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力のゴリラ妹と技のゴリラ私の悪役令嬢物語  作者: 鍵っ子
一章:技のゴリラ幼少期
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幕間:爺から見たお嬢様

「マクレス! 見てくれ、これをメタリアが描いたのだ! 実によく書けていると思わないか!?」

「ふむ、お嬢様が……ほうほう」


 小児用のドレスの、図か。何というか、意外ではある。こういうのを得意としていたようには見えなかったが。それとも、火事場の馬鹿力的な何かなのだろうか。


「いやぁ、メタリアは凄いなぁ……そうは思わないかマクレス、そう思うよなうんうん」

「旦那様、私はまだ何も申しておりませんよ……」


 うーむ、喜んでらっしゃる。微笑ましいというか、なんと申しますか。良かったですなぁ、旦那様。とはいえ周りも少しは見た方がよろしいとは思いますが。


「あの子の……妹の事を考えて書いたそうだ。妹思いの、とても良い子だよ、そう考えると、メタリアのことがことさらに愛おしくなってきて……」

「左様ですか」


 まぁ、それが本当かどうかは知らないが。

 あのお嬢様は、存外旦那様が思っているほど健気さは無く、その代わり、大分に図太い性格なのだと、私は一応知っているので。




 この家に仕えて長いが、まあ、使用人統括として、色々な人物を見てきた。

 使用人、その子供、貴族、そのご子息、又はご息女、犯罪者、等々。少し関節に違和感を覚えるこの頃までそう言った人々を見て、目は鍛えられている。

 その私だからこそ、その違和感に気が付けたのだと、思う。


「メタリア、どうだいこのドレス……お前のために仕立てさせたのだ。このピンクシルクの輝き、綺麗だろう?」

「え、えぇ。ほんとうにおきれいですわ……えぇっと、ちなみに、おいくらほど」

「ん? あぁ、(ーー)程だよ。メタリアのためなら、安い金額さ」

「……ホホー」


 あぁ、お嬢様、凄い顔してるなぁ。怯えてらっしゃるなぁ、と。

 この家のお嬢様は、人より存外賢い。この年で、内面に感じる恐怖を取り繕う事を覚えていらっしゃる。高価なものに対しては、特に凄まじい反応を見せている。

 後、微妙に隠しきれていない時もある。白目をむいてらっしゃる時もある。


「おとうさま、こんなにきれいなふく、それにおとうさまからのおくりもの、よごすのはいやです。たいせつに、しまっておいてくださいませんか?」

「おおメタリア。なんて可愛い事を言うんだい……良し良し、この服は、本当に大切な時に着る用にしようね。ふふ、その時が楽しみだねぇ」

「そ…………そうですわね」




「うーむ……旦那様は気づいておられない、か」


 あまり良くない傾向だ、とは思った。子供の頃にこう言う悪癖を身につけると、あまり宜しくない方に育ってしまう。幼少の頃にどういう教育をするかが子供を育てる時に最も重要なのだ、と。今は亡き妻が言っていた事を、思い出した。


「……なんとか、せねばならんかな」


 お嬢様の世話をした事もある。お嬢様は、私に向けて、小さな手を向けながら、笑顔を向けてきた。昔に見た孫の笑顔を思い出して、思わず破顔したのを覚えている。三歳の半ば、言葉を発するようになるまで、良く遊び相手を努めさせていただいた。

 大切な主人のご息女という事もある。

 

「私が一肌脱いで何とかできるだろうか……」


 そうは思えど、私は所詮使用人。機会がなければ、お嬢様に何かを説く事など出来ず。些か、を超え、無念と思っていた、そんな時だった。


「……よし、クリア」


 その日は、旦那様の命を受け、書斎の一斉掃除を行なっていた私の前に現れたのは、普段被っている薄皮を剥がしている、お嬢様の姿だった。

 目に宿っているのは、子供っぽいと言えばそうだが、しかし聡明さが確実に見え隠れする輝き。やはり、この歳の少女に宿るには、些か度の過ぎた叡智を宿らせている。


「って、あっ」

「お嬢様……?」

「まくれす、さん」


 今、確実に見えた。その薄皮の下。そして、今、理由は分からねどお嬢様はここに入ってきた。他に誰もいない。機会は、ここしかない。そう思えた。

 なぜかこの家のことを調べていたが、その程度は大して気にもならなかった。それよりも、自らを偽るような事を、正さねばならぬ、と。


「まず、私の前で猫を被るのをやめて見ませんか?」


 だからこそ、そんな事を言ったのだ。




「爺助けて! お祝いの文章とか私にゃ無理だ!」

「……お嬢様、あまり声を張り上げるのはお淑やかさに欠けますぞ」


 そこから二年.お嬢様と付き合って分かったのだが、お嬢様は、まぁ貴族の令嬢とは思えぬほど活発な性格をしていらっしゃる。

 旦那様はお嬢様がお元気でいらっしゃる方が喜ぶだろう。まぁ、私としても子供は元気に越したことはない、と思うのだが……子供の無邪気な元気とは些か違う、というか。思わず苦笑いするような得体のしれない力に溢れている。


「お、お父様のお祝いパワーが強しゅぎなのぉ! 目ぇキラッキラさせながらカード渡してきたの! 断れないの!」

「はぁ……分かりました、爺もお手伝いいたしますから、二人で頑張りましょう」


 まぁ、多分悪い方向に向かうのは阻止できたから、良し、としたいのだが……ううむ。


「マジか爺、文才もあるとか、流石我が家の中でも抜群の才子(あるいは才人)……!」

「まじ……? まあ、お誕生日のお祝いの言葉程度であれば、私でなくとも、誰でも書けると思いますが」

「私は無理だ」

「左様ですか」

「そうだ。だが爺がいりゃ百人力じゃい! 見てろおめでとうメッセージ、お前なんかあっさり仕上げて、妹ちゃんを満面スマイルにしてやっからなぁ!」

「お嬢様、そのような笑い方、淑女として色々失格ですぞ」


 でも、何だろう。お嬢様の、物語に出てくる悪の大臣みたいな笑い方見てると、果たして私が一肌脱いだのは、果たして正しかったのか、と思う次第である。


二話分の話を、一話にギュッと縮める暴挙。

話が取っ散らかってる気がしないでもないです……申し訳なく。

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