表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
また夢を見て、君に会いに行こう  作者: 藤咲 さくら
3/5

3



はじめまして、成川 遙真 と申します。


インターネットで広告を見つけ、気になったのでメールを送らせていただきました。


よろしければ、詳細の方を聞かせていただけないでしょうか?


よろしくお願いします。




堅苦しい敬語で埋まったメールを確認し、送信する。


そして僕はケータイの前に座って、返信が来るのを待った。


待って、待って、ずっと待っていた。



1時間が経ってケータイが静かだったら、他の方法を探そう。



30分が経ってからコーヒーを入れていると、メールが来たことを知らせる音楽が流れた。


コンロの火を消し、お湯も注がずに僕はケータイを開いた。






宛名は『夢売り』





はじめまして、成川様。


広告をご覧いただき、ありがとうございます。


ざっくり説明致しますと、成河様の寿命と引き換えに、夢売りが1日分の夢をお売りいたします。


詳細はとても長くなってしまうので、実際にお会いして説明したいのですが、いかがでしょうか?


ご検討よろしくお願いします。






ホームページとあまり変わらない内容のメールに、少しがっかりした。



実際に会うってどういうことだ?


そんなに長い説明があるんだろうか。



一瞬迷ったが、僕は行くことにした。




騙されたら騙された時に考えればいい。


第一寿命なんてどうやって取るんだ。




その後何通かやり取りをして、2日後の15時に駅前で待ち合わせ、という約束を取り付けた。




これで薫に会えるのか。


もし会えなかったらどうするのか。



期待と不安に包まれて眠った2日間は、やっぱり夢を見なかった。








2日後の15時ぴったりに、僕は駅前にいた。



そう言えば、お互いの服装や特徴について何も話していなかった。


さっきどんな服装で来るか教えて欲しい、とメールを送ったが、返信はなかった。



5分程して、後からトントン、と背中を叩かれた。


振り返って、声を上げそうになった。



「成川 遙真様ですか?」


「あ…はい」


「よかった、違ったらどうしようと思ってました。はじめまして、夢売りです」



どうして僕が驚いたかというと、夢売りの服装が原因だ。



真っ黒なパーカーと長いズボン、踵が少し高くなったブーツ、リュックサックに、マスクまで黒かった。


要するに、全身真っ黒。


おまけにフードを被っていて、目は見えない。


ニンマリと笑う鼻と口だけが覗いており、不気味さを引き立てた。



こんなこと言っちゃ失礼だけど、僕は死神に見えた。


やばい人だ、帰らなきゃ…と思ったが、薫のことが頭に浮かぶ。


ここで変えれば、僅かな可能性を自分で潰すことになるのだ。



「今日は、よろしくお願いします」



愛想笑いをなんとか貼り付け、死神…夢売りの方を見た。



「こちらこそ。立ち話もあれなので、カフェに行きませんか?行きつけのカフェがあるんです」




連れていかれたそこは、案外綺麗なカフェ。


人目につかない地下にあったために若干警戒したが、杞憂だったみたいだ。



「さて、話を始めましょうか」



コーヒーを一口飲んで、夢売りは笑った。








評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ