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力のゴリラ妹と技のゴリラ私の悪役令嬢物語  作者: 鍵っ子
一章:技のゴリラ幼少期
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悪役令嬢奥義、我流・異世界勘違い!

 状況を説明しよう。

 私の後ろ、店の方向から迫ってくるのはアメリアのパパ、私のおとん。不貞メンタルボロクソ親父。アメリアと私が楽しくお話ししているだけでもまたぞろバグりかねない。


「おかしいな、店の外で待っていると思ったんだが……」

「あの、メタリアさま、あのかたは……」

「あーちょっと待ってね今すごい勢いでブレインフル回転させてるからっていうかタイミング最悪なんだよ空気読む力もないのかあの親父まあ店にいたから読む空気もないってかやかましいわ!」

「メタリアさま!?」


 うん。全力で頭回せ。今はちょっとアメリアちゃんの困惑を解す暇もねぇ。バグったおとんと主人公とか、私一人で捌ける範囲を遥か超えてるから、難易度バリバリのルナティックだから。私プロゲーマーと違うから。


「あの、あのね、アメリア、あの、あのひとはね」

「は、はい」

「わたしを……さがしてる」

「はい」

「変態なの!」


 大公閣下四十代、言われなき変態指定。大変申し訳なく思いますが、しかしながらこれが適切と手持ちの資料を参照し判断いたしましたので、悪しからず……。


「へ、へんたい?」

「わ、わたしをつかまえて、ひどいことをしようとしてるの!」

「えっ、えぇぇぇぇっ!? ひどいことですか!? あの、ひどいことって、ど、どんなことを……」

「くちにするにもはばかられるような、すさまじいことよ」

「す、すさまじいこと……! め、メタリアさま、いそいでかくれないと!」

「そうね、いそいでかくれましょう」


 すまぬおとん。口にする事も憚られるような極悪犯に仕立ててしまった。とはいえ私の胃と精神の安寧の為に、犠牲になってくれ……あと健気なアメリアちゃんの為にも。


「こちらです……こっちのみちはほそくて、おとなのひとはとおりぬけにくいって、ははがいってました」

「な、なるほど」


 メトランさん娘に何教えてんの。まあ可愛い娘だし、誘拐されるかもしれないって思ったんだろうけどさ、にしたって気をつけろ、とか、危ない人についていくな、とかなくてあんた、そんな具体的な対策を授けんでもさあ……。


「あの、それよりアメリアさん、うで、いたい」

「たいこうのごれいじょうさまが、すさまじいといいきるほどのことをするへんたいですから、できるだけいそがねば……」


 雄々しすぎない? やっぱ主人公やん、最近流行りのホストタイプなイケメン主人公なんて比べ物にならないくらい勇気あるやんね。告白とかこの子からするんだろうなぁ。私とおんなじくらいの背丈なのに、背中がハルク・ホーガンくらい頼もしい。


「あとは、こちらをまわれば……よし、おみせのうらについた」

「おぉ……」


 成る程、ただ逃げるだけじゃ無く、頼れる大人、つまりアメリアのおかんの居る自分の家まで撤退する。賢い。私じゃ思いつかなかったぜ……つまり頭の出来は私より上か。泣きそうだぞ?


「なかのははに、じじょうをせつめいしてきます。すこしおまちください」

「わ、わかったわ。おねがいね」


 凄い情けない気持ちになる。なんなん、こんな幼女にかっこよくエスコートされてさ。恥ずかしくないのか二十代、いやさ前世今生あわせりゃアラサー女。かっこつけて見せろよ、大人だろ。いやボディは幼児だけどさ。とはいえどうしようもないんで、後はメトランさんに任せ……


「たらマズいっ! いやその変質者は偽りの変質者なんだよ、ガチで捕まっちまったらヤヴァイ! だから大公様なんだって!」


 ど、どうすればいいんだ。このままじゃメトランさんの奮闘如何で、大公家そのものが終わりかねない。本編が始まる前に家が終わるとか笑い話にもならねぇ。


「落ち着け、落ち着けよ……考えろ、間に合わなかったら人生と話が終わる……」


 う、嘘ついちゃいけないってよく分かったよ、自分を助ける為についたのに、結果的に自分の首を徹底的に締めにかかってるんだからなぁ……


「ま、まずおとんをどうにかせんと……」


 店の外に立ったままはまずい、どうにかそっから退けないと。まずは事情を説明してから……い、いや待てよ? そうか、おとんは変態扱いされてる事を知らない。


「なら、行ける。多分、丸く収まる気がする!」


問題は時間だ。奥さんが娘さんの話を聞いて外へ突っ込むまでの僅かな時間。急がねばならん。ダッシュだ。


「ああもう、確かに子供なら余裕な広さだが、それは歩いた場合だな! 走ると案外、足元のゴミとか気になる!」


結構お高いドレスだし、変に汚せねーよ。あーもう、お貴族様ってのも大変だな! 私お貴族様だけど!


「よし出た、おとんは……お、ラッキ」


 店からすこし路地に近寄ってるな。変態(架空)がいたと思われる場所からは離れてるし。大丈夫。よーし。


「おほん……おとうさま〜! メタリアはここですわ〜!」

「おぉ、メタリア! そんな所にいたのか、見つからなくて心配に」

「おとうさま、さっき、わたしのことをじっとみてる、あやしいおとこをみたのです」

「……何?」


 おぉ。一瞬で目が変わった。さっきまでの精神不安定おじさんとは全然ちゃう。敏腕大公の顔だ。ずっとこれならいいんだけどなぁ……


「そいつはどこへ行ったんだい」

「あの、えっと、そちらのみちへあるいていったような……」

「そうか。よく覚えていたね。でも危ないから、そろそろ店の中に戻って、お菓子を選んで待っていてね」

「はい」


 おとん……いや、お父様に手を引かれ、店の前まで戻る。その時ちょうど店の中から出て来たのは、メトランさん。かなり視線が鋭い。間に合ったか。


「ヴェリオ……変質者が」

「メタリアが見ていた。まだ近くにいるかもしれない。私が周辺を見てくるから、この子を頼む」

「分かったわ。気をつけて」

「悪漢ごときに遅れはとらんさ。信じてくれ」


 軽く会話を交わし、お父様は足早に私が指差した方向に歩いていく。

 ……ククク、成功だ。存在しない犯人に全てを擦りつける。ヒーロー役はお父様。まさかそのヒーロー役が、その探している相手だとは思わないだろう。いやその探している人も偽の変質者なんだけど。

 これぞ『異世界勘違い』……ごくごく限られた転生者のみが使える奥の手よ。何、主人公に対して勘違いするのがセオリー? 知らんな。


クッソカッコつけてるけど、自分の払ったツケを速攻で自分で払っているだけという話。

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― 新着の感想 ―
[一言] うわぁ、主人公さんはちょっとバカかも(笑)
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