカー行為だ!」

「お嬢様、今医者をお呼びいたしますので」

「正気だよ!」


取り繕いには限度があります。用法用量を守って、正しく使いましょう。

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