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また夢を見て、君に会いに行こう  作者: 藤咲 さくら
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「それでは、こちらの紙をご覧ください。詳しく説明させていただきますね」


そう言って、片面印刷の白黒の紙を1枚渡される。





【夢を買うルール】


・1度夢を見るためには、7日分の命が必要


・一気に買えない。1回ずつ


・見たい夢が必ず見られるとは限らない


・残りの命が一年になったら、それ以降は夢を買うことが出来ない


・夢を見る時は眠りが浅くなるため、寝不足になる





「…とまぁ、こんな感じですね」



説明されたことを頭の中で反芻しながら、紙に並ぶ文字を見つめた。



「あの…見たい夢を見られるわけじゃないんですか?」



「そうです。夢は必ず見られますが、その内容が必ずしも見たい夢であるとは限りません」



1週間分の寿命を、棒に振るかもしれない。


それでも、薫にもう一度会えるのなら…



「…お願いします、会いたい人がいるんです」


それから僕は契約書にサインをして、コーヒーをご馳走になってからカフェを出た。


「夢を見たくなったら、いつでもご連絡ください」


そして別れ際、夢売りは笑顔で手を振りながら


「契約違反は、あの世行きですからね」


と言い残して去っていった。





さて、これからどうするか。


睡眠不足になる、と言っていたから、今日はしっかり寝た方がいいのだろうか。


家に帰って、薫と2人で写っているたった1枚の写真を取り出した。


ピースサインを作って笑う薫は、とても幸せそうに笑っていた。



「夢売りさん、今日夢を売っていただきたいんですが」


早く会いたくてたまらなくて、風呂を済ませてからすぐに電話をした。


「かしこまりました、それではそのまま眠ってください。これでもう夢を見られますから」


「えっ、ちょっと!」



ただ電話をしただけで寿命が取れるわけないだろ…!?


プー、プーと切れた電話を睨みつけて、半信半疑で布団に寝転がる。


これで夢が見られなかったら、警察に突き出してやろう。


いや、夢を買おうとして騙されました、なんて言っても、警察は相手にしてくれないかもしれない。



もやもやと考えていると、意識は朦朧として気がつくとあの時と同じアパートにいた。



僕はソファに腰掛けていて、隣を見ると薫が座っていた。


「薫…」


「あ、遙真!遅いよ」


振り向いた瞬間の寂しそうな顔に心が痛くなった。


「ごめんね、遅くなった」


「何してたんだよ、バカァ」


ぽすっ、と肩にパンチを受ける。


「あれからちゃんとご飯食べたの?」


「食べてるよ」


「何食べたの?」


「えっと…コンビニのサラダ、唐揚げ、おにぎり…」


指を折りながら食べたものを挙げると、また肩にパンチが飛んでくる。


「コンビニばっかりじゃんか!」


「ええー!野菜食ってるだろ…?」


「節約しなさいよもー!」


やっぱり妻みたいな説教。


それでも僕は、こんなやり取りだけでも幸せだった。


「ねぇ、ひとつ提案があるんだけどいいかな」


僕が薫の方へ向くと、薫は首をかしげて目を合わせてくる。


「これから僕は夢を見て君に会いに来るよ。だから、やり残したことを一緒にやってほしい」



薫がどんな返事をしたか覚えていない。



僕はまたベッドに寝ていて、身体を起こすとひどい倦怠感に襲われたのだった。





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