大人を除けば一番人間が出来ているかもしれない人物
ペーネロト。アメリアに絡む攻略対象の一人。人格的にも能力的にも隙がない、なんとかいうか『出来た人』という評価が一番似合う人。実は、メタリアとは同学年だったりする、唯一の年上キャラ。
「……運命、かしらね」
「まぁ、先日の問題に関わる家の一つですから……何もないと考える方が楽観的に過ぎるかと思います。まぁ、それがどのようなものかは想像もつきませぬが」
でしょうなぁ! っていうかそれが一番嫌なんだよ! 想像も出来ないけど確実になんかあるっていうのは! 一番胃がキリキリするでござ候!
「……お嬢様、ひどい顔色です。まるで死神にでも出会ったかのようです。紅茶でも?」
「もらうわ……あー、おいし。ほっとする」
「さすがにロイ程とはいきませぬが……しかし、それほどに面倒事がお嫌ですか」
「嫌っすよ」
唯の面倒事ならとも知らず、自分の命に関わるような事ですよ。そりゃ一生関わらないで過ごしたいって思ってもしょうがないでしょ。小市民ですし。私。
「……ちなみに、参考までに聞いとくけどどんな風に優秀って言われてんのかしら」
「なんでもそつなく、見事にこなす、年下のあしらい方から、剣術まで。とのことです」
「なるほどねぇ〜〜ヘェ〜〜そうですかぁ〜〜」
間違いないですねぇ! っていうか、あの年上キャラがあの悪ガキの兄貴だったのか! そりゃ人間出来てるわけだ! イジメをするような陰険をあしらうのに慣れてるんだろ!? ったく万が一の物語の彼とは関係のない別人かとも思ったけど、それもないね!
「あー……」
「一番気になるのは、やはりペーネロト殿になりますか。今回の一件を考えれば想像もつきましたが。いや、学校に入学するということになったのは知っていましたが、いやぁ因果としか言いようがありませんな」
「私が入学する学校に、私とトラブル起こした家の子が入る……あれ、でも意外にありそうなのが……後ろ暗い生き方ですなぁ、貴族ってのは」
神話でも良くありましたね、敵対する一族同士が同じ側の元に集うなんて。呉越同舟なんてのもあるし。ただでさえ敵を作ることが多い貴族様だったらいやもうそんなん当たり前ってもんだよ。
「まぁ確かに、宿敵の家同士がそのような事になることはありますが……直前で因縁を作り出してから改めて学び舎に突入するというのは……ないですなぁ」
「あーはいはいトラブル気質で大変申し訳なく存じますわぁ!」
よくある事だと自分を慰めることすら許されないってか! もうちょい容赦ってもんをしてください爺。私のハートは青銅製。意外に頑丈そうだな……
「とはいえ、学び舎に行くというのは、ご学友も増えるという事。ベスティアーゼ様以外にも、この機会にお友達を増やすのも宜しいかと」
「悪い事ばっかりじゃないよってことかい、爺? 慰めてくれるなんて、らしくない」
「いいえ、私はお嬢様の事を思う一家臣なれば、そのような事は」
「よく言うわ、遠慮をしないに定評があるくせに……ありがとね」
ペーネロトの事を詳しく話すとすれば。
まず当然ながらメタリアとの相性は壊滅的で、一方的に苦手としていた。それはメタリア相手なんでもう特筆するべき事でもないのだが……
「まぁ、他のもそんなんばっかりなんだけど……でも、あの、ペーネロトなんだよ」
しかし、彼がそこまでなると言うのは異質、とも言える。彼は賢く、冷静で、しかも当然のように人当たりもいい。メタリアの前に出て来たチョイ役の悪役ともある程度親しくする事だってできていた。
『相手の話をよく聞いて、冷静に。相手が何を望んでいるかを知ることが大切だ』
乙女ゲーの癖にこのペーネロトの人間の出来方は凄まじい。聖人と言えるレベルだ。ニッチな人気なら他のキャラも負けちゃいないが、しかし一般受けはこの男がぶっちぎって高いのだ。
『出自の事を気にするより、ここで何をするか。君は、その基本も出来てない。そうなる様に、君はお姉さんに躾けられてしまっている……その殻を、まずは自分で破りなさい』
そして、アメリアを褒めたり甘やかす攻略対象が多い中、彼女の学園での生活の、一番の問題を諭したりもしていた。ここは初めて学校に通う事になったアメリア、その家での生活を彼の言葉から察する場面でもあるから、余計に印象に残りやすい。
「そんな風に人間との付き合い方で攻略対象の中でもぶっちぎりのペーネロトが……会うなり明らかに怯えていたのが……メタリア」
嫌がっていた、ではなく、怯えていた。彼ですら恐れさせるようなロクデナシがメタリアだった、と言えばそれまでなのだが。しかしながら気になるのは、会うなりという即効性、そして嫌がり方の違い。嫌悪と恐怖の差。
「どの攻略対象も、多少なりとも彼女の人となりを知ってから嫌ってた……大抵、1度目で察して即座に敵対するんだけど。あ、アレウスは例外か」
あの子は敵対心をずっと秘めながら一発で爆発させたから……そうじゃなくて。メタリアと会うのは初めて、とされていた彼が、一目見たときから、しかも恐怖心を隠せなかった。
「どんな悪役とも付き合えそうな彼が……そこまで。メタリアが酷い女にしても、見た瞬間にマイナスイメージを植え込むような能力はないから……やっぱり、ペーネロトは以前からメタリアみたいなタイプが苦手だったと思った方が自然。でも家族との確執があったみたいなイベントも無かった……気がする。」
じゃあ、どの辺りでその苦手意識が刷り込まれたのかと言う話だが……怪しいと思われる期間は、初等部と中等部、要するに高等部に入るまで、だと思う。
「学校っていう環境の変わり目、心の不安定さが初めて露見する時期、そのあたりに何かがあったと考えるのが自然だと思うんだよなぁ」
思う思うってうっさいわハゲ。うん。そういう意見もわかるが、しかし私にはあくまで想像しかできないので、悪しからず。うん。
「うーん……逆に言えば、そのあたりの期間に関われるわけだから、その問題を解決できれば、もしかしたら私の味方についてくれるかもしれない……」
という事で、今回学校で行う主な長期ミッションは、『ペーネロトと仲良くなろう!』である。シュレクと協力して頑張って成し遂げるぞ。
自分自身このキャラを描ききれるか不安です。