官能小説 加奈の午後
暖かな日差しが冷たい水の温度をゆっくりと上げていく。
ぬるくなった水を流れるように泳ぐ影。その身体は何一つ身にまとうことなく光の下にその身体を晒していた。
加奈は一人どこへゆくともなくただ泳ぐ。
表面の滑らかな曲線にそってぬるく人肌ほどに温まった水がまとわりつくように流れる。
まるで愛撫されているような錯覚を覚える午後の日差し。
少し温度の上がった身体をもてあますように泳ぐ加奈。
どこへ行けばいいのか、何をすればいいのか。
戸惑いは加奈から冷静さを静かに奪い、ひりつくような焦燥を音もなく注いだ。
ぬるい水はぬらついた感触をひたすらに加奈に与え続ける。
ひたすらに泳ぐ加奈。何かに追われるように、何かを追うように。
夢うつつの加奈が気がついた時、そばには善則がぴったりと寄り添うように泳いでいた。
水の愛撫に我を忘れていたわずかの間に、善則から伸びた細胞膜が加奈の身体に接合されていた。
加奈は必死に繊毛を動かし逃げようとするが、善則は密着したまま離れない。
お互いの大核は激しい情動に流され消え去り、小核が相手を求めるように減数分裂をした。
つながった所からゆっくりとお互いのいやらしく絡み合うDNAが交換され、今まで加奈であったものは生まれ変わり新しい存在となり二人まとめてアメーバに食われた。