男女の友情は成立する。これ絶対。
ったく、ケツしばき百発とシッペラッシュしか耐えられんとは……急所蹴りの二、三発位は覚悟決めて耐えなさいな、ホントにもう……おや? アメリア、終わったのかな? って相手大分ぐったりしてるね。
「お姉さま! 済みましたわ!」
「ご苦労様。大丈夫、怪我とか、してない?」
「いいえ! 傷一つついておりませんわ!」
ふんす! と来た。いやぁ元気そうで何より。でも右手に男の子引きずるのはあんまり推奨しかねるかなぁ……言うて君まだ五歳やろ。私とかとちゃうんやで? まぁ、アメリア、タッパあるから、絵にならんことも無いけど。
「で、アレウスは……」
「あ……だ、だいじょうぶ、です」
「はい嘘。いや、聞いといてなんだけどさ、結構ぶたれてたし頰も痛いってるのは分かってるから、ロイ! 井戸でこの……あ、ハンカチ、アレウスに貸してたんだっけ」
「あ、えっと、お返しします」
お、サンキュ。あ、そうそう。これを井戸の水で冷やして……そうそう。うん。お願いね。いっそ私がやろうか? あ、それは絶対に無理、そうですか……
「うん……やっぱり、熱、持ってるね。痛かったでしょ」
「え、いや、その」
「よく頑張った。頑張ったよ。でも、もう頑張らなくて大丈夫だから、ね」
頬ちょっと赤いなぁ。腫れないといいけど。取り敢えず。まぁ井戸水で冷やせばなんとかなると信じたい。
「……ぼ、ぼく。どうして、ここに。その、僕がここにいること」
「まぁ、爺から聞いたのよ。万が一の事があったら困るから、一応見に来たのよ……まさかこんなドンピシャになるとは思わなかったけど」
すいません大嘘です。バリバリ予測してました。そしてガッツリ対策立てたりしてましたよ。すいません。でもそのこと言ってまたぞろ白い目で見られたりするのは嫌なんで黙ってます。ドクズでゴミなお姉ちゃん許してぇな。
「まぁ、何はともあれ、アレウスを助けられてよかった、ね?」
「はい!」
よし誤魔化し切った! ちょいと無理やりな気もするけど、ね! まぁセーフセーフって事で! 私は誰に言い訳してるんだろうね! 自分にだよ!
「……ぼくは、もうガマンしなくて、いいんですね」
「そうよ。もしこんな事をずっとさせられてたなら……」
「ずっと、でした。ほんとうに。なにもできなくて、なさけないとおもったりもして、でも、こうやって、たすけてもらえたのが……」
……まぁ、しゃあないやろうな。日記で相当溜め込んでるのは分かってたし。うん。
「今は……ね、泣いときなさい。いっぱい泣きなさい」
あ、うん。アメリア。え、代わるって? いや、大丈夫よ。こういうのは姉の役目じゃない? でもドレスが涙まみれになるのは……うん。まぁ、これもしゃあない。
結局アメリア任せるなら最初から引き受けるな私。いや、だってさ、予想をはるかに超えて来たからね、普通にあそこから体感……二十分位? 泣きっぱなしだったから、影の立役者シュレクを放っておくのはどうなんだろうという事で。ね。
「はぁ……そういえばシュレクはどうしてるかなっと……?」
おぉ!? すげぇ人だかりだこりゃ。っていうかなにをどうやれば、貴族様方の興味っていうのをここまで引けるというのか……
「それで! 国王陛下! 第一、第二王子のお相手は、是非とも我が家の娘をですな!」
あっ、私はもうなにも聞こえておりませんので失礼しまーす……嘘だよ。別に私は関係ないからいいんだ。うん。要するにシュレクを除いたもうお二方だろう? そりゃ気になるよなぁ。
「おう、お疲れ様だ」
「うん、一応確認するけど、あれは、その弟さん方の婚約者探しという事でよろしいか?」
「よろしいぞ。まぁ、だいぶ気を引けたとは思うぞ。とはいえ、予定調和ではあるが」
「嘘だろ、元からここで発表するつもりだったんかい」
「これは君のお父上とも打ち合わせ済みだ。俺とお前の婚約をまだ知らない者達もいたのだ、それと合わせて、な」
はぁ、なるほどねぇ……あぁ、だから話すタイミングをここに合わせて利用した、と。
「まぁ、これに関しては大公殿もいささか難を示していたのだが……父上が頼み込んでな」
「え、なんで?」
「俺に予想外の早さで婚約者ができた事で、宮廷内からは他の王子にも婚約者を、という声が上がっている。故に、一応探しているというポーズだけでも取らねば、中からも外からもなにかしら言われかねんのだ」
「うっわなんか王家の世知辛い実情を聞いた気がする……」
一応この国で一番偉いだろうに、突き上げ食らうんだ。なんか、王様って言ってもあれなんだね、会社さんの社長ぐらいの感覚なのかね。絶対王様集権状態とかではないのね。
「なんだ、お前も世間一般のような感じで王家を見ていたのか。王家など、案外内情は悲しいものだぞ。まぁ、我が家はそこまで悲痛というわけではないが」
「それ自分で言うかよ王族……」
シンデレラストーリーの根幹を否定するんじゃあないよお前は……王族の一言は重いってよく言うじゃん。え、そうでもないってか?
「それは違う。王族の言葉は責任を伴うのは確かだ。その上で、当然周辺からの突き上げも食らう。王族というのは、少しばかり生まれのいい貴族くらいの感覚なのだよ」
「貴族の上に立ってるってのに?」
「大公も王族だが、貴族だろう? そういう事だよ」
……あーなるほど、なんとなく分かった。要するに、薄皮一枚くらいっきゃ隔ててないけど、その薄皮が何よりも重いって事なのか。へぇ、王族ってそうなんだ。
「色々あるんだねぇ……」
「あぁ。それで、そっちは……いや、お前がここに戻って来た時点で聞くのは無意味か」
「うん。まぁ、なんとかなったよ。無事ね」
「そうか」
……なんだよ。なんで頭撫でてんだよお前は。
「共犯者だからな、貴様を褒めるくらいいいだろう」
「あっそ。まぁ、嬉しいっちゃ嬉しいけど、なに? 私と恋でもしたいわけ?」
「そういう話はしていないぞ」
そう? ま、ならこのまま撫でられてようかな。撫でられるって、リラックス効果もあるらしいし、今はちょっと体をリラックスさせたくはあるのよ……あぁ、結構疲れた。
『男女が揃ったら恋愛やろ!』とか言っていた友人をしばきました。男女の友情って美しいもんだと思います。