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力のゴリラ妹と技のゴリラ私の悪役令嬢物語  作者: 鍵っ子
間章:技のゴリラ幼少期・日常
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妹はガチバトルを希望したい・後

「……はぁ、まぁでもやるしかないよねぇ、こうなったら」


 事ここに至ってもう撤退は無理だと悟った。それなら激流葬に身を任せてサイクロンを打つしかない。エンドサイクは害悪。え? もう古い? そう……


「もう一度確認するけど、アメリア、一切手加減は要らないというのに嘘偽りは無いわね」

「ないです。お姉さまのぜんりょくを、あいてどりたくおもいます」


 そうか……そうか。うむ。良いだろう。あの時の勝負の再演だ……今度は容赦はせん。


「分かったわ……妹たっての願いだもの。ここまで来てしまったら、叶えるのも吝かでもないかもしれない気もするから一回考え直してほしいわ」

「とっても潔くないです……」


 諦め良かったら私はとっくに悪役令嬢。私は諦めた事は無いんだよ。今このタイミングだって、完全に諦めたわけじゃないんだから……!


「メタリア、流石に往生際が悪いですよ。いい加減覚悟をお決めなさい」

「だって……こういう真剣勝負は苦手なんですよぉ……必要に駆られたとかなら兎も角」


 誘拐に押し入りにイジメ撃退、私が暴れたのは大抵必要に駆られてだからね。決して自分から暴れ始めたことは無いんだよ。勘違いしてるかもしれないけど、私ヒャッハー系じゃないから。平和尊重の陰キャだから。


「……ったく、良い? 本当に、手加減しないから覚悟してちょうだい」

「のぞむところです」


 つってももうそれじゃ通じないだろうし、覚悟決めるしかない。で。


「ルールとかもう決まってるんでしょ、爺」

「はい。今からご説明いたしますので、お待ちをば」


 ハイハイ……って結構しっかりした的出したなオイ。え、あんなんあったっけ?


「こちらの的に三回、指定した位置から用意した球を投擲していただきます。お二方合わせて計六球。その六球の中で、最も中心に近い場所に球を当てた方の勝利、です」

「シンプルね。いいじゃない」

「それは、恐悦至極。この老体が骨身を削って準備した甲斐があり申した」


 いやそんな事する前に仕事しろ爺。ったく……良し。あ、これが球? 兵士さんわざわざどうも……ふむ。


「じゃあ、さっそく?」

「はい。はじめましょう、お姉さま……おさき、いただいても?」

「ご随意に? 私はどちらでも構わないわよ……」


 ニヤッ、なんて。ふふ、まあしょうがないから、せめてノリノリでやってやる。悪役令嬢モード、オン! 単純な勝負なら、こっちの方がやりやすい。家族には使わんと言ったな、残念ながらたった今から大嘘になった。恨めよ。


「力の差、という物をキッチリと見せて差し上げるから、かかってらっしゃい」

「……っ、はい!」


 いや、なんでそこ嬉しそうにしちゃうん? そこは『なにくそ』ってなる場面よ?


「やる気十分ね。ま、お手並み拝見」

「はい……行きます!」


 いつの間にか引かれていた線、あそこか。結構遠いが……オイ待て、あそこから届くかアメリア? 以前の勝負を思い返す限り、無理そうな気しかしないんだが?


「……ホントに手加減はいらないのかしら?」

「まぁ、見ていましょう、お嬢様。アメリアお嬢様も勝算なしに挑んだわけではないでしょう……それに」

「それに?」

「私の予想が正しければ、お嬢様の勝ちも、少し、危うい可能性もあります」


 それは……って、お、投擲するか。


「足を、上げて……振りかぶって……」


 って、意外としっかりしたフォームだな……あれ? そういえばあの子、アレウス救出の時、確か男子と真っ向からやり合って勝ってたような……

「えいっ!」


 ……ピュッて。ボールが、結構な速度で飛んでったよ? あ、でも当たってない。はずしたか……いやそうじゃない。問題はそこじゃない。


「え、普通に届くし、結構速いやん。え、もしかして中心当たりある?」

「あるでしょうな……ほら、二投目が始まりますぞ」


 えっ、ちょ、待って心の準備がまだ……あ、ホントだもう投げる、結構速い!


「……あっ」

「やったぁ!」

「「「おおっ!」」」


 中心付近直撃!? 嘘やろ……あ、次が飛んでって……こ、これは外れたか……


「どうです! 次は、お姉さまの番です!」


 や、やべぇ。正直楽勝だと思ってただけに、予想外のアメリアの善戦でプレッシャーがヤバい。こ、これ負けも普通にあり得る奴じゃない?


「……ふふ、見事ね。だけど流石、とは言わないわよ。貴女なら、これくらいは当然できるとおもってましたから」


 めっちゃ嘘。正直目ん玉飛び出てどっか行きそうです。心臓が炸裂しそうです。はっはっはっはっはっはっはっはっ……正直負けるとは思ってなかったから足が震えてる。


「お嬢様! ファイト! ファイトですよー!」


 ろ、ロイ君。応援は嬉しいが……くっ、その応援が今は……今は……お、重いっ!


「メタリア、アメリアが見せたのです……貴女も、全力を見せなさい」


 はい。というか全力でやらないと負けそうなんで、やります……


「アメリア、見事だったわ」

「お姉さま」

「ですが、その上で教えてあげましょう……私と、貴方の差という物を!」


 ……なんで、私は追い詰められて居るんだ。望まない勝負で。まぁ、アメリアの気持ちもわからんではないが。とはいえ、偶には、偶には、わがままを押し通してもいいだろ?


「いいえ、貴女には、力の差というものを感じさせる、余地すら残しません!」




「……さ、三連続中心直撃……」

「大人げない! 大人げないですよメタリア姉さん!」

「いやぁ、顔が必死でしたなぁ。よほど負けたくなかったのでしょう」


 そりゃ負けたくないよ。私の唯一の得意技。これで負けたら私に何が残るのさ。後無理矢理勝負に引きずり込まれたのがちょっっっっとだけイラついたからってのもある。


「フゥ……」

「お、お姉さま……」

「ふ、どう? 手加減、というのもがいかに重要か……」

「流石ですお姉さま! もうぜんぜん敵いませんわぁ!」

「へぶっ!?」


 え!? 何々!? なんでそんな嬉しそうに突撃してきたの!? 負けたのよアンタってば、悔しがるかと思ったらスッゴイ嬉しそうになんで頬ずりズリズリズリあぁ頬っぺたこすれるぅぅぅう!?


「凄いですお姉さま! やっぱり敵いません! お姉さまぁあああ!」

「あ、あの。えっと」


 ……妹が、分からん。


偶には転生者による一方的な蹂躙をしてみたかったので、ショボい形で叶えてみました。

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