表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ロストマジック  作者: 響勇
4/4

メッセージ

  4

 メッセージ

「村雨様、

対象の魔女・将真と共に行動していると思われる明 友和のスマホに電源が入りました。」

 魔女捜索本部の観測員の声がこだまする。

「これでGPSでの観測が可能になります。」

「ったくおっせえなぁ、見つけんのにいつまで掛かってんだよ。」

 村雨がその報告を聞き口元を残酷に歪ませた。

「やっと尻尾を捉えたね、

 これで奴らの恐怖に歪んだ顔を拝見することができる。」

「しかし今の今まで徹底して痕跡を残さず逃走していた彼らがなぜ急にスマホに電源を入れるようなことを、

 もしかしたら罠という可能性も…」

「あんな猿どもにそんな知恵、あるわけないだろ

 大方ストレスに耐えかねたか、はたまた猿知恵でも企んでるのか

まっそこまで心配する必要もねえだろ、

 まずはGPSで観測した付近の監視カメラを全てハッキングして奴等がいないかどうか調べろ。」

 村雨の指揮により観測員達が村雨にパソコンの画面を見せる

そこには監視カメラに向かって手を振る黒い服とフードを被った男が立っていた。

「片腕があるところから考えると、共に逃亡した春風友和でしょうか?」

「おそらくね、だけどこいつは何をしているんだ?

 なんで、どうしてカメラに向かって手を振っているんだ⁉︎」

 村雨が怒って声を荒げる、

 その光景は監視カメラの向こう側の相手を侮り、馬鹿にしているように見えた。

 しかし、

「村雨様、こちらを、」と観測員の一人が画像の一部を拡大させた。

 そこには手に白いハンカチを握っている友和の姿があった。

「これは…降参、という意味でしょうか?」

「まっそんなとこだろう」

 村雨は少し考え結論を出した。

「大方、魔女に付いていけないと判断して、降参しようとしてる、ってところだろうね、」

「罠の可能性は?」

「ないだろう

 あのガキ一人に何ができるかなんてたかが知れてるし、あのガキもそれくらいはわかってるだろう。」

「では、どうしますか?

現地確保を?」

「ああ、私も行くよ

殴られた分殴り返さないと気が済まない。」

「わかりました

 現地の警察などに伝えておきます。

 村雨さまが行くまで手を出すな、と。」

「ああ、そうしといてくれ」

そして村雨は残酷に笑う

「私に恥をかかせたんだ、ただで済むなんて思っていないよな?」

 

 将真は街の中を淡々と歩いていた。

「…なんで、なんでこんなことになったのかな?」

 将真の隣には既に友和の姿はなく、一人で街を歩いていた。

「…でも、まぁこれしか方法が無かったんだ。」

 そんなことが言い訳にしかならないことはよく分かっている

 だが、それでも、将真に残されている選択肢はこれしか無かったのだ。

「騙して、騙してごめんな友和。」

 将真はこの場にいない友和に謝罪する。

「俺はこの作戦のためにお前を騙した、裏切った。」

 将真は明に嘘の作戦を教えたのだ。

 今頃明は、決して来ない魔女組合を探すためにここから遠く離れた街にいるはずだ。

「何度謝っても許して貰えないだろう

 でも、もう、これしか方法が無かったんだ。」

 将真の頬に涙が伝う。

 おそらく、もう二度と明には会えない。片方は暗い檻の中で、片方は自由という名の青空の元でその一生を終えるんだ

「ごめん明……ごめん、本当にごめん…」

 流れる涙を止めようともせず、将真は下を向き一人咽び泣く。

 そして次に顔を上げた時将真の顔に迷いはなかった

「さあ、作戦開始だ。」

 そして将真は明から借りたスマホに電源を入れた。

 

 将真が立てた作戦は、極めて簡単なものだった

 1.明に魔女組合の大体の場所を教え、携帯だけを借り、その場に向かわせる。

 2.将真はその間に、明の携帯で居場所を掴ませ、出来るだけ目立つように行動し、時間を稼ぎ、監視カメラに移るであろう明の映像が気づかれにくいようにする。

 3.明に魔女組合を呼んできてもらい助けてもらう。

 …以上だ。

 作戦というにはあまりにも拙い、そんな作戦に明は文句も言わず、即座に行動に移してくれた。

 だか、こんな作戦、あるわけがない。

 将真はそこまで馬鹿じゃなかった。

 これは元々明を逃すための作戦だったのだ。

 まず、魔女組合の大体の場所なんて知るわけがない、そんなものが解ってれば魔女狩りが見逃すわけがない。

 野山を焼き払ってでも見つけるだろう。

 なら、将真が教えたのはなんの場所なのだろうか、それは将真の親友ネットネーム(マーリン様)さんの住所だった。

 ネットで知り合った巨大貨物船の船長で、半年に一度ほど、将真と彼は出会い、海外のコンピュータの機材を買ったり、色々な国のことを聞いたりして楽しんでいたのだ。

 何故そんな相手のところに明を送ったのか、理由は簡単だ。

 貨物船に明を乗せてもらい、そのまま海外に連れ出してもらうためだ。

 さっき、少しだけ残ったなけなしの金で公衆電話を使い頼んでみると、あっさり承諾を貰えた。

 『その明君はこちらで面倒を見るけど、君はどうするんだい?』

「なんとかしてみせます、せいぜい足掻いてみせますよ。」

 『そうか、新しい海外のパーツが手に入ったんだ、死ぬんじゃないよ』

「はい、そちらもお元気で」

 そうして将真は電話を切った

 (まぁ、生き残れないだろうな)

 将真はそう思いながら作戦を思い出す、

 ーあとの作戦はとてつもなく簡単だ、明が港に着いて、街を出るまで三時間時間を稼ぐだけだ。

 携帯の電源を入れてそろそろ20分。

 日本の警察ならもうくる時間だろう、

 将真は服の右袖を掴んだ。

 ガサゴソと紙を丸めたような感触が伝わる。

 長袖のパーカーの右腕に紙を詰めて、手袋で縫い付けただけのものだが、監視カメラを出し抜くだけならこれくらいで十分だろう。

「さて、そろそろか」

 辺りにパトカーの音が響き渡る。どうやら国は将真の作戦に乗ってくれたようだ。

「…どうせ散るなら最後は派手に!

 ショウタイムといこうか!」

 そして将真の周りを基準に白い煙が立ち込めた。

「…じゃあな、明」

 そんな声が煙の中から立ち込めた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ