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力のゴリラ妹と技のゴリラ私の悪役令嬢物語  作者: 鍵っ子
二章:技のゴリラ初等期
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限界オタクメタリア

 さて、出発する直前に最後に会いに行くなら……やっぱり、この人じゃないかな、という事で。


「お母さま、メタリアです……入ってもよろしいでしょうか?」

『どうぞ』


 という事で、私が尊敬し、そして恐れ、大好きでもある人。お母様。最近は二人きりで話す事があんまり無かった気がするので。個人的に励まして貰いたかった。うん、いつも通りの整頓された部屋だ、お母様に、お変わりはないらしい。まぁ、変わってたら気づくけど。一緒に住んでるし。


「どうかしたのか……と、聞くのは愚問ですね。学び舎に行く年になりましたか、貴女も」

「はい……しばらく会えそうにないので」

「話に来た、と」


 窓際で椅子に腰掛けながら……えっ、何。なんか、剣を……細いな。なんか、ブロードソードだとかの親戚じゃないけど、レイピアほど華奢でもない、サーベルか? 研いでるんだけど。


「……あの、どしたんですか? その、そちらの、えっと」

「サーベル、ですか」

「はい。ガッツリ研いでらっしゃるから何事かなと、どちらへ討ち入りかな、と」


 いや、その辺り連想しちゃうわ。お母様が武闘派っていうのも相まって、余計にさ。


「そのような事はいたしません……ただ、少し心を落ち着けていただけです」


 け、剣を研いで心を落ち着けるぅ!? ご、豪快ですわねお母様!? いや、武人ってそういうものだけど。やっぱり自分の一番得意な物って精神的支柱になるんですね。


「……メタリア、こちらへ」

「へ? あ、はい。失礼します……?」

「そう、近寄って……あぁ、サーベルが邪魔でしたね。はい、そこで大丈夫です」


 えっと、なんなんだろうか、一体。っていうか壁に立てかけられたサーベルピッカピカやなぁ!? あんなんで首を刎ねられたら、っていうか刎ねられた事に気がつかんのでは無いか疑惑まである。


「ふ、最近は色々な事があって」

「わぷ」

「背丈は変わらないというのに、顔つきは随分と、大人びたと言いますか……我が子の成長は嬉しくもあり、いささか寂しくもあり。複雑ですね、親というものは」


 あ、あの。お母様。頭撫でるのは兎も角、そんなマジマジと目を見られると、ですね。


「メタリア、貴女は、自分の事を自覚していますか?」

「え? 私の事ですか? そりゃあまぁ、落ち着きはないし可愛げもなけりゃお淑やかさもまぁ足りないとは思いますけれど」

「まち、待ちなさいそういう事を言えと言っているわけでは……もう、違います!」


 ぴえっ、怒らないでお母様。私怒られただけで生命を削られますから。許して。って言うかなんで怒られてるんだろう、私。


「怒ってません……いいですか、活発で、美麗で、大人しくするだけではない。それは短所でもありながら、長所でもあります。貶すだけではなく、誇る事もしなさい……そうではなくて、ですね」


 ……なんだろう。茶化しちゃいかんなこれ。結構お母様、真剣だ。


「最近の色々な事件は、他の家との間で噂にもなっています。どんな問題であれ、決して逃げ出さない、私の血を強く受け継いだ自慢の娘。そう評される事も多いです。ですが」


 ですが?


「……貴族の娘らしさはカケラもない、品位に欠ける、じゃじゃ馬。その様に、心ない言葉を言ってくる者もいる。会いもせずに噂だけで、本人ではなく、私に。聞く必要などない愚かな意見です」


 うーんグウの音も出ない正論で草生える。実際そうだし。私が自分を貴族の娘っ子の鑑だなんぞと抜かしたらぶん殴られても文句は言えん。


「問題は、貴女に直接来る者。学び舎では、その偏見に満ちた意見が貴女に降り掛かるのです。肯定してくれる者ばかりではありません……」


 なんと、あのお母様が……涙目に。し、心配してくれてるのか……大分ハチャメチャで大公の品位の下落の原因かもしれない私の事を。いや、その、全部自業自得だと言うのに……も、申し訳ねぇ。尻拭いさせてしまって非常に申し訳ない……!


「そ、その、大丈夫ですって! ね!」

「貴女に悪い噂が立っていないなら、構いません。思う存分、友誼を結び、学びたい事を学ぶのも良いでしょう。けど今は、明らかに貴女に悪意が向いて来ているこの状況で、私の手の内から離すと言うのは……心配でなりません」

「いや、ですから……あー……」


 母親の気持ちは、分からない、なった事がない。けど、私もアレウスがイジメられてるのを見ていられなかった。こう言う言い方はあれだが、期間も血の繋がりも強い私への心配は、その両方がない私の心配を遥かに上回るだろう。


「……お母様」


 故に! ここは! 力不足だろうけど! 私がどうにかするしかない!


「心配してくださって……本当に、嬉しいです。お母様」

「メタリア……」

「でも、だからこそ! 私を信じて欲しいです! 私でも、こんな私でも心配してくれるような本当に優しくて、強くて、かっこいいお母様の娘なんですよ。そう簡単に負けたりしません!」


 うん。この場合は、理論的に持ってくのは無理だ。私にそんな器用な真似はできない。やったらむしろ説得力下がるまである。情でゴリ押すしかないのだ。


「ですが」

「お母様に誇ってもらえる娘であるために、必ず私は無事で帰って来ます。絶対、です」


 まぁ、こう言う言い方はしてるが、言うてもそこまでダメージは負わないと思ってる。だってまぁ、色々職場とかでも嫌味とか言われ慣れてますし? 言うて直接手段で来なけりゃそう簡単には折れませんわ。


「……そう言う言い方は、ズルいですよ。メタリア」

「ここだけはお母様に似ず、賢しいので」

「フゥ、そうですね……では、最後に。思いっきり抱きしめさせてください。貴女を信じるためにも、しっかりと。私の自慢の愛娘をね」


 え、抱きしめるんすかアァァァアアアアアアアァァッフワッフワやぁああああかえりゅううう絶対ここに帰ってクリュウゥゥゥうう!


お母様と二人っきりになると大抵限界オタク。メトラン母様と二人でも限界オタク。

バブみ……?

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