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力のゴリラ妹と技のゴリラ私の悪役令嬢物語  作者: 鍵っ子
一章:技のゴリラ幼少期
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対主人公、言の葉のガトリングをぶっ放せ

 自画自賛になるが、私はそこそこ美人だと思っている。

 あの完璧お母様から受け継いだ美麗系の顔は伊達じゃない。大した化粧なんぞ不要、いやむしろ化粧が邪魔になるまである。

だ、だがこの子はやはり、格が違う……


「……あの、とりみだして、ごめんなさい」

「あ、うん、だいじょうぶよ」


 綺麗と可愛いが同居するって、なんだろう。方向性としては正反対の要素が顔に詰め込まれてるんだよ。全体的にはスッキリとした美人さん系の筈なのに、個々のパーツは可愛い系のモノばかりで……しかしちぐはぐという印象はない。配置が完璧すぎるのだ。


「アメリア、ともうします。たすけていただいてありがとうございます、たいこうけごれいじょうさま」

「い、いいえ……どういたしまして。あとメタリアでおねがい、とりはだでしにそう」


 凄え。平民少女とは思えぬほど堂に入った礼。おかんから相当の英才教育受けてるのが態度から分かる。いや、ワンチャン私より礼儀ができている可能性が……


「いえ、そんな! たいこうけごれいじょうさまのおなまえをよぶなんて!」

「ああいいから、だいじょうぶ、わたしがきょかするから、だれにももんくはいわせないから、ね?」

「え、でも」

「ね?」

「あの」

「ね?」

「あ、あわわわ……わ、わかりました、め、メタリアさま」

「よろしい」


 正直将来の主人公相手に大公令嬢さま呼びされるとか死亡フラグで背筋が凍る。っていうか、どうせ我が家に来るんだ。その時大公令嬢様、とか呼ばせてたら、親父よりも母上様がやばい。呼び方一つからも、しっかり教育する方だからね!


「それで、あの、メタリアさま」

「どうしたの、アメリア」

「たすけていただいたおれいがしたいです! わたしじしんにはなにもできませんが、せめてわがやのかしなど、めしあがっていかれませんか? きぞくのみなさまにもこうひょうをいただいていまして」

「ああうんわたしはおんを着せる為にやった訳じゃないからいいのよそんな事それよりもあーたのお話聞かせてくださいませんいいですわそうしましょうそうするしか有り得ませんわー!?」

「メタリアさま!?」


 うん、自分でも正気を失っている自覚はある。アメリアの反応も分かる。だが、だがだがだが! それでもこの子を伴ってあの家に戻るとかいうお釈迦さまも苦笑いするような苦行、誰がするか。やったら私のガラスのハートはチリになる。


「あの、えっと」

「と、ともかく! おはなし、きかせてくださいませんこと?」

「わ、わかりました。わたしのようなむすめのはなしでよろしければ!」


 シャッッッオラァッ! 修羅場回避ぃ! ごめんねようじょあめりあちゃん、いま、いまね、あなたのおかあさまとおとうさまがしゅらばちゅうだからね、まっててね? ね?


「えっと」

「きゅうにいわれても、なにからはなしていいかわからないですわよね。じゃあ、まずは……そうね。あなたのごかぞくのこと、きかせてくださいまし」

「あ、はい。わかりました」


 取り敢えず気を逸らし、流れるように情報蒐集、さすが才能豊かな大公令嬢さまや、主人公にも負けねぇわ。いや本編で完膚なきまでに負けてるけどさ。


「おかあさん……いえ、ははうえは、かしてんをいとなんでいて……さきほどももうしあげましたとおり、きぞくのみなさまがたにもおぼえをよくしていただいております」

「ふむ、おかあさまはどちらでしゅぎょうを?」

「ショコラのほんばでしゅぎょうをした、といっておりました……ごくたまにですが、おうさまのしょくたくにもわたしのいえのかしがつかわれている、と」

「へぇ、となればみせのじまんはとうぜん?」

「はい。ショコラをつかったかしるいになります。ケーキのたぐいは、とくにチカラをいれております。ケーキは、ははのとくいなかしでもありますので」


 王家にも献上されるレベルたぁ驚いた。スゲェな、主人公ちゃんのご実家云々を無視してもご贔屓にしてぇわ。おのれおとんのメンタルが豆腐じゃなければ、もっと早くこの店と出会えていたというに……無念。


「それはそれは……ぜひ、いちどはたべてみたいいっぴんね」

「そうですか! それでしたらぜひわがやにおこしいただいて」

「ああいやまだいいかなぁさっきおひるごはん食ったばっかりだしまだお腹も空いてないしちゃんと味わいたいからお腹減ってから食べたいなぁ!」

「メタリアさま!?」


 しまった、会話を弾ませすぎてエラい方向にエラーかました。行きたくねぇって言ってんのに自分から行く方向に誘導してどうするんだお前の脳みそシェイクになってんのか、ドロドロか。


「と、ともかく! まだおはなしききたいわ。そうね、ほかは……どんなかたがかいにきたか、とかしりたいわね」

「は、はぁ……じゃあ、えっと、まずどなたのおはなしがよろしいでしょうか」

「よくおぼえているかた、びっくりしたかた、といったかんじでどうかしら」

「びっくりしたかた……あ、そういえばローバルトだんしゃくさまがおかしをかいにいらしたときは、とてもおどろいてしまいました」

「いがい、だったとか」

「い、いえ。けっして……そ、その、すこしだけ」


 それにしても。案外喋れている。正直、もう少し恐怖で醜態晒すかもとか、考えていなかった訳じゃない。まあけど、喋ってみてこの子がいい子だって分かったし。いや、自覚できたよ、私がビビりすぎだったって。


「おーい、メタリア」

「あれ、メタリアさま、だれかあなたを」


 クソッタレェェェエ! こんな時にお父様が来なくていいだろうガァあああ!

舌先三寸で主人公ちゃんの機先を制す、令嬢ロール。

なお本人はただヤケクソになってるだけの模様。

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