DLCスチル『姉、妹、弟。三人が揃って笑った日』
「……おい」
「うむむ、この生ハムクソうまいねぇ……」
このサラダの野菜もうめぇなぁ。すっごい新鮮……あん? 何よ、せっかく食事の第二ラウンドを楽しんでいたというに……おや。お二人さんのご帰還か。
「アメリアとアレウス、吐き出すのは終わったのかしら」
「吐き出す……なるほど、そういう事か。では俺にその後の様子を見られるというのはいささか酷か……うむ。では、俺はここらで失礼する。二人を迎えてやれ」
あ、ちょっと……ったく、あいつの分のサラダ取ってたってのに。まぁいいや、これは二人に食べさせるとしようか。おーいこっちこっち。
「おまたせしました……もう、アレウスったら、あんなに泣いて、ちょっとびっくりしちゃった。カラカラになっちゃうかとおもったわ」
「す、すみません……」
「二人ともお帰り。さ、水でも飲んで。特にアレウスはね。体が乾いてると調子悪くなるからねぇ、あと、塩辛い物も食べなさい、ほら、このハムとか」
あれ、私お婆ちゃんみたい……精神年齢的にしょうがないとはいえ、おかしいな、もうちょいキャピキャピした方が良いのかな。精神的に若々しくならねば。
「……あの、今回の一件というのは」
「大丈夫よ。お父様がきっちり話をつけるから。もう、向こうが何かしてくる事もないから、安心していいわ。ったく、ツェルバ、ヴァーレイ、カロゾナット、だっけ? 仮にも貴族なんだから、子供の教育ぐらいしっかりねぇ……」
とはいえ、ふつーくらいの貴族さんだったし、大公から睨まれて相当真っ青になってたけど……まぁ、いいか。
「……あの、メタリア、姉さん?」
「ん? どしたの? 食べないの?」
「あ、すいません、いただきます……そうじゃなくて。あの、その、ありがとうございます。改めて、その、おれいを、ですね」
「あぁ、そういう……いいのいいの気にしなくて」
真面目やねアレウス君。姉ちゃんぶっちゃけバリバリ後の利を考えての行動だったからね、お礼言われることじゃないのよ。まぁ言ってないから分からんだろうけど、それとしても年上が年下を助けるのは当たり前っしょ。
「ま、気にしてるならお願い聞いてくれるかしら?」
「お願い、ですか?」
とはいえ付け入るチャンスがあるなら、予防線、というか布石になるかは分からんけど手は打っておこう。転ばぬ先の杖じゃ杖。
「姉さん、て、呼んでくれる?」
「え、姉さん、ですか?」
「そ。まぁ今でも呼んでくれてるけど。もっとたくさん、ね」
まあ遠回しに『ためらわずによんでちょ』って言ってるだけよ。まあ、呼び方も仲良くなるには重要な要素だ。
「分かりました……メタリア姉さん」
「っ!」
ま、真正面からはにかみ姉さん呼び……躊躇いは萌えを生むと言うが、むしろ今は逆!
躊躇わぬその『姉さん』呼びが! 我が姉回路をフル稼働させるのだ!
「ふふ、ありがとうアレウス」
「い、いえ、こんな事でいいのなら……その、本当にこんな事で」
「いいのよ」
「わぷ」
このー真面目さんめ。くしゃくしゃにしてやる。おらおら、整えた髪がグシャグシャになっていくぞおおおお! ほら、普段隠れてる目も見せるんだよ!
「私が良いと思ってる事なんだから、気にしなくてい~の。細かい事気にする弟君は、こうよ、こう! フフフフフフ」
「わわ、メタリア姉さん、ちょっと、あうう」
ほれほれ、もう細かい事は気にしないと言えたらやめてあげるぞぉ? さぁ……?
「……」
どうしたの帽子外して頭こっち出して……それはつまり。
「えっと……撫でて欲しいって事でいいの? アメリア?」
「はい! たくさん、たっくさん撫でてほしいです! お姉さま!」
フス―って、鼻息荒いっすね。そんなに撫でてほしいんですか。全然いいしむしろやってあげたいけどさ、そこまで待ち遠しいもんかね……? まあいいか。
「じゃあ……わしわしー、わしわしー」
「きゅふー、にゅふふ、ふゆぅん……きもちいーですー」
うわぁスッゴイニコニコしてる。嬉しそうでこっちも思わずニコニコしちゃうぞこの野郎。よーしもっと撫でてやるからなぁ……っていうか、髪やわらけぇな相変わらず。
「そういえば、メタリア姉さん」
「んー、なにー?」
「あの、さっき、その、とても怖かったというか、あれは」
「あぁ、あれ? だーいじょうぶよ、基本的に身内にはやんないし。まぁ身内以外だったら、手出しされたらやるけど。私親しい人以外にゃドライなのよー」
日本人気質。基本的に身内以外にゃ厳しい。ロイ君とかは、死亡フラグへし折る為っていう切っ掛けがあったし、友達も増やさないって辺りに出てるよね、うん。
「そう、なんですか」
「そうそ。だからアレウスは心配しなくてい~からねー」
アレウスとは関わらざるを得ないから、むしろ積極的にいったまであるけど、ただ接してると意外と情って沸いちゃうもんなのね。やだ、私ちょろすぎ?
「……さて、ひとしきり撫でた所で、はい。おしまい」
「あ」
「あー、お姉さま、もっと、もっとおねがいします!」
「駄目よ。っていうか、せっかくご飯取っといたんだから食べてよ」
シュレクの奴の分ガッツリとってたからさ。これは喰いきれんのよ。
「ムー……分かりました。じゃあ、またあとで、おへやにおじゃましますから」
「そこで撫でろって? ったく、そんなに嬉しい物なのかね……分かったわよ」
「やった!」
ん? どしたのアレウス君、目を丸くして。え? いっつもこんな風なのかって? 前までは違うけど、最近は大体こんな感じよ? 変、あ、やっぱ変なのかね。
「仲が良すぎる姉妹、ってか?」
まぁ、これからの人生仲が良すぎて悪いってことは無いだろうし……許して?
「あ、いえ……そうじゃなくて」
「どうしたの?」
「……ふふ、僕も、メタリアねえさまとアメリアねえさまと、そんな風になかよくなれたらな、って」
……にひ。
「もうなってるわよ。アレウスも、来なさいな」
「っ、はい!」
うん。ゴタゴタがあって、すれ違いもあって、いろいろあったけど……うん。こうやって、ちゃんと家族になれて嬉しい! さ、ご飯食べよ!
私の小説って、男子との恋愛模様がない代わりに、女子との恋愛模様も少ない……あれ? タグ詐欺?
でも楽しいからいっか♪