二話 協力者
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「じゃあ、俺はこっち行こうかな」
生徒たちの城内探索はすんなりと始まった。能天気だが、悪くはない。この子たちがいろんなところに出没すれば、それだけで監視の目を欺くことができる。
しかし、これは勇者―――茅野星奈の考えだ。
私はこの子たちの担任でもある。親御さんたちから、預かった、大事な大事な教え子たちである。
だから、私は先生―――茅野星奈として、振舞うことも忘れない。
「え〜と。じゃあ、絶対に遠くにはいかないこと。複数人で行動すること。いい?」
「「「はーい」」」
各々の返事が返ってくる。これで余程おバカな子がいない限り、大丈夫だろう。
王国側もあまり手出しはしないだろう。今回の計画の狙いが何かは知らないが、ロクなことじゃないのは想像がつく。
だから、先手を打つ。
「よーし!行くぞ!」
容姿が整っていて、無邪気さを感じられる少年―――佐藤相馬は先陣を切って、走っていく。
それに釣られて、佐藤くんと面識がある他の男子も扉の外へと駆けて行った。
「ほんと男子は………私はここで休憩させていただきます」
成績優秀、スポーツ万能、眉目秀麗。と完璧なものを持つ反面、親が弁護士と、とても裕福な家庭で育ったせいか、他人を見下す性格が板についてしまった少女―――相田美琴は召喚されたこの場所に留まることを決意していた。
「みんな、これ、帰れるのかな」
女子が異様に集まっている箇所からはそんな声が聞こえてきた。これが常人の反応だ。何人かはこれを白昼夢か何かだと未だに信じる者もいた。
「だ、大丈夫!きっと大丈夫だよ!」
そんな中、周りのみんなを励ます言葉を放った者がいた。その集団の中心人物である、九重渚だ。
「みんなで、力を合わせればきっと大丈夫だよ」
両手の拳を握ってみんなに話しかけることのできる渚は、他の人を気遣える、そんな心優しき少女なのだ。
その内面は心優しく、外見は美琴とはまた違った愛らしさを持っている。
例えるならば、クラスのアイドル的存在なのだ。
「それじゃあ」
私も行動を開始しますか。そして、私は薄暗い廊下を歩いていった。
あの召喚された部屋はは地下にある、一番端っこの部屋であった。もちろん、私はこの城内のことを召喚された人たちの中で一番知っている。
しかし、私がいないこの五年という時の中で、城が改築され、すでに私の知っている城内たかけ離れている可能性もある、
だから、まずは情報収集だ。
私は目の前にいる兜を腰と腕に挟んで、休憩している兵士に尋ねてみた。
「す、すいません……あの…………この城ってどこに建てられてるんですか?」
「どこって、ここだから………アルデリアの王都『ルーストン』だけど」
「あ、そうなんですか。ありがとうございます」
なるほど、五年前とは地名が変わらず、そのままなのか。まあ、ちょっとやそっとなことで変わるようなものではないと踏んでいたが。
ここは一階フロアの中庭を横目にする通路だ。
この城は五階まで存在しており、私たちが行動を許されたのは三階までだった。それは今も、そして五年前も。
つまり、その上に何かがあるということだ。
私はとりあえず一階から三階までのフロアをぐるっと回ってみる。五年前とまるで代わり映えしていなかった。武器倉庫や、厨房。広い中庭に、簡単な客専用の部屋。
そして、さまざまな部屋を過ぎて角を曲がった長い中央廊下には、壁に武勲や賞状が横にずらっと並べられている。
そう、そこには大した情報が無かったのだ。
「やっぱり、四階に行かなきゃダメなのかな?」
仕方ない。やらないよりやる方がマシだ。
私の得意属性魔法は[光]
属性魔法とは魔法を分類したときに分かれるそれぞれの総称のことだ。
種類は[炎][水][風][土][光][闇]の六種類だ。
私たち魔法師は絶対に得意、不得意魔法を持っている。それは努力や鍛錬で埋められるものではなく、先天的なものなのだ。私の場合、[光]に反する属性の[闇]を不得意魔法としている。
「光よ、その道筋を湾曲させよ」
私は、そんな詠唱を階段近くで呟く。[光]魔法『曲光』だ。そして、私は私を囲む光の筋を湾曲させて、背景とその姿見を同化ささた。
こうすれば、私は透明状態。これで安全に上に登ることができる。
私は階段を登る。階段の折り返し付近で、黒を基調とするローブを纏い、紫の宝玉を片手に持つ魔法師らしき男とすれ違った。
しかし、その男は私には見向きもせず階段を下ったいった。
「おい!」
びくっと私は肩を震わせた。まさか、見破られたんじゃないかと。ゆっくりと後ろを振り向けば。
「ここから上は立ち入り禁止だ。分かったらどっかへ行け!」
階段の壁に隠れて、誰かは見えないが、説教をくらっているらしかった。
はぁ、私じゃなくてよかった。おそらく、生徒の中の誰かだろう。こんなところまで来るとはすっごい冒険家だな。と私は安堵のため息をこぼした。
そうして、振り返りこの上へと登っていった。
まず、目に付いたものは図書館であった。三階までには存在しなかった書物がたくさん置いてあった。
何やら、研究結果だの。人体改造だの。
やはり、この王国は腐っていた。
「こんな事しちゃいられない。早く行かなきゃ」
外へ出て行こうとした私の腕を誰かが掴む。
「?!」
声が出ない!?それにさっきまでも、今もそこからは物音一つ聞こえないのに。
いったい誰?
ごめん。もう無理だ。誰かに捕まっちゃったよ。
ごめんね。本当に。しかし、そこで何か音が私の鼓膜を叩いた。
「―――おい!先生!………茅野星奈!」
ふと、私は自分の名前を呼ばれたような気がした。
あれ?この声、もしかして。
冷静で、いつも何かを見透かしているかのような声。
まさか!
「寺石義晴くん?!」
そう問えば間髪入れず、その少年は口を開いた。
「そうです。僕です」
義晴くんは淡々とそう答える。
「な、何でここに」
「あなたの挙動が妙にここに慣れていましたし、それに怪しげな動きを見せていたから、ずっと尾行していたんですよ」
そ、んな。
「で。何をしようとしてるんです?なにを知ってるんですか?」
「ど、どうやってここまで」
私は純粋な疑問をぶつける。そうなのだ。私には光魔法があった。でも、この子はどうやって。
「魔法って便利なんですね」
「え、まさか」
この子も[光]の魔法師、なの。
「いや、多分あなたが思い浮かべてるのと違いますよ、僕は多分[風]の属性です。[光]じゃないですよ」
にくたらしい口調でそう告げている。が、なんで属性魔法のことを知ってるの!
「どうして、属性魔法のことを、来たばかりの貴方が」
「僕がなにも調べずにここまでくると思いますか?下にあった図書館で、この世界のことを調べましたから」
す、すごい。こんな子見たことない。こんな、普通なら、発狂してもおかしくないレベルの事案なのに、ここまで冷静沈着としてられる。
「[風]ってことは音を消したの?」
「はい、音は空気の振動だから、風を操れば音を消せると考えたんですよ。『流制』、でしたっけ」
『流制』は気流を操作する[風]魔法の初級魔法。それは逆に下流の動きを止めることにも利用できるのだ。
あいも変わらずにくたらしい口調だが、私の中でこの少年―――寺石義晴の価値は変わっていた。
こいつ、使える。
「ねえ、私の手助けをしてもらえる?」
私は静かな声音でそう言う。少しばかり表情を変えて、いやあの時に戻して。
その表者を見た義晴くんはすこしたじろい、しかしすぐに平静さを取り戻す。
「へ、へぇ。別人ですね。いいですよ。協力してあげますよ」
よし、強力に漕ぎ着けた。
これで、私の作戦は幾分かはマシに行動できるようになるだろう。
そうして、私は寺石にこれまでの経緯を説明し始めた。
大きく展開できたかな、と少々不安です。私の中では大きく展開させたつもりなのですが。




