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ゴリラシスターズと赤い被害者

「よう、こんにちは、そこのお二人さん」


 ふと、誰かに声をかけられた。っていうか、さっさと教室行きたいんだが、誰だこのタイミングで、空気読めてないなぁおい。折角可愛い妹と一緒に過ごす時間だってのに。


「あら、アクセロ様よ。侯爵様のご子息の」

「という事は、あの有名な『深紅の君』!? あぁ本当に、情熱的な赤が映えるお方!」


 ……アクセロ。その名前には、聞き覚えがある。こいつは、どうやら相手せずにスルーってのは無理っぽいなぁ。私の将来的にも、隣の妹の将来的にも。


「お姉様、後ろの方が」

「分かってますわ……さて、どちらさ真っ赤ぁ!?」

「赤ぁ!? いや何だ貴様、初対面の人間に向かって、真っ赤とは失礼な!」


 いやすまん。けど、だってさぁ、赤いやん、君。髪もさぁ、後制服も。改造? でも似合ってるのが心底違和感。矛盾してるけど。そんな赤いと、つい言っちゃうよね。


「……ふん、まあいい。お前なんざ、ハナから眼中にない。一応彼女と一緒にいたから、ついでに声をかけただけだからな。まあ、どうしてもというなら、彼女の序でに、()()()()()()()()()が」


 あっ。

 まってアクセロ君。構ってやるって、それはマズイ。っていうか、もうダメだスイッチ入ってる。隣から、隣から凄い殺気がぁああああああっ!?


「……なるほど、お姉様、少しお待ちを」

「アメリア、待って、待ちなさい、ステイ。あれ、ナンパ、違う」


 ダメだ止まらん。大股だし、すっごい足音立ててるし。青筋立ってるし、怖い。美人だから余計に怖い! お願い、ちょっとまって、それはマズイっすよ妹はん!


「おや、そっちから来てくれるなんて嬉しいな。そうだ、オレが会いたかったのは」

「黙りなさい、そして、沈みなさい!」

「バオバッ!?」


 い、逝ったぁああああああああっ?! 鳩尾ぃ! アクセロ君しっかり~!


「実家に帰って、母親にでも甘えてなさい、クソガキ」

「お、オォウフブ……」


 黒レースの長手袋を嵌めた、しなやかな手。それが力いっぱい握られて、何の躊躇いも見せず振り切られた。恐ろしい事にこの裏拳、しっかり腰が入っていて、間違いなく重たい。我が妹ながら、末恐ろしい。


「ビューティフル&デンジャラス……」


 この感想はあくまで私個人の印象です。なぁ、おい。隣を歩いてた可憐な美少女が、蓋を開けたらスケ番だよ、誰だ、こんなギャップの塊を生んだのは、私でございます。申し訳ない。


「お姉様、行きましょう。こんな芋虫に拘っていては、お姉様の品位まで下がりかねません……全く、こんな軟弱野郎が寄ってくるなんて、この学校の男もたかが知れていますわね。やはりお姉さまは私がお守りしないと」


 いや、そのナンパ野郎、()()()()()()()()()よ? 少しは容赦して差し上げて? って言いたいけどダメだ。すっごい褒めて欲しそうにしてる。カッコイイ感じに仕立てられたゴスロリが、こんな豆しばみたいな表情にここまでマッチするなんて!


「……そ、うですわね。ありがとうアメリア、参りましょうか」


 これは無理だ、こんな、こんなワンコな可愛い妹の満面の笑みを崩すなんて……結果、私はあらゆる思考を捨て、仏の様な凪いだ思考に至る。仏フェイス。


「あ、あの惨状を見てあの表情……さすが鋼の姫!」

「多少の事には興味すら抱かぬ、温もり無き女帝……噂は本当であったか」


 仏は冷徹。仏教徒への宣戦布告か何かだろうか。今の私、そんな面してんのか。


「ま、まってくれ、あめりあ……」

「待つわけないでしょう。アクセロだかマケテロだかしらないけど、お姉さまに手を出すなら、潰すわよ、青二才」

「いや、ようがあるのはきみ……うっ」


 ごめん、ちょっと黙ろうか。お薬嗅いでてね……よし。これで場は収まった。


「め、メタリアがハンカチで口抑えたぞ!」

「まさか毒を……!? 顔色一つ変えずに、なんて恐ろしい!」


 煩い外野。アンタらに構ってる暇は無いんだ。ちゃんと妹ちゃんとお話ししないとヤバいんだよ、このままだと婚約者へっちゃうから、妹が行き遅れとか泣くに泣けないよオネーチャンは。


「婚約者なんていりませんわ、お姉様さえいてくだされば、私はそれで」


 ヒエッ。レズの波動……ではない、これは、家族愛の波動……だと!? ここまでどろどろと、絡みつくような家族愛が存在し得るとは……このメタリアの目をもってして云々。


「あ、そんな事よりお姉さま! お姉さまの御友人方、皆、教室でお待ちですわ。お姉さまの御到着を心待ちにしてらっしゃいますわよ」

「あ、はい」


 いーやこれそんな事よりですませちゃダメでしょ。ねぇ、あ、いやいいや。もう思考するのメンドクサイ。あんなダメな乙女ゲーのヒーローはいない。つまりアレは私に関係のない、ただの一般貴族。そういうことにしよう。さようなら一般貴族さん。


「いきましょうかあめりあ」

「はーい、お姉さま」


 この世界の、()()()()()()たる彼女は、お姉さまと私を呼ぶ、ゴスロリボンバーガールに姿を変えていた。


すいませんこんな作品で、ヒロインが力技で解決する作品ですいません。本当に。

でも可愛いヒロインが書けなかったんです……すいません。

次回の時系列は、主人公がこの場面に至る前、若い頃の話になります。

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