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力のゴリラ妹と技のゴリラ私の悪役令嬢物語  作者: 鍵っ子
一章:技のゴリラ幼少期
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ではお嬢様の入場(強制)です。

「……良し。オッケ。完璧」


 シャンパンカラー。子供にしては聊か大人びている色のドレス、飾りもあまり付いていないシンプルなものなのだが、身長も他と比較してそこそこ高いこの体には良く似合う。


「とはいえ……ふふ、私より目立つ子は他にいる」


 いやー、今回はねぇ、暇な時間を見つけては木の板を駄目にし、隙間時間に木の板を駄目にし、ゴロゴロしている間にも木の板を駄目にして作りあげた、血と血と血が滲む渾身の一作。


「いやー回数こなしてりゃ上手くなるでしょとか甘かったわ」


 今回のを作るのに普段の六倍位の木の板が犠牲になってるからねぇ……とはいえ、その犠牲に見合うだけの物は考えられたと思う。


「主役は私なんですけど……まぁアメリアの方が映えるでしょ」


 いくら私が悪役令嬢らしくそこそこの美貌を誇っているにせよ、アメリアのそれは私と比べるべくもない程に完璧だ。だからこそ、ああいうドレスの魅力を最大限引き出せる。


「アレウスにも、『お姉さまをビックリするくらい綺麗に仕立ててあげるから楽しみにしときなさい』って言っといた。ふふ、露骨に楽しみという顔をしおって」


 まぁアメリアだもんなぁ。将来の君のヒロインだもんね。そりゃ気になるよ。


「今日はアメリアが会場を荒らしてから入場になる。ま、そこまで注目もされないだろうし気も楽ってもんさね」


 で? 確か、お父様と一緒に会場入りするんだっけか? もうちょい時間あるし……そうだな。


「シュレク、暇だし付き合いなさいよ、駄弁りましょ」

「構わんぞ」


 いえーい。扉の外から堂々入場。これで会場入りするまで某真っ黒仮面みたく『あ……あ……』とかやらずに済むわ。わたしは薬中かってんだよ。


「……ふむ、似合っているな」

「あら、世辞でも美形に言われると嬉しいもんね。ありがとさん」

「世辞ではないが……まぁ、流石に先ほどのアメリアと比べてしまうと、問題だが」


 でしょうな。クククククク。今回のデザインは、なんと若干ドイツっぽさを混ぜ込んだ弱ミリタリー風味ゴシックロリータドレス! 幼女、金髪、ロング、赤目と似合わぬ要素無し、この時代の軍服とは違うが、それでも革新的、かつビューティな仕上がり。


「ぬふふ、思わず貢ぎたくなっちゃったわ。我が妹ながら恐ろしいわね」

「貢ぎたくなった、か。言い得て妙だ。王者の風格と言うべきものを身に纏っていたよ」

「でしょう!? いやー、アレを今日に間に合わせられたのは我ながらいい仕事したと思うわ。デザインだけだけど、私やったの」


 あとジョランゼさんのチート的な腕前な。今までと全然違うタイプだったのに、今までより素早く仕上げるとか何、変態? 意欲が増しましただってさ。こわ。


「……自分の誕生日だというのに、アメリアを優先する当たり、お前らしいとは思うが」

「何言ってんの。可愛い子は可愛くあるべき。違う?」

「ふむ、この調子だ。心配するだけバカを見るといったところか」


 若干まーた失礼かまされてるが、今回は見逃そう。私は、今日機嫌がよいのでな。くふふ。アメリアを見て目を見開く貴族のおっさん、おばさま方の姿が目に浮かぶぜ。


「あ、でもこれでアメリアの婚約者になりたいとか言ってくる奴はしばく」

「なんとも複雑な可愛がり方をしているな、お前は」


 だってあんな可愛い子、下手なヤローに渡すとかないわ。ゲームの攻略対象にだって渡すのが惜しくなってきているというのに。この先も……あの子を……


「……そろそろかしら、お父様が来るのは」

「話題を逸らしたな。まあいい。事実だ。では、また会場でな」


 あいあーい。またねー……うみゅ。シュレクが居なくなっていよいよ暇になったな。


「……この先、か」


 アメリアが出会う攻略対象達は、どれもアレウスやシュレクに劣らぬイケメンや貴公子ばかり。私は彼らがアメリアと結ばれるとき、素直に祝福できるのだろうか。


『お姉さま! きょうもすてきなドレス、ありがとうございます!』


「……それは、うーん」


 なんだろう。無理な気がしてきた。下手な奴があの子を泣かせるのは論外、あのイケメン達であっても、あの子の顔を曇らせるなら……あ、イラっと来た。


「あんなに可愛い子なんだ。気が付きゃペロリとか普通にある。気を付けな」


 誰かにもらわれてしまうんは仕方ないだろう。けど、それでもせめて私の目で見て、納得できる人と一緒になってほしい。私の眼力なんざたかが知れてるだろうけど。


「ふふ、姉っぽいじゃん。私……おや」


 足音。お父様だなこれは。入場か。ふふ、ではせいぜいアメリアの引き立て役にでもなってくるとするかね。


「メタリア」

「お父様、待ちくたびれました。さっさと参りましょう、麗しのアメリアの姿に度肝抜かれた招待客の姿が見たいのです、早く」

「それなんだけどね……君も、度肝抜いてみないかい?」

「はえ?」


 え、どういう事?




「お父様、止しましょう、絶対ダメですって。さっきの方がまだ、こう!」

「いいや、とても綺麗だよメタリア。本当に」

「そんなこと無いですって、さっきの方が落ち着いててよかったですから今からでも戻させてくださいませぇ!」

「駄目♡」


 やめてぇハートマークでゴリ押さないでぇえええええあっまって扉を開けるな着替えるぞわたしは大体何でこんな派手なドレスに着替えにゃならんのかぁあっほんと引っ張るのを止してお父さま!?


「大丈夫だからね! ホント、似合ってるって!」

「無理無理無理無理むしろあの後にめかしてキメて入るとか自殺行為いいいいい!」


 やっべ、なか、はいっちゃうぅぅぅ!?


パーティの主役はアメリアと……メタリアだ!

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