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力のゴリラ妹と技のゴリラ私の悪役令嬢物語  作者: 鍵っ子
間章:技のゴリラ幼少期・日常
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前世の母親も大概パワーウーマン。

「おすすめの本?」

「はい……ベスティアーゼに、面白い本をおしえてほしい、と」

「手紙で?」

「はい……たすけてもらえないでしょうか、メタリアお姉さま」


 助けてもらえませんかと言われましても……いやどうしましょうか。私だってそこまで本に詳しい訳じゃないのよ。まあ歴史書とかだったら世界観確認に読み漁ったけどベスティがそんなもん楽しんで読むか……? 無いだろ。


「うーむ……そうなると頼りになりそうなのは……向こう、かな」

「?」




「あら、私に?」

「はい。何かおすすめの本とかないでしょうか」


 メトラン母さんは知識人だ。アメリアに独自にマナーを叩き込んだだけあって、並の貴族の奥様方が裸足で逃げ出すくらいには頭もいいし、それに負けない位の情報を頭に秘めている。伊達にこの家にあっさり馴染んだわけではないのだ。


「うーん……あの人におすすめされてハマったものばかりだから、子供向けのものはあまり詳しくなくて……アメリアに勧めるつもりで、この家で見つけた物でいいなら」

「はい! 是非それでお願いします!」

「分かったわ。ところで……アレウス君、なんでそんなに離れているのかしら」

「あ、いえ、その、ですね……」


 さて、ご依頼を張った張本人は相当メトランさんから離れておりますが……まぁ、私がこの子をここに連れてきたのは、先ほどの一件もあるが、じつはこれが主な原因である。


「め、メトランお母さまが、その、ご本を持ってくるまでは、まってようかなぁって」

「いやー嘘よね、スッゴイ目が泳いでるもんねぇ」


 こら、目を逸らさない。知ってるのよ? 君、この家に馴染んできたのは良いけど、メトラン母さんとだけは絡みが少ないって。いや挨拶とかはしてるだろうけど。


「私達と絡む間に、お父様とは仲良くなったし、お母様にはこの家の男子として武術を叩き込まれる間にある程度は知り合えた……でも?」

「あうう」


 こら、可愛く俯いて誤魔化さない。メカクレショタにそういう表情が似合うってのは知ってるけど、でもそれじゃ誤魔化されないわよ、乙女ゲー百戦錬磨の私を舐めんな。


「……まぁ、二人お母様が居るっていうのは不思議……でもないのかな?」

「いえ、三人はさすがにこんわくします」

「あ、そっか三人かぁ……まぁ、そりゃ困惑もするかぁ」


 ……じゃなくて! この子ったら、一瞬納得しかけちゃったじゃないのさ! ケェ! 誤魔化し方ばっかりうまくなって、悪い子だねぇ!


「にしたってもうちょっとこう、話しかけるとか、すればいいじゃない。それすらしないってのはどうなのかな、って思ったからね?」

「は、はい。すみません。で、でもちゃんと理由があるんですよ、その」

「理由?」


 なんか話しかけ辛い理由……メトランさんて基本的におおらかで、人の良い所を見つけるのが得意で、自分の悪口だって涼しい顔で受け流せる器を持ったパーフェクトウーマンに話しかけ辛い……あれ? 我が母上も凄いけど、メトラン母上も大概じゃな?


「……理由なんかある?」

「あ、あるんです。ホントです!」


 えぇ、こんな我が家の双璧完璧女傑を避ける理由なんてあるんですかぁ?


「そ、その……メトランさんは、僕の母をおもいだすような人で……」

「はぁ、アレウスの……実母さん、ってことかしら?」

「じ、じつぼ……まぁ、いいかたはちょっとどうかなって思ったけど、そうです」

「そしたら猶更話しかけやすいんじゃないのかしら?」


 だって、親しみやすいタイプって事でしょ? お母さんと似た人が居たら、むしろ私だったら気軽に話しかけて怪訝な顔されるまであるレベルよ?


「……その、ちょっとそうぞうして欲しいんですけど」

「はいはい?」

「母と、本当にそっくりなひとが、じぶんのぎりのははであるのって……どうおもいます? しかもふたりいるうちの」

「…………」


『やー、この紅茶美味い! ほら、遠慮せずさっさと飲みなさいな――。はぁ? もうちょいお淑やかには飲まないのかって? 貴族ってったって皮をはがせば人間、変に着飾ったってその事実は変わらないんだから、お淑やかさとか要らないのよ、この家の子になったなら、覚えときなさい』


「……ひかえめにいってじごくね」

「じ!? あ、いえそこまでではないですけど、その、はい。そんな感じです」


 い、違和感が半端ねぇ……! あ、あの母親が貴族やってるとか冗談じゃねぇぞ! しかも似た別人で義理の母親ぁ!? あ、あんなレディースヤンキーがこの世に二人いるとか考えただけで……ふ、震えが止まらねぇ。


「うん、きもちはわかったわ、ほんと、ごめんね」


 私のガチ実母ってなると、やっぱ()()()()()()だもんなぁ、こうなるよなぁ……うん。


「い、いえ。その、そこまでまっさおになってしまうと、逆になんか申しわけない事をしたようなきぶんで……ご、ごめんなさいメタリア姉さん」

「……あの、そのね? メタリア、何処かで休んだ方が良いと思うわ」

「そ、そっすね……すいません、ごめいわくかけますけど、ちょっとささえてもらえれば」


 あ、手。すいません。あったけぇ……心が、絶望の未来を見てささくれた心が優しく癒される……これが……家族の温もりというものか……あ、アレウスも繋いでくれるの?


「ありがてぇ……! ありがてぇ……!」

「あの、メタリア姉さま、ほんとうにだいじょうぶでしょうか」

「うーん……大丈夫だと思うわ、強い子だからね、この子も」




 結果から言って、私の看病というか、介護を通じて二人は仲良くなれたらしい。私? 私は悪夢の光景を想像してSAN値が十減少してたから狂気判定してたよ。失敗したようでアメリアと『お姉さま……』『アメリア……』って感じで百合空間形成する幻を見たよ!


 現実にならないと良いね!


しばらくは日常回です。まぁ、いろんな人と絆を深める回だとお思いください。

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