3‐13 何も聞かされてないよ?
今日もミシュさんに稽古をしてもらっている。魔力剣の練習を始めて二日が経った時に言われる。
「明日からパラクリントで祭りが開かれる。そこで剣術大会があるんだが、エントリーしておいたから頑張ってくれ。まぁ坊主なら一回位は勝てるだろう」
いきなり過ぎた言葉が出ない。祭りがあるのは知っていたが、剣術大会があってそれにエントリーしたって!?
「あぁ、そうだ。言い忘れてたけど、明日はお得意様がうちに来るから私は同行出来ない。悪いな」
うん、そこじゃなくて勝手にエントリーした事を謝って欲しかったね!
エントリーされてしまったなら仕方ないか。せっかくミシュさんに鍛えて貰ってたんだ。せめて一勝したい。
それを聞いてからより一層稽古に励んだ。
またミシュさんにコテンパンにされたのは言うまでもないだろう。
明日は大会と言う事で稽古は早めに切りあげた。ミシュさんもお得意様が来るので、その準備をしないといけないらしい。忙しいのにわざわざ俺の稽古に付き合ってくれてるなんて申し訳ないな。大会が終わったら何かプレゼントしよう。
帰りに少しだけ繁華街を見て回る。祭りの前夜祭なのか、前より人でごった返している。
そこで何やら囲んで人が居るのに気付いた。
……カツカツカツカツ。
何の音だ?俺は音に誘われるかのようにその音の正体を見に行く。
……カツカツカツ。ズルルルルル。
有名な屋台でも出てるのか?麺のすする音がした。いい匂いもする。なるほど、これは行列で並んでたのか。
でも、並び方が変だな?そう思っていると上に書いてある文字に気付いた。
<大食い大会予選>
あー、なるほどね。みんな大食い大会を見ていた訳だ。
食べれないし、俺には関係ないな。と思っていたら実況している人から聞いた事のある名前が聞こえた。
『 シルアちゃん、前人未到の九杯目だぁー!!』
「「うおおおぉぉ!!」」
湧き上がる観客。
今シルアって聞こえたか?俺は恐る恐る、大会を見る。
そこに居たのは間違いなくうちのシルアだ。その隣にエマ先生もいるが二杯目でぐったりしている。なんで出場した……。
それと同時にセシアが俺を見つける。
「あ!べギアくん!お疲れ様。稽古はもう良いの?」
「あ、あぁ。どうやら明日剣術大会があるらしくて、今日は早めに切り上げてきた。……それより、あれはなんだ?」
俺はシルアを指差す。
「あはは、たまたま大食い大会の予選があるって宣伝してる人が居て、シルアちゃんが出たいって言ってたから出場したんだよ」
さいですか。どうやらパラクリントを満喫してるみたいだな。
…………カンカンカンカーン。
そこで終了の鐘が鳴る。
『 ここでタイムアップだぁー!予選を勝ち抜いたのは誰だ!!』
俺達は会話を止めて結果に集中する。
『 予選を勝ち抜いたのは、ラビアから来た今回のダークホース。十二杯食べたシルアちゃんだぁー!!』
「「うおおおぉぉおお!」」
予選会場が熱気で溢れている。
「勝っちゃったな……」
「あはは、シルアちゃん勝っちゃったね」
俺達は無表情で両手を上げて手を振るシルアを見ていた。まぁ何となく勝つと思ってたけど、二位と三杯も差をつけて勝っていた。
『予選を勝ち抜いたシルアちゃん!本選への意気込みをどうぞ!』
司会者はシルアにマイクを向ける。すると即答で喋りだした。
『次もおいしいもの、出る? 』
シルアが司会者に尋ねていた。
「「わはははははは」」
予選会場は笑い声で溢れていた。
「はぁ、あれが意気込みかよ……」
「でもシルアちゃんらしいね?」
俺達は苦笑いで終わるのを見ていた。
本選は明後日らしいので明日は俺が剣術大会に出るのをみんな見に来るらしい。
かっこ悪い姿は見せたくないな。




